7月22日の中医協総会では、PCR検査をめぐる議論があった。日本医師会(日医)の幹部は「PCR検査の数はまだ十分とはいえない」「ハードルがまだある」「非常に面倒な仕組み」などと苦言を呈した。厚労省の担当者は「省の関係部局とも情報共有して、取組を進めてまいりたい」と理解を求めた。(新井裕充)
この日の総会では、新型コロナウイルスに関する臨床検査「FilmArray呼吸器パネル2.1」の保険適用を承認した。
これに関連して、日医常任理事の松本吉郎氏が質疑で「新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査の数はまだまだ十分とはいえない」と切り出し、「より多くのPCR検査が実施できる全体的・総合的な体制を確保すべきではないか」と厚労省側の見解を求めた。
厚労省の担当者は、PCR検査を実施するために必要な都道府県等と医療機関との委託契約に言及し、「委託契約の効果は遡及させることができるので、契約手続きに時間を要する場合などには契約を待たずに行政検査を実施することが可能」などと説明した。
また、委任を受けた取りまとめ機関が代理人として都道府県等と集合契約を締結する方法も紹介し、「今後も必要な方が確実に検査を受けていただけるよう、さらなる体制の強化について厚労省をあげて取り組んでいく」と述べた。
松本氏は「おっしゃることはよく分かる」としながらも、「PCR検査を必要とする場合にまだハードルがあるという現場の声が聞こえてくる」と強調し、「1つひとつ丁寧な対応を今後ともしていただきたい」と要望した。
日医副会長の今村聡氏は、医師会の集合契約をめぐる問題に触れながら、「東京都では唾液検査のみを行うことを条件に集合契約をするということで、例えば、抗原検査をしようとすると、都道府県と医療機関、例えば診療所が個別に契約を結ぶという非常に面倒な仕組みになっている」と現状を説明。「全部集合契約でできるということを厚労省はしっかりと周知していただきたい」と求めた。
厚労省の担当者は「関係部局とも情報共有して取組を進めてまいりたい」と理解を求めた。
詳しくは以下のとおり。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
それでは、議事に入らせていただきます。はじめに「医療機器及び臨床検査の保険適用について」を議題といたします。
本日は、保険医療材料等専門組織の小澤委員長にお越しいただいております。小澤委員長より、ご説明をお願いいたします。
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〇小澤壯治委員長(東海大医学部医学科領域主任教授)
はい。小澤でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、説明いたします。「中医協 総-1-1」の資料をご覧ください。今回の医療機器の保険適用は、C1が15製品15区分です。
(中略)
次に、13ページ目をご覧ください。販売名は、「FilmArray 呼吸器パネル2.1」です。
測定項目は、お示ししているウイルス細菌の核酸です。測定方法は、「マイクロアレイ法(定性)」です。
16ページ目の「製品概要」をご覧ください。
本検査は、鼻咽頭拭い液中の「SARS-CoV-2」を含む21項目の病原体の核酸検出に使用する臨床検査です。
13ページにお戻りください。
保険点数につきましては、「D023 14 SARS コロナウイルス核酸検出3回分」1,350点、
「カテゴリーB 感染物質輸送を行う場合4回分」1,800点を参考点数としております。
ご説明いたします内容は、以上でございます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
どうもありがとうございました。それでは、事務局から補足があれば、お願いいたします。
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
特にございません。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問等ございましたら、お願いいたします。
はい、松本委員、お手が挙がってます。よろしくお願いします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
はい、ありがとうございます。臨床検査の保険適用についての最後の品目である「FilmArray 呼吸器パネル」について、ご質問いたします。
これは、新型コロナウイルスを含めて21項目の病原体を同時に検出できるということになってるわけですけれども、本製品を使用するのは、多項目を同時に調べる必要がある場合に限定されるのでしょうか。
それとも、今回加わった新型コナウイルスだけを調べる目的で、一般外来において本検査を実施することも認められるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
それでは、お願いします。
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい。医療技術評価推進室長でございます。
ただいまの「FilmArray」に関します、ご質問でございますけれども、基本的には、臨床検査を医療現場で選択していただく際にはですね、その検査が医学的に適切と判断されたものとして実施していただくということかと承知をしております。
本検査につきましても、新型コロナウイルス感染症のみを疑った場合でありましても、本検査を選択することが適切だと判断される場合について認められるものと承知をしております。事務局からは以上でございます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
松本委員、よろしいでしょうか。はい、お願いします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
はい。分かりました。それなりの目的があって、やはり使用すべきだという、そういうお考えでよろしいわけですね?
あの、要するに、結局、新型コロナウイルスに、とですね、もう1つ、ほかの、例えばインフルエンザとかをですね、そういったところを疑って、なかなか診断が付かないときに限って使うべきということでよろしいんでしょうか?
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい。あの、そうですね、その、この検査、「FilmArray」で同時に複数の検査が可能となるものであるわけですけれども、
この検査が、この患者さんで最適な検査だというふうに医療現場で考えられるということの場合に、この検査が認められるということだと思っておりますので、
まあ、この新型コロナのみを仮に疑ってもですね、そこでいろいろな選択肢がある中で、この、まあ、あの、迅速性でありますとか、さまざまな要素がございますので、そういったようなことを加味した上で、この検査を選択すると言われた場合には、そういうことも認められるんだろうというふうに思います。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
松本委員、お願いします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
はい。では、総合的に考えて医師が判断すれば検査可能ということでよろしいでしょうか?
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい。そのとおりだと認識しております。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
ありがとうございます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、よろしいでしょうか。ほかにご質問ございますでしょうか。
あ、松本委員、また、お手が挙がってます。お願いします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
この製品に限ったことではありませんけども、もう1点確認をさせてください。
新型コロナウイルス感染症に係る、そのPCR検査の数はまだまだ十分とはいえないと考えております。
東京をはじめ都市部では、日々、陽性患者の報告が続いております。今後、感染がさらに拡大した局面も想定し、より多くのPCR検査が実施できる全体的、あるいは総合的な体制を確保し、必要な検査が受けられるようにすべき、するべきではないでしょうか。これについての事務局のコメントを求めます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、お願いします。
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
はい。事務局でございます。
事務局、厚生労働省といたしましても、委員おっしゃられましたように、医師が必要と判断をするPCRが適切に実施できるよう、体制を整備していくことは重要だというふうに考えております。
PCRの体制の整備につきましては、今、ご議論いただいておりますようなPCR検査の保険適用、それとともに、また、抗原検査との最適な組み合わせによる迅速かつ効率的な検査体制の構築、また、検査能力の増強のためのPCR検査センターの設置や、また、歯科医師による検体採取の協力の促進等の取組を行ってきたところでございます。
また、医療機関におきましても、PCR検査や抗原検査を実施する場合には、都道府県等と医療機関との間の委託契約を締結していただくことになっておるわけでございますけれども、
その際につきましてもですね、委託契約の効果、これにつきましては、遡及させることができるということとしておりまして、契約手続きに時間を要する場合などには契約を待たずに行政検査を実施することが可能であるということの周知をさせていただいておりますほか、
委任を受けた取りまとめ機関に代理人として都道府県等との集合契約を行っていただくことによりましてですね、複数の医療機関と行政検査の委託契約を締結するという手順についてもお示しをさせていただいているところでございます。
今後とも、必要な方が確実に検査を受けていただけるよう、さらなる体制の強化につきまして、厚労省をあげて取り組んでいくというところでございます。以上でございます。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、松本委員、お願いします。
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〇松本吉郎委員(日本医師会常任理事)
ありがとうございます。
おっしゃることはよく分かりましたけれども、実際の現場ではですね、まだまだその、例えば、委託契約にかかる煩雑さとかですね、あるいは検体をですね、検査する体制はともかくとして、搬送する体制がしっかりと、まだ、なかなか数をこなせないとかですね、
いろいろ、その、医療機関、まあ、医師としてですね、このPCR検査を必要とする場合にハードルがまだあるというような現場の声からも、現場の声が聞こえてきますので、ぜひそれに対して1つひとつ丁寧な対応を今後ともしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。ほかに、今村委員、お手が挙がっています。お願いします。
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〇今村聡委員(日本医師会副会長)
ありがとうございます。今、松本委員から詳しくお願いを申し上げたところですけれども、
厚生労働省のご説明で、さまざまに周知を図っていただいてると、その点はよく理解をしておりますけれども、
実際、その、都道府県ごとのですね、対応っていうのは相当違っているように聞いております。
検査体制が非常に遅れていると。
で、日々、その、例えば、PCRについても、鼻咽頭のスワブもあれば、唾液の検査も入り、また、さらに抗原検査も入っているということでですね、こういう検査の方法自体もですね、どんどん変わっている状況の中でですね、
先ほど、厚労省から委託という、契約のお話、ございましたけれども、これ、例えば、唾液に関するPCR検査については医師会の集合契約っていうようなことが認められていると。
しかしながら、東京都ではですね、唾液検査のみを行うということを条件に集合契約をするということで、例えば、抗原検査を行おうと思うと、都道府県と医療機関、例えば診療所がですね、個別に契約を結ぶっていうような、こういう非常に面倒な仕組みになっています。
もう少しですね、全部集合契約なら集合契約でできるっていうようなことをやはりですね、厚労省はしっかりと周知をしていただきたいと。
そうしないとですね、なかなかこの検査体制というものは強化されないんじゃないかなあというふうに思っています。
それから、もう1点。やはり行政検査にすることによって患者さんの、その検査の費用をですね、支払わなくてもいいということのためにですね、いろんな契約っていうことが発生しているっていうふうに理解しておりますけれども、
例えば、抗原検査であればですね、おそらく2,000円以下の金額になっていると思います。
で、これをいろいろですね、患者さんに、例えば、PCRセンターに移動していただくための費用であるとか、さまざまなことを考えるとですね、その費用自体がそんなに大きな患者さんの負担になるとはとても思えないんですね。
従ってですね、この自己負担の在り方っていうものについてもですね、もう少し、厚労省、しっかりと、ちょっと考えていただきたいなあというふうに思っております。
抗原検査のあとではですね、その2,000円以下で患者さんができるということであればですね、医療機関、特に診療所等ではですね、今後、インフルエンザが流行ってくるということを考えますとですね、発熱の患者さんに対して、しっかりとした感染防御をする体制の中でですね、検査を行いたいという医療機関も多数ございます。
従ってですね、そういった今、申し上げたようなことをしっかりと厚労省もですね、再度検討していただければありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい、ありがとうございます。じゃ、事務局からお願いします。
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〇厚労省保険局医療課医療技術評価推進室・岡田就将室長
事務局でございます。貴重な情報、ご意見、ありがとうございます。
省の関係部局とも情報共有して、取組を進めてまいりたいと思います。
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〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
はい。ありがとうございます。ほかに、ご意見、ご質問ございますでしょうか。
はい。それでは、ほかに、ご質問等ないようですので、本件につきましては、中医協として承認するということでよろしいでしょうか。
はい。それでは、説明のあった件につきましては、中医協として承認したいと思います。
(以下略)
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