デンマークの製薬大手・ノボノルディスクファーマが開発した肥満症治療薬「ウゴービ」が2月22日に発売された。保険適用の肥満症薬としては約30年ぶりと話題を集めるが、約10年前には薬事承認されながらも、中央社会保険医療協議会(13年11月)で薬価収載が見送られ、その後、発売を断念した肥満症薬があった。それが武田薬品工業の「オブリーン」だ。 【本根優】
オブリーンの効能・効果は「肥満症(2型糖尿病・脂質異常症を共に有し、食事療法・運動療法を行ってもBMI25以上に限る)」というものだった。国内にBMI25~35の肥満症患者向けの薬剤はなく、有効性・安全性の観点から審査した結果、薬事・食品衛生審議会を通過し、承認された。
薬価算定にあたって、薬価算定組織は「プラセボに対して優越性は示されたものの体重変化率の差はわずか。革新性や有効性が高いとは言えない」「エンドポイントである心血管疾患等の重篤なリスクの提言は臨床試験で示されていない」と判断。当時の薬価ルールの原価計算方式で、最低の営業利益率9.15%(業界平均の半分)を適用する算定案とした。
ところが、それすらも中医協委員から厳しい反対に遭った。支払側委員は「(体重変化率)2%というのは体重50キロの人が1キロ減るだけ。薬を飲んでそれだけというのは納得がいかない」「1日駆け出せば、減らせる」と強く反発した。
診療側からも「どうして高脂血症用剤ではなく、体重コントロールで申請されているのかわからない」と疑問の声が上がった。
結局、厚生労働省が「保険収載する必要があるかを含めて事務局で再整理したい」と引き取り、オブリーンの収載は見送られた。オブリーンはその後も収載されることはなく、武田薬品工業は最終的に収載・販売を断念した経緯がある。
今回のウゴービに関して、中医協での審議時に、収載に反対する意見はなく、了承されたものの、安定供給に関する注文や、2型糖尿病治療への悪影響を危惧する声が相次いだ。
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