「これまでなら、薬で深掘りしようってなってきたところだが、今回は本当に無理」。こう語るのは、自民党の厚生労働関係幹部議員の1人。11月14日、厚労関係の幹部会が党本部内で開かれ、年末に向けた予算・税制上の課題について厚労省幹部と意見交換した。最大の課題は診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の「トリプル改定」になる。【本根優】
厚労省が予算上の課題に挙げたのは、トリプル改定のほか、年末までに策定される「こども未来戦略」の動向を踏まえた対応、24年度に始まる第9期介護保険事業計画への対応、その他として、医療DXの推進、医薬品の安定供給に向けた取り組み、感染症対応能力の強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成への貢献、三位一体の労働市場改革の推進、生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しだ。
出席者によると、厚労幹部会では「こども財源の捻出のために、必要な社会保障の財源が削られることはあってはならない」「別の形で財源を確保すべき」といった意見が出た。
政府は異次元の少子化対策のために、社会保障関係費の歳出改革などを行ったうえで、社会保険の仕組みを活用した支援金制度の創設を構想。こども家庭庁は公的医療保険を通じ、負担能力に合わせて、支援金を徴収する案を示している。
一方で、トリプル改定に向けては「医療・介護業界では人材流出が止まらない。賃上げ・物価高にしっかり対応できる改定にすべき」といった意見が出た。
もちろん自民厚労族が念頭に置くのは、診療報酬などの「プラス改定」だが、財務省は今回、あからさまな“診療所狙い撃ち”を仕掛け、病診間のメリハリで対応したい意向だ。
厚労族のベテラン議員はトリプル改定について、こんな相場観を示す。
「医療も介護も福祉も、賃上げ用には、ミシン目を入れて財源を多少確保し、それ以外は適正化も含めて厳しい内容になるのではないか」
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