22年度薬価改定が4月1日に実施されたばかりだが、次期通常改定の2年後、さらにはその先を見据えた提言を、民間の研究会が3月末に出した。【本根優】
それが、薬価・医薬品流通政策を扱う「薬価流通政策研究会」(くすり未来塾)になる。同研究会は、元日本製薬団体連合会・保険薬価研究委員会委員長の長野明氏と、元厚生労働省医政局長の武田俊彦氏が共同代表を務め、21年12月に発足した。
新たな提言は、「企業届出価格制度」として、薬価収載時に一定期間はメーカーの届出価格で保険償還(ただし患者要件などは設定)を認め、一定期間経過後に中央社会保険医療協議会で算定しなおすことなどが柱。企業の裁量と説明責任を求める観点から、販売時だけでなく、発売後も届出に基づく価格引き下げ(現在は制度上不可)も可能とすることを提案した。さらに、適応外使用については、民間保険の活用を図ることを打ち出した。
民間からの提言としては、シンクタンクの「新時代戦略研究所」(INES)が21年5月に、新たな薬価制度改革案を発表している。
年金制度で活用される「マクロ経済スライド」のような仕組みを薬価制度にも導入し、名目GDP(国内総生産)成長率を薬剤費の上限に設定。ミクロ的なアプローチとして、現行の原価計算方式に代わる「薬剤価値を反映した新算定方式」を導入することを中心に据えた。
ただINESの提案は、薬剤費の「キャップ制」と受け取られ、製薬業界からは激しく反対され、議論が広がるきっかけにはなったが、提案の具体化は進んでいない状況だ。
くすり未来塾の提言に関しては、「企業が価格を決められる大胆な提案」と好意的に受け止める声が聞かれる一方で、業界OB(長野氏)と役所OB(武田氏)が「辞めてから好き勝手なことを言って。現役のときに何かできなかったのか」と批判的な声も漏れる。