「この2人がどちらも政府内にいないことが非常に珍しい」。
そう語るのは、自民党の医療関係議員だ。2人とは、田村憲久前厚生労働相、加藤勝信前官房長官を指す。【本根優】
民主党から自民党が政権を奪取した12年12月、すぐに田村氏は厚労相に就き、加藤氏は安倍晋三首相に見出され、官房副長官に起用された。田村氏は間を空けて2度、厚労相を経験し、同じ加藤氏も厚労相を2度務めた。加藤氏は18年に党総務会長に就いたことを除けば、さまざまな閣僚ポストを渡り歩いてきた。
そのため、田村氏・加藤氏が政府内に「いない」ことが、今回発足した岸田文雄政権での非常に珍しい事象ということになる。
それぞれが、党内でどんなポストに就いたのか。
田村氏は、党内で成長会場代理が「指定席」だったが、今回は党の「新型コロナウイルス等感染症対策本部」で、西村康稔本部長の下、実務を取り仕切る座長に就いた。後藤茂之厚労相の後任だ。
加藤氏は「“一回休み”で地元での活動(岡山)なども充実させる」(加藤氏周辺)意向だったが、必ずしもそれは叶わず、党内でも重責を担うことになった。
中長期的な視野で社会保障分野の議論を担う党社会保障制度調査会の会長に起用されたほか、党税制調査会で実務を担う小委員長にも決まった。税調会長は15~19年にも務めた宮澤洋一氏が再登板。加藤氏は税制改正に向けた議論をリードしつつ、宮澤氏を補佐することになる。
これまで社会保障制度調査会をリードしてきたのは、今回衆院選で落選した野田毅氏、政界を引退した鴨下一郎氏ら。その役割が加藤氏に代わるわけだ。
12月までに22年度診療報酬改定の改定率が決められるが、その政府・与党調整に党側から関わりそうなのは、田村氏、加藤氏、そして政調会長代理に就いた高鳥修一氏と言えそうだ。