日本医師会の政治団体「日本医師連盟」(委員長=松本吉郎・日医会長)は1月30日の執行委員会で、25年参院選の組織内候補として釜萢敏氏(70=現日医常任理事)を擁立することを正式に決定した。なぜ、釜萢氏だったのか? 【本根優】
松本委員長は2月1日の記者会見でこう説明した。「組織内候補の条件は、圧倒的な得票を期待できる力量やポテンシャルがあること、地域医療に携わり課題に取り組んでいること、関係各所に丁寧に説明する幅広い人脈があること、または大きく人脈を築く能力があることだ」
その上で「釜萢氏はこのような条件を十分満たしている」と、期待感を示した。
今回の組織内候補選びでは、岡山県医師連盟の推薦を受ける元県議の小林孝一郎氏(46)が逸早く動き、東京都医師政治連盟が推す元自民党衆院議員の安藤高夫氏(64)も続いて、公募に応じる準備を進めていた。
1月5~12日の公募を控え、情勢に変化が起きたのは年末年始のことだ。最後発ながら最有力の候補として、釜萢氏が名乗りを上げた。一方で安藤氏は「自民党からゴーサインが出なかった」ために断念した。
釜萢氏は会見で、5期10年の日医常任理事経験から「医療政策の決定プロセスや、国民の理解を得る重要性を感じることが多かった。日本の優れた医療体制が長続きするよう全力で取り組みたい」とコメントした。
1月12日に締め切られた日医連の公募に応じた理由に関して、釜萢氏は23年12月の診療報酬改定論議に携わり「持続可能性のある医療のために、組織内候補(議員)の働きが非常に重要と感じ、昨年の暮れギリギリに決断した」と語った。また「年齢のこともあり、決断までに少し時間がかかった」とも打ち明けた。
自民党の内規に参院選比例候補の「70歳定年」があるものの「支持団体が余人をもって代えがたい候補者と決定し、総裁が認めた者」は特例で公認できると定めている。釜萢氏はすでに70歳を超えているが、松本委員長はこうした特例の活用を前提に「自民党本部にお願いし、公認を申請したい」との考えを示した。
ただ、全国の医師連盟の中には、今回の選考経緯を疑問視する向きや、世代交代の必要性を強く訴える声もある。今後、釜萢氏で一枚岩になれるかが焦点となる。