政府は6月9日の経済財政諮問会議に「骨太の方針2021」の原案を提示した。これに大きく落胆したのが、製薬関係の団体だ。自民党の厚生労働族議員らに対し、業界の主張を刷り込むようにロビー活動を展開したにもかかわらず、示されたのは「ゼロ回答」と言える内容だったからだ。【本根優】
5月26日、首相官邸に日本製薬団体連合会の手代木功前会長(塩野義製薬社長)、眞鍋淳会長(第一三共社長)、日本製薬工業協会の中山讓治前会長(第一三共常勤顧問)、岡田安史会長(エーザイ代表執行役COO)の姿があった。菅義偉首相に対し、会長交代を報告するのが目的だった。
もっとも、製薬業界は21年度の薬価・中間年改定(毎年改定)により、想定をはるかに超える大きなダメージを被った。
それを断行したのは、眼前の菅首相なわけだから、それに関して多少なりとも直接「物申す」ことができる貴重な機会だったが、そういう選択はしていない。
その代わりに、与党の関係議員50人近くの部屋(議員会館内)を回り、業界の主張を説明して回った。
最重要視するのは「特許期間中の新薬の薬価維持」だ。中間年改定で新薬も対象になったことを今後は回避し、かつ新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象を広げる狙いがある。
骨太の方針の原案段階で、与党が政府に働きかけ、多少は反映されるのではと期待したが、盛り込まれた文言は「革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点及びそれ以外の長期収載品等の医薬品について評価の適正化を行う観点から薬価算定基準の見直しを図る」というものだった。
これは22年度の薬価制度改革で「メリハリをつける」と、ごく当たり前のことを言っているに過ぎない。
衆院選が迫るなか、これでは製薬業界からの支援は得られないと焦った与党の政調幹部議員は「イノベーション評価の部分で修文が必要だ」と、見直しを迫る考えを示した。最終的に、どういう文言に落ち着くのか。