政府は12月22日、24年度当初予算案を閣議決定した。賃上げ促進に重きを置いた。その流れを受ける形で、診療報酬改定率は岸田文雄首相が“熟考”の末、決めた通り本体(技術料)0.88%増となった。医療界からは賃上げの財源を確保した政府を一定程度評価する声が上がるが、診療所の関係者からは先行きに対し、不安の声が聞かれる。【本根優】
12月15日、鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相が首相官邸に出向いた。主張に開きがある中「考える時間が欲しい」と時間を取った岸田首相が、最終的に改定率を決めた。
詳細な枠組みについて合意したのは、20日に行われた鈴木・武見両氏の大臣折衝の場。本体0.88%増(国費822億円)の内訳は、看護職員・リハビリ専門職らコメディカルの賃上げで0.61%増、入院時の食費の見直し(1食30円の引き上げ)で0.06%増、生活習慣病等に関する管理料・処方箋料などの再編による効率化・適正化で▲0.25%となった。
それらを除いた0.46%増分を医科:歯科:調剤「1:1.1:0.3」の割合で配分する。ただし、その0.28%増分は40歳未満の勤務医師・歯科医師・薬剤師、事務職員らの賃上げに使う。
改定内容について、自民党厚労関係議員からは「医療関係者の賃上げを実現する内容になったことは評価できる」と歓迎の声が上がる。厚生労働省からすれば、一定の賃上げ財源を確保し、前回22年度(0.43%増)との比較では倍増を実現。財務省からすれば、使途を賃上げなどに限定することで改定財源は絞りつつ、ターゲットにした診療所の報酬の適正化に漕ぎ着けたことになる。
いわば、さまざまな見方が可能な「カメレオン改定」。ある地方医師会幹部は「効率化・適正化▲0.25%が診療所中心なら、診療所は実質マイナスではないか」と気を揉む。日本医師会幹部は「決して診療所のみで▲0.25%だけではない」といった説明をしているものの、前述の地方医師会幹部は「中医協でどう決まるかによって、実際は▲0.25%どころではなくなる可能性もあるのではないか」と警戒感を強める。
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