中医協で費用対効果の議論が再開した。質疑に入る前、小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)は「非常に重い、重要なテーマ」と述べた。【新井 裕充】
厚生労働省は10月28日の中医協総会に「今後の医薬品等の費用対効果評価の活用について」と題する23ページの資料を示した。
論点は、「保険収載時の活用等も含めた実施範囲・規模の拡大について(中略)どのように考えるか」としている。
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今回、目新しいのは「新医薬品の薬価算定の仕組み」と題するスライドを出して、厚労省の担当者が丁寧に説明したことだろうか。
今年3月26日に開かれた社会保障審議会(社保審)の医療保険部会では、座長を務める元中医協会長の遠藤久夫氏が私見を述べる場面があった。
遠藤氏はこれまでの経緯を振り返りながら、「費用対効果の議論するときには、全く新しいものを作れば作るほど現行の制度とのハレーションを起こすので、それをどういうふうにハーモライズさせていくかというところが一番重要」と述べている。
▼ 遠藤氏は、各委員が一通り発言した後で次のように述べた。
「実は一言、私もお話しさせていただきたいんですけども、中医協の会長を辞めた最後の時のアナウンスで、費用対効果が重要だっていう話をさせていただきました。そのことがその後の議論にどう反映されたかは知りませんけれども。そういう議論が少しありました。それはなぜかと言うと、やはり高額な薬剤が、今になってみれば大した高額ではないんですけれども、そのあと、相当高額が出てまいりましたけど、その当時もかなり高額なものが出てきた。それを、そうすると、それまでの、その類似薬効比較方式とか原価計算方式で行うと、例えば抗がん剤などでもですね、少ししか効果、延命効果があまり違っていなくても相当高額なものが新規性が高いということで原価計算方式が高く算定されるとかですね、いろいろなことが出てきたような印象がありました。なので、少し、その効果の比較をする形で価格の補正はできないかという、そのレベルで私は申し上げたつもりなんですけれども、その後の議論はですね、まあ、学者の先生方がずっとレクチャーをする形で進めましたんで、(費用対効果評価とは)そもそも何かっていう形で。特に、イギリスのNICEを中心としたような制度の議論も進みました。(※ 公式の議事録では「NICEを模した制度の議論」に修正されている)
実は、それを進めますとね、そもそもが、その、それまでの日本の薬価基準制度と、その、効果、費用対効果の考え方っていうのは基本的なコンセプトが違いますので、どういうふうにそれを融合していくのかっていうところがなかなか見えない。端で見てまして。私は傍聴してましたけれども、延々とそれが続いていったという感じで。ま、最終的には、現行の、その、加算部分について費用対効果を入れようというような形で抑えられてきているわけなので、まあ、それはある程度、落ち着いてきたなあという感じはします。従いましてですね、この費用対効果の議論するときには、その、全く新しいものを作れば作るほどですね、現行の制度とのハレーションを起こしますから、それをどういうふうにハーモライズさせていくかってところが一番重要なんです。そこがあればですね、どの程度のことをやればいいかってことは自ずと出てくる話なんですね。ですから、そういうところで、たぶん議論を進めていくべきだと思うし、たぶん、中医協はそんなことは分かっているので、そういう方向の議論になっていくんではないかなというふうに思って、ちょっとそれは部会長の立場というよりも、これまでちょっと絡んできた立場でお話しさせていただきました。個人的な見解だと思ってください。ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。ということで、一番、議論の蓄積が進んでいるのは中医協ですので、基本的には中医協の議論を見守るというようなことで、適宜、必要な情報があればここでも開示していただくという、こういう扱いでよろしゅうございますね。はい、ありがとうございます。それでは、この件につきましては、以上とさせていただきたいと思います」
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その後、医療保険部会では9月16日にも同様のテーマが資料に掲載されたが、費用対効果評価をめぐる議論はなく、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)が一言コメントしただけで終わった。
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▼ 厚労省の公式議事録によると、安藤委員は次のように述べている。
「将来的には、イギリスやスウェーデンのように償還可否の決定に用いることも検討すべきだと思いますが、昨年度から導入されました仕組みであり、企業分析における課題等も出てきていると聞いておりますので、まずは中医協において実施状況をしっかりと検討いただき、制度の成熟度を高めるとともに、現行最大で1年半かかる保険収載から価格調整までの期間をできる限り短縮していくことが先決ではないかと思います」
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このような3月、9月の医療保険部会を経て10月28日、中医協に降りてきた。資料の説明と質疑の模様は以下のとおり。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
次の議題に移ります。「今後の医薬品等の費用対効果評価の活用について」を議題といたします。
この件につきましては、事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
1.説明
〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい。医療技術評価推進室長でございます。
それでは、「総-6」に基づきまして、ご説明をさせていただきます。
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「今後の医薬品等の費用対効果評価の活用について」ということで、2コマ目をご覧ください。
こちらは「新経済・財政再生計画 改革工程表2019」というものでございますけれども、2020年度の欄をご覧いただければと思いますが、
「医薬品や医療技術の保険収載の判断等に当たり費用対効果や財政影響など の経済性評価を活用し、保険対象外の医薬品等に係る保険外併用療養を柔軟に活用・拡大することについて、骨太の方針2020に向けて関係審議会等において検討」
ということをする、ということを政府として、昨年の12月19日でございますけれども、決定がなされているという前提がございます。
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3ページ目をご覧ください。
こうしたものを受けまして本年3月および9月にですね、社会保障審議会・医療保険部会において検討をいただいております。
3ページ目でございますけれども、こちらは3月の部会での資料を抜粋したものでございますが、
「現状・課題」の所で、
「中医協での議論を経て、2019年4月より運用開始となった費用対効果評価制度では、結果は、保険償還の可否の判断に用いるのではなく、いったん保険収載した上で、価格の調整に用いることとしている」
ところでございます。
「また、今後の実施状況を踏まえ、費用対効果評価に係る組織体制の強化や、課題を整理した上で、活用方法についての検討を継続していく」
ということとされたところでございます。
また、費用対効果評価領域の人材育成のため、本年4月より人材育成プログラムが開始。
当時は、予定をされておりましたし、また一方で、諸外国と比較し、費用対効果評価の体制の規模や人材についても、いまだもって不十分であると。
で、当時3月の時点では、費用対効果評価の対象品目として6品目が選定され、分析が実施されているという状況の中での論点といたしまして、
「費用対効果評価の保険収載時の活用等も含めた実施範囲・規模の拡大については、現状や人材育成の状況や諸外国における取組も参考にしながら、これまでと同様に中医協で検討を継続していくこととしてはどうか」
ということを医療保険部会にお諮りしたところでございます。
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4コマ目をご覧ください。
こちら、9月に同部会で、同様の趣旨でですね、再度ご議論いただいた際の資料でございます。
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5コマ目をご覧ください。
こちらは、こうした医療保険部会での議論、ご意見を記載したものでございます。
上から紹介をさせていただきますが、
「新規医薬品、医療技術の保険収載の可否も含めた費用対効果評価結果の活用に向けて検討が必要」というご意見。
「高額な医薬品が次々と登場する中、医療保険財政健全化の面からも、費用対効果を図るという視点は大変重要」というご意見。
また、「保険収載をどうするかというところは、今すぐには難しいとしても、今の基本原則を維持しながらもできることはあるのではないか。有効性、安全性の濃淡を評価する一つの手法として費用対効果もあるのではないか」。
4点目でございますけれども、「有効性、安全性が確認された医薬品は速やかに保険収載するのが大前提。この前提のもとで中医協において価格を調整する のが、本来の国民皆保険制度のあるべき姿である。また、高額薬剤について費用対効果が悪いからといって患者アクセスの制限や追加負担があるべきではない」というご意見。
「国民のために安全性、有効性が確認された医薬品は速やかに保険収載すべき。また、費用対効果評価制度は運用が開始されたばかりで体制も十分ではなく、今後事例を集積して、制度のあり方については中医協で検討していくべき」。
また、「制度としては昨年度から運用開始されたところ。まずはその影響の検証、課題の抽出などを行っていくべきであり、保険収載の可否の判断や償還可能な価格までの引下げといった仕組みの検討は時期尚早」というご意見。
有効性、安全性が確認された薬剤については、基本的に保険収載を原則として、誰もが使えるようにしていくという方向性に関しては賛成。一方で、財政状況も悪いという中で、スレッシュホールドという技術的な閾値のところに関しては、保険でみて、それを超える部分については保険外併用でみていくというような運用の仕方をすれば、財政と医療、薬剤へのアクセスを両立するような考え方ができるのではないか、というご意見もございました。
最後でございますけど、わが国の薬価制度と費用対効果評価、まあ、ここで言う「費用対効果評価」は欧米等を中心に行われている、そういう「オリジナル」と言うかですね、学術的には費用対効果評価という意味かとも言われますが、そうしたものは基本的にコンセプトが違うものであり、費用対効果の議論は現行制度とどのように調和させていくかということが一番重要、というご意見がございました。
3月26日の部会においては、この議題については「基本的には、中医協の議論を見守り、適宜必要な情報があれば(医療保険)部会に報告」をするということとされております。
その下の欄でございますけれども、こちらは9月で頂いたご意見でございますが、
「将来的には、イギリスやスウェーデンのように償還可否の決定に用いることも検討すべきだが、昨年度から導入された仕組みであり、企業分析における課題等も出てきているため、まずは中医協において、実施状況をしっかりと検証し、制度の成熟度を高めるとともに、現行最大で1年半かかる保険収載から価格調整までの期間をできる限り短縮していくことが先決ではないか」
というご意見を頂いたところでございます。
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6コマ目以降は、関連する既存の資料でございますけれども、簡単に触れさせていただきます。
6コマ目は、新医薬品の薬価算定の仕組みでございます。
新しい医薬品につきましては、類似薬のあるもの、ないものに分かれまして、
あれば類似薬効比較方式、なければ原価計算方式という方法で薬価を算定すると。
で、その中で補正加算というですね、加算の対象となる品目については、その特徴に応じた加算が付けられるというものでございます。
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7ページ目をご覧ください。
こちらは医療機器等の材料の価格制度でございます。
新規材料、左側でございますけれども、類似機能区分があるものは原則として類似機能区分比較方式、なければ、特例的なものでございますけれども、原価計算方式という方法で価格を決定していくと。
その中で、補正加算の対象となるか否かという、(対象と)なれば加算を付けていくという制度で算出がなされております。
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8コマ目でございますけれども、こちらは費用対効果評価制度を昨年の4月から本格制度的な運用がなされているものでございます。
こちら、左側でですね、「費用対効果評価の手順」の概要を書いてございますけれども、
品目を選定をし、続いて、企業による分析。
で、その前にですね、分析前協議、これを企業側と公的分析側で行いまして、分析枠組み、どのように評価をしていくかという枠組みを決定し、企業分析を行うと。
その後、公的分析を3カ月から6カ月の持ち時間で実施をする。こちらについては国立保健医療科学院が主体となって実施すると。
それを踏まえて総合的評価を行い、その5番目でございますけれども、費用対効果の評価結果に基づく価格調整を実施するという流れで、実施をすることとされております。
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その方法でございますけれども、右側にございますように、評価の対象品目が既存の評価対象品目と比較して費用、効果がどれだけ増加するのかを分析すると。
「増分費用効果比」という、「ICER」と呼んでおりますけれども、それを算出するということでございます。
分母側が評価対象品目の効果、ラージBですね。から、対象の既存の対象品目の効果、ラージAを分母として、費用をそれぞれスモールb 引く、スモール a というものを置いた比で見ていく。
で、健康な状態での1年間の生存を延長するために費用の算出という、左の図であるような数値を算出していくと。
で、その下、総合評価に当たっては希少な疾病や小児、抗がん剤等の配慮が必要な要素も考慮した上で、その評価結果において対象品目の価格の調整を行うと。
で、費用対効果の悪い品目は価格を引き下げるということでございます。
その下の「※3」の所にございますように、「価格調整範囲は有用性系加算等」について、その下の横の図の所にあります価格調整率「ICER」に基づいて、価格調整率に基づく調整を行うということとされております。
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9コマ目でございますけれども、費用対効果評価の対象品目の選定基準、こちらは区分「H1」から「H5」となっておりまして、「H1」から「H3」が新規の収載品。「H4」は既収載品。「H5」は類似品目ということで、
それぞれ対象となるのはですね、類似薬効方式、原価計算方式、それぞれ有用性系加算が算定されているもの。
また、原価計算方式においては開示度50%未満のものも含めて対象とすると。
で、選定基準は右側にございますように、市場規模等の条件で選定をしていく、ということとしております。
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10コマ目でございますけれども、最終的な価格調整の範囲でございますが、先ほど概要の所で申し上げましたとおり、有用性加算を基本的には価格調整範囲とすると。
で、原価計算方式において開示度が50%未満の品目については営業利益等の部分についても対象としていく。
また、開示度が50%以上の品目でも、この、詳細は省きますが、図の③の対応とするということとして、運用をすることとなっております。
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11コマ目。それぞれの価格調整率でございますけれども、先ほど申し上げました「ICER」という、品目ごとの値を算出した結果に基づきまして、価格調整を、この図の考え方に基づきまして実施をするということとされております。
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12コマ目でございますけれども、こちらは10月1日時点の費用対効果対象品目の現状でございます。
12品目が現在、動いております。
一番右のカラムでございますけれども、それぞれのステータス、「公的分析中」でありますとか、「企業分析中」というところを記載をさせていただいております。
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13コマ目でございますけれども、本日ご議論いただきたい「現状・課題」および「論点」でございます。
「現状・課題」の所でございますけれども、昨年4月より運用開始となったこの制度では、現在、対象品目12品目が選定され、分析を実施しているところでございます。
この制度に係る体制の拡充のため、公的分析班に加わっていただく大学の追加でございましたり、人材育成プログラム、これを本年4月からスタートしたり、また調査研究など、体制強化の取組を行っているところでございます。
「改革工程表2019」では、冒頭申し上げましたような検討を行うということとされております。
それを踏まえまして実施した医療保険部会における議論では、先ほど申し上げたような意見を頂いたところでございます。
5つ目の丸の所でございますけれども、今後、年度内にも複数の品目の分析、評価結果が取りまとまり、総合的評価について中医協において審議をいただく見込みとなっております。
このような状況を踏まえまして、医療保険部会においては、「中医協での検討を継続する」とともに、その結果等について「報告を求める」とされたところでございます。
本日、ご意見を伺いたいのは、
費用対効果の保険収載時の活用等も含めた実施範囲・規模の拡大について、現行の制度運用の状況、体制強化の取組状況、個別品目に係る総合的評価の審議が今後なされること等を踏まえまして、その活用についてどう考えるか、ご意見を頂ければと思います。
事務局からは以上でございます。
2.質疑
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。
この費用対効果というテーマは非常に重い、重要なテーマです。
で、今、ご説明がありましたように、既に制度は走っているんですけれども、いろいろ固めていかない(といけない)ところがございます。
医療保険部会の議論を拝見すると、私たち中医協の議論を見守るということですので、私たちがしっかりと検討していかないといけないというふうに思っております。
本日は、その結論を出すというのは到底無理なんですけれども、これから、いろいろ議論を進めていく上で、こういうふうなことを考えていく必要があるんじゃないかというふうなことにつきまして、委員の方々の、いろんなご意見を拝聴したいというふうに思っております。
それでは、早速ご意見を伺います。はじめに、お手が挙がっています松本委員からお願いいたします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
はい、ありがとうございます。松本です。
費用対効果評価の制度化についてですけれども、これまでの議論の中で、原則として有効性、安全性等が確立した医療は、保険給付の対象とされてきたこと、
それから、医薬品や医療機器の新規収載品につきましては、費用対効果評価の導入により、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグを生じさせないようにする必要があることといった観点から、
原則として、保険償還の可否の判断には用いずに、価格の調整に用いること、
また当面は、一度、薬価・材料価格を設定して保険適用した上で、あとから費用対効果評価の結果を用いた価格調整を行うこととされているところであります。
本日は、その確認をしていただいたところでありますけども、昨年度から、制度の運用が開始されたところでありますので、まずは、医療保険部会における議論にも出ておりますとおり、その影響の検証、課題の抽出などを引き続いて行っていくべきであるものと考えます。以上です。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
続きまして、有澤委員、お願いいたします。お手が挙がっています。
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〇有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)
はい。ありがとうございます。
私からも、この制度自体がですね、昨年から運用を開始されて、現在、12品目が分析中であるということ。このへんのところで、実施体制ですか。評価の人材、あるいは、そういった公的分析班、あるいは調査研究等がまだまだ確立していない段階であると考えます。
そういったところからですね、これら、今後、影響の総合的評価のものを出していただいて、その影響の検証、課題、こういったものを明確にした中でですね、実施していくというふうに考えます。
そういった観点からですね、実施範囲あるいは規模の拡大というものを、必要以上、行うものでもありませんし、当然、こういったものがですね、あまり広がった中で、患者さんへのアクセスの阻害要因にはなってはならないと考えますし、
もう一方で、この評価についてはですね、やはり市場規模が拡大するもの、あるいは単に希少疾病等で単価が高いもの、これらについては、慎重な議論、検討が必要だと考えます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
それでは、吉森委員、お願いいたします。
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〇吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)
はい、ありがとうございます。
この費用対効果評価制度については、将来的には、やはり償還可否の決定に用いることも当然、視野に入れて、検証・検討していく必要があるというふうには考えております。しかし、制度として、昨年度、運用開始された現状を勘案しますと、まずは国内の実施事例の集積・検証を、スピード感を持って進めていくということが必要であるというふうに思います。
また、諸外国における取組の動向、内外の関係業界の意見などを参考に、継続的かつ発展的に検討を重ねて、制度の成熟度を高め、実効性を担保していく、実効性を担保した制度にしていく、こういうことが必要である、重要であるというふうに考えております。
また、現行の制度においては、迅速な価格調整の観点から、現在、最大で1年半かかる保険収載から価格調整までの、この期間、これをできるだけ短縮していくこと、ならびに対象品目数を増やしていくこと、これが目下の重要な課題であるというふうにも考えております。
そのためには、公的分析班、企業などによる分析評価体制、これの充実が何よりも不可欠であるというふうにも認識しております。
ついては、この観点でですね、昨年も、その費用対効果評価制度の専門部会導入時において、公的分析班の、その体制強化と人材育成、これについての具体的な充実案について、工程表の検討を早急にお願いしたいというふうに申し上げた記憶がございますけれども、今回、どのように、この体制強化が図られているのか。
今後、どのように強化をしていくのかというような考え方として、22・23ページに一部ご紹介いただいておりますけれども、具体的に、いつまでにどのような陣容の体制整備をお考えなのか、どういうような工程でお考えなのか、お聞かせ願えればありがたいというふうに思います。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。
今、ご質問がありましたので、事務局からご回答、お願いします。
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい、事務局でございます。ご質問。ありがとうございます。
吉森委員からご指摘をいただきました費用対効果の体制についてでございますけれども、資料の22コマ目、参考の部分にございますように、現在ですね、真ん中にございます、22コマ目のポンチ絵の真ん中のほうに記載ございますように、
国立保健医療科学院におきまして、保健医療経済評価センターという機関、組織において8名、こちらもですね、従来6名であったものが8名に増員をされるということで、体制の強化を進めております。
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また、言及いただきました、「公的分析班」と言いまして、実際の分析作業を行っていただく機関でございますけれども、その右下でございまして、
現在、聖路加国際大学、立命館大学、慶應義塾大学と3大学、慶應義塾大学については、今年度から加わっていただいたということで、こちらについても体制の強化を進めているところでございます。
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また、23コマ目についても、ちょっとご説明をさせていただければと思いますけれども、全体の体制、公的分析の体制のみならずですね、企業における体制強化というのも非常に重要な視点でありまして、
国内のこうした費用対効果評価ができる人材をですね、全体的に育成していく必要があるということで、今年度から、こちらは慶應義塾大学において、医療経済評価コースというものを設けていただいて、人材育成に取り組まれているというところでございます。
下のポツでございますけども、このコースの参加者、これは6月時点でございますけれども、51名ということで、1年半で全単位の取得が可能となるということで組んでいただいております。
今後、工程表や計画的な強化というお話、頂きましたけれども、まず、今申し上げたような取組を進めているところでございまして、事務局の中でですね、関係の方々とちょっと意見交換をさせていただいて、どういうかたちで、それを中医協にお示しできるのか、ちょっと検討させていただければと思います。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
吉森委員、お願いいたします。
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〇吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)
はい、ありがとうございます。
いずれにしましても、今の12品目を6名から8名に、この研究センター、強化したと。公的分析班についても、養成はしているというのはよく理解ができたんですけれども、
この12品目が、果たして1年半できちっと、今、公的分析班という、先ほどの資料にもありましたけれども、対応中だというのも分かりますけど、
今後、ますます高額な医薬品が増えてくる、対象品目も増えてくるという環境を鑑みますと、この強化体制をいつまでに、どのような陣容でやる、
それによっては、この評価制度の、いわゆる対応キャパも決まってしまうんじゃないかと思いますので、ぜひ、そのへん、きちっとした体制を早く充実するような工程を、具体的な工程をお願いしたいというふうに思います。以上です。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
先ほどから、佐保委員が、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
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〇佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)
はい、ありがとうございます。
これまでの各委員の発言と、おそらく大筋では同様の意見ではないかと思いますが、12ページの現状を見ると、今後の分析結果や課題について検証し、フィードバックしていくことが、まず重要ではないかというふうに考え、
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保険収載の可否の判断や、償還可能な価格モデルの、引下げといった活用の検討については、まだ早い、時期尚早ではないかというふうに考えております。
今後も、議論を継続していく必要があると考えます。以上です。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
幸野委員、お願いします。
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〇幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)
はい、すいません、ほぼ同様な意見なんですけど、一応、用意してきたので発言させていただきます。
今回の論点は、医療保険部会の検討から中医協に投げられたということなんですけど、今、この論点を投げられても、誰も答えは出せないと思うんですね。
昨年、本格運用になって、12品目が今、走ってる最中なんですけど、まだ、その結果も出てない中で、何の検証もできないというふうに思います。
今できることは、先ほど、吉森委員もおっしゃったように、実績をより多く蓄積していくことだと思います。
この資料にもありまして、岡田室長からの説明にもありましたが、致知、営々の人材をたくさん育成して、今、年間、約10品目程度はできるということなんですけど、この規模を徐々に拡大していくことだと思います。
まず、やるべきことは、ある程度、実績が蓄積されたあとには、まずは現行の仕組みの妥当性を検証する必要があると思ってまして、
例えば、評価の流れですね。評価の流れや、1年半かける、この期間が妥当なのかどうか。それから、500万、750万、1,000万と設定されたんですけど、この閾値が果たして妥当なのかどうかということも必要だと思います。
それから、価格調整の在り方ですね。今は、その加算部分とか営業利益率のみに価格調整が行われてるんですけど、果たして、これがいいのかどうかという観点。「費用対効果評価の費用対効果」というところを検証していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
これをしっかり検証するっていうことが第一ステップで、医療保険部会でいろいろ出ている保険収載の可否とか、保険外併用の活用なんかも出てるんですけど、
少し、将来的には検討しなきゃいけない事項だと思うんですが、まずは今の現行の制度をしっかりと検証したあとで、次のステップとして、将来的に議論するべきことだろうというふうに思います。以上です。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。ほかにご意見ありましたら、ぜひお願いいたします。
ないですね・・・。
えっと、ちょっと、会長として、予想外にご意見が少なかったので(苦笑)、意外に思ってるんですけど。よろしいでしょうか。
じゃあ、いろいろ、この件につきまして、ご意見があると思います。
ただ、ご指摘が何人かの委員の方々からもありましたように、まだ調査が、評価が終わっていないので、現時点でいろんなことを議論するっていうのは、なかなか難しいかなあと思います。
ただ、お話を伺っていると、費用対効果評価につきましては、体制をしっかりと強化していく必要があるというふうなご意見もありました。
それから、昨年度から制度が、制度の運用が始まっているんですけれども、まずは、その影響の検証、それから課題の抽出が必要であるというふうなご意見もあったかと思います。
それから、事務局から示されておりますように、先ほど、私も申し上げましたが、まだ費用対効果評価の結果が、中医協に報告されている品目がございませんということです。
ただ、年度内にも報告がされている、される見込みであるということを考えますと、まずは今、走っている仕組みの実施状況を検証して、制度の成熟度を高めていくと、高めるための検討を中心に、私たちで議論を進めていく必要があるかと思います。
ということで、事務局に対しましては、私からの要望でもあるんですけれども、専門組織における評価結果が得られる品目につきましてはですね、結果が得られ次第、できるだけ速やかに報告していただきたいと思います。
それから、それと同時に、現行の制度が抱えている問題を整理していくということも、ぜひお願いしたいと思っております。
ということで、本件につきましては、特に追加のご意見ないようでし・・・、なければ終わりとさせていただきたいものですけれども、よろしいでしょうか。
はい。この件につきましては、これからも引き続き、検討していきたいと思います。
本日の議題は以上です。なお、次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
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〇吉川久美子委員(日本看護協会常任理事)
すみません! すみません! 日本看護協会の、
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
吉川委員、お願いします。
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〇吉川久美子委員(日本看護協会常任理事)
吉川ですけれども、ちょっと確認させてください。
先ほど、基本小委からの報告に関してですけれども、一応、中医協で承認というところだったんですけれども、
基本小委のほうで、私も、ちょっと意見、述べさせていただいたんですけれども、そういった意見とか、そういったものを修正とかを検討し、また、された上での承認というふうに理解してよろしいでしょうか、というところです。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、この件について、医療課長からお願いします。
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〇吉川久美子委員(日本看護協会常任理事)
先ほど、基本小委の中で幸野委員から頂いた意見とかも、非常に重要だったというふうに思っているんですけれども、
私のほうから質問させていただいたことの、結果的に、その、回答肢の中に2つの選択が含まれているということになってしまっているので、
結果的に、回答する人は迷うでしょうし、最後、分析のときに、これ、影響してくるかなというふうに思っておりますので、
そこの点をきちんとしなければいけないというところもあり、ご質問、ご意見を述べさせていただいたんですけれども、そこのところをもう一度、再度、確認をさせてください。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい。医療課長、お願いします。
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〇厚労省保険局医療課・井内努課長
はい。当然、基本小委のご意見を踏まえた上でということでございます。
その上で、ご報告をさせていただいたということですので、基本小委で頂いたご意見というのは、事務局で検討するというお約束させていただきましたので、そのとおり、させていただきたいと思っております。
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〇吉川久美子委員(日本看護協会常任理事)
よろしくお願いします。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい。じゃあ、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題は以上ですので、これで総会を閉会といたします。どうもありがとうございました。
(配信終了)
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