岸田文雄首相は近く内閣改造・党役員人事に踏み切る。自民党関係者は「首相の外交日程を考慮すると9月上旬頃が最も現実的だろう」と語る。毎回のように懸案となる「厚生労働相」ポストを、岸田首相は誰に託すのか。【本根優】
「さすがにもうどちらもないのではないか」
そう語るのは厚労省幹部だ。現任の加藤勝信氏は厚労相を3回務めた。そして、自民党厚労族のボス格に位置づけられる田村憲久氏も2回務めている。質は三流と言われながらも、予算や国民的関心のうえでは「巨大官庁」である厚労省を舵取りできる人材は少ない。
これまでは時の首相が「困った時の加藤氏、田村氏」でなんとかしのいできた。前述の厚労省幹部の見立てでは、両者ともに「政治家として次のステージに行きたがっている」というのだ。茂木派内での権力争いで茂木敏光幹事長に大幅に先行される加藤氏。将来、首相を目指すうえでは外相、財務相または経済産業相といった重要閣僚の経験を得たい希望があるという。
一方の田村氏。医療、介護から年金、福祉まで厚労のスペシャリストであり、党社会保障制度会長を務める。しかし、田村氏周辺によれば「本人は厚労の専門家で終わる気はない。ライフワークとして取り組むにしても、他の重要分野に踏み出したい希望を持っている。総務や農林などにも思い入れがある」という。
となると、次の厚労相を誰が務めるのか。閣僚人事で最も注目されるのが、何かとお騒がせの河野太郎デジタル担当相の処遇。そして、厚労省はマイナンバーカードに大きくかかわる役所でもある。
自民党閣僚経験幹部は「岸田派から“目玉”として出すなら上川陽子氏くらいだろう」と予想する。
一方で、中堅からの起用であれば、厚労分野の経験から考えると、橋本岳氏または福岡資麿氏あたりが経験を積んできている。
ただ厚労関係議員の古参秘書は「岸田さんは、国民の関心が高いうえ、火種だらけの厚労省を大臣未経験者に預けることはしないだろう」と見る。
誰も引き受け手がいない場合には「加藤氏続投」となるのだろうか。
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