「看取りに特化した研修の充実を」

皇居のお堀_2019年9月26日

 令和3年度の介護報酬改定に向けて9月4日に開かれた厚生労働省の会議で、「介護分野における看取りに特化した研修をぜひ充実していただきたい」との要望があった。【新井 裕充】

 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)介護給付費分科会(分科会長=田中滋・埼玉県立大学理事長)の第184回会合をオンライン形式で開催し、前回に引き続き次期改定に向けた検討を進めた。

 今回の主なテーマは「地域包括ケアシステムの推進」で、配布資料の構成は ①医療・介護の連携と看取りへの対応、②認知症への対応力強化、③地域の特性に応じたサービスの確保──の三本立てとなっている。

 このうち、①の「看取りへの対応」では、看取り関連加算の算定状況などを示した上で、最終ページに論点を提示。「人生の最終段階においても、利用者の尊厳を保持し、本人の意思に沿ったケアを進める観点から、どのような方策が考えられるか」と意見を求めた。

 今回の資料中に「アドバンス・ケア・プランニング」や「人生会議」といった言葉はなく、これまで出された意見を紹介する中で、1箇所だけ「ACP」という言葉が使用された。一方、「意思決定支援」という言葉は4箇所で使われている。

 質疑で、日本医師会常任理事の江澤和彦氏は「自立尊重の原則」など医療倫理の4原則を挙げた上で、これらの原則に基づく意思決定支援の重要性を指摘。「医の倫理原則、デスカンファ、グリーフケアなど看取りの振り返り等も含めた介護分野に特化した研修が今はない」とし、「介護分野における看取りに特化した研修をぜひ充実していただきたい」と求めた。

 江澤氏はまた、意思決定支援に関連して「厚生労働省のガイドラインが4本ぐらいあるが、根本的な考え方に全く差異はない」と指摘し、「一本化すれば現場も使いやすく、混乱が少ないのではないか」と提案した。

 詳しくは以下のとおり。

〇厚労省老健局・栗原正明企画官
 定刻になりましたので、第184回「社会保障審議会介護給付費分科会」を開催させていただきます。

 (中略)

 では、以降の進行は田中分科会長にお願いいたします。
.
〇田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)
 皆さん、こんにちは。9月になりましたので、本日から令和3年度介護報酬改定に向けての「第2ラウンド」に入ります。

 今回は、「今後の進め方」と「地域包括ケアシステムの推進」だけではなく、状況を鑑みて「感染症や災害への対応力強化」も議題として入れていただいてあります。

 はじめに、資料1から4について事務局から一通り説明を伺った後、質疑に移ります。

 (中略)

 事務局から資料の説明をお願いします。老人保健課長、どうぞ。
.
〇厚労省老健局老人保健課・眞鍋馨課長
 はい。老人保健課長でございます。それでは資料を用いまして、ご説明をさせていただきます。

 (中略)

〇田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)
 (前略) ご意見、ご質問があればお願いいたします。

 (中略)

 江澤委員、お願いします。
.
〇江澤和彦委員(日本医師会常任理事)
 (前略) 続きまして、「資料4」にまいりますが、21ページでございます。

 こちらに中重度者を支える各種加算が列挙しておりますけれども、非常に、算定が一部、算定率が高いものから極めて低いものまで、いろいろ、ちりばめられていますが、

 今一度、この算定要件とか報酬設定がどうであるのかを検討していただいて、なぜこういう状況になっているのかというのをぜひ検討していただきたいと思います。

 続きまして、「資料4」の31ページに、施設系・居住系のサービスにおける訪問看護と訪問リハビリ等の適用状況がございますけれども、
.

.
 これ、以前も意見させていただきましたけれども、特定施設入居者生活介護、および認知症対応型(共同生活介護)、このグループホームにおいては、今、現行では介護保険の訪問看護と訪問リハビリテーションがサービス提供ができないという仕組みになっておりますので、

 今後の重症化とか看取りへの対応を含めまして、ぜひ、このあたりは必要に応じて柔軟に検討していただきたいと思っております。

 あと、特養においても、この表ではバツになっておりまして、老健、介護医療院には医師をはじめ、PT・OT・STといったリハビリ専門職が、配置があるわけですけれども、

 その基準のない特養において、特に生活期リハは介護保険が原則というふうに現行、なっておりますので、今後の実態を踏まえて検討課題かというふうに認識をしております。

 続きまして、33ページでございます。看取りへの対応の論点でございます。
.

.
 特に今後、以前も申し上げましたけれども、ご本人の意思決定支援、これを適切に現場で取り組んでいただくよう、お願いしたいと思っております。

 特に意思決定を行う上で倫理的な規範から見た根拠は、「自立尊重の原則」「与益最大化の原則」「不加害原則」「正義・公正原則」の、いわゆる4つの医の倫理原則に基づいておりますので、

 これらの原則に基づく意思決定支援の在り方は、最善を行う上で重要な根拠となります。

 従いまして、こういったことを基本的なことで結構ですので、十分、介護現場でも普及していただきたいと思います。

 従いまして、今の医の倫理原則を含めて、デスカンファ、グリーフケアといった看取りの振り返り等も含めた、特に介護分野に特化した研修というのが今はないと思っています。

 従って、介護分野における介護施設等、あるいは介護事務所における看取りに特化した研修をぜひ充実をしていただきたいと思っております。

 看取りにつきましては、もう1点。

 看取りというのは、看取りの数が多い施設が決していいことではございません。

 看取りの、よく「1件」とか、件数とか言いますけれども、1つひとつが大切な、本当に日本人の人生の大往生でございますので、大変重たいものでございますので、ぜひ、看取りの質ということに着目していただいて、

 決して、「看取りの推進」とかいう言葉もよくございますが、大変重たい言葉でございまして、そう受け止めるべきものございますので、看取りの数ではなくて看取りの質がいかに重要かということをぜひ政策等で検討していただきたいと思います。

 続きまして、「資料4」の67ページに「認知症への対応力を向上するための取組の推進」の論点がございますので、

 こちらにおきましても、ぜひ認知症の意思決定支援というものを十分現場で取り入れるように、よろしくお願いしたいと思います。
.

.
 その中で、今、厚生労働省において、医政局で人生の最終段階に関するガイドライン、それから、身寄りがない人のガイドライン、老健局において認知症の人のガイドライン、社会援護局において障害福祉サービス等の提供に関するガイドラインというものがあって、

 今、ガイドラインがざっと4本ぐらいありますけれども、基本的に根本的な考え方は全く差異はないものでございますので、ぜひ、このあたりは一本化していただいて、それぞれの各論というか、バージョンに応じてやっていただければ現場も使いやすく、混乱が少ないんじゃないかなあというふうに思っております。

 そしてあと、認知症のケアの質は、アセスメントが極めて重要であると認識しておりまして、特に現場のアセスメントにおいては人生歴を紐解いて、本人の気持ちを共有して受容と共感力を高め、なじみの人間関係や、なじみの環境づくりに力を注いで生活を構築し、支えていくことに主眼を置いております。

 そして、いいケアをすればするほど、BPSDは減るということを私たちは体験をしているわけでございまして、

 従いまして、良質なアセスメントをちゃんと実施できるように、推進するなり評価するということが必要ではないかなあと思っておりますので、そのあたりの「ケアの質」ということをまず検討していただきたいと思います。

 特にBPSDが一番、対応に苦慮いたしますが、決して、BPSDは逆に、認知症は重度になると症状が減ってくるものでございまして、BPSDへの対応、

 そして、認知症の進行度。中重度というのは記憶障害や見当識障害が極めて大きくなり、そして、あわせてADLが低下するということでございますので、そういった認知症の中重度をどう支えるのかという視点も重要でございます。

 最後に、87ページから90ページにかけて、いろいろ、「地方からの過疎地域等の取扱に関する提案」とありますけれども。

 まず87ページに、小多機の人員基準に関する緩和策が出ておりますけれども、小多機は過去に定員を増やす見直しを一度しておりますし、それから、サービスの質の担保、あるいは他のサービスの整合性から考えて、ぜひ慎重に考えていくべきであり、安易に行わないほうがよろしいかというふうに思っています。

 それから、88ページにも、いろんな「参酌すべき基準」というのが出ておりますけれども、このあたりもぜひ慎重に検討して、「ほかに代替サービスがあるのかないのか」ということも踏まえて検討していくことが必要だと思います。
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 89ページに、基準を「3:1」を「3.3:1」と書いてありますが、これは現場の経営、運営をする視点から申し上げますと、今の特養とか老健で「3:1」の看護・介護配置だと、もう確実に職員が疲弊をして、その施設の、しかも質の高いサービス提供はもうほぼ不可能でございます。
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.
 従いまして、職員の数は必要ですけど、そのギリギリの配置でなかなかできるようなサービスでは到底ございませんので、このあたりも慎重に検討していただきたいと思っております。

 一応そういうところで、ぜひ、こういったところも慎重に考えていただきたいと思います。

 最後に、いろいろ基準緩和とか出ておりますけれども、ぜひ検証していただいて、サービスの質の担保も踏まえながら、幅広い視野で議論していくことが必要だと思っております。以上でございます。ありがとうございます。
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〇田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)
 多岐にわたるご発言、ありがとうございました。

 (以下略)

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