不正発覚で経営再建中の医薬品専業大手・日医工の新たな経営陣が2月17日に正式決定した。ファンドや医薬品卸のもとで再建が始まるが、後発品の供給不安の状況は、業界全体に暗い影を落とす。厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に迎えた総合対策に関する有識者検討会」が検討を急ぐものの、抜本的な解決策を練るには至らず、袋小路に陥っているかのようだ。【本根優】
15日の有識者検討会。厚労省は、後発品の「少量多品種生産というビジネスモデル」が問題の背景にあると分析した。
厚労省ОBの香取照幸構成員(上智大学教授)は「少量多品種生産でたくさんの企業があり、安定供給・品質管理の不備につながっている。諸外国のように必要な量を確保できる企業数に一定程度コントロール必要がある」と述べた。
この日の議論では、06年の医政局長通知で義務付けた後発品の「薬価収載後5年間の安定供給」や、05年に認められた後発品の共同開発などについて、構成員からは見直しを求める声が相次いだ。
厚労省は後発品の共同開発は「参入障壁を下げて後発品の数量を増やす目的だった」と当時の政策意図を説明したものの、香取構成員は「安定供給につながっているのか考えると、決してそうなっていない。過当競争で薬価が下がっているだけ」と突っぱねた。
16日には日本製薬工業協会の岡田安史会長(エーザイ代表執行役COO)が記者会見の中で「安定供給や品質の問題が起きると産業全体として成り立たない。そうならないために、政府に手を打ってもらうことが不可欠だ」と異例の注文をつけた。
また岡田会長は、新薬創出・適応外薬解消等促進加算が施行導入された2010年以降、長期収載品は速やかに価格を下げることを受け入れ「後発品に席を譲ると言っている」と述べた。
結局はジリ貧の後発品業界の今後は「政府頼み」となってきている状況だが、忘れてはいけないのは、厚労省こそが、診療報酬や調剤報酬などでさまざまなインセンティブを付け、20年に渡って後発品使用の旗振り役を務めてきたにもかかわらず、その旗は降ろさずに改善策を練ろうとしているということだ。
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