「痛し痒し」の薬価対応

西幸門前_2023年7月26日(中医協の帰り)

 日本医師会が24年度診療報酬改定への対応で、薬価制度改革について「痛し痒し」の状況にある。医薬品の安定供給を重視し、薬価上の評価を加えれば、その分だけ診療報酬改定に回る財源が減りかねないためだ。【本根優】

 関係者によると、7月の都道府県医師会長会議では、「医薬品を巡る諸課題」をテーマに議論。医療現場に混乱をもたらしている医薬品の供給不安について、診療報酬・薬価制度の問題をはじめ、さまざまな論点について、日医執行部(松本吉郎会長)との意見交換が行われた。

 長島公之常任理事は「18年度の薬価制度抜本改革以降、高額薬剤対応などで医療保険財政へのインパクトを軽減し、国民皆保険を維持することに軸足が置かれてきた」と政府のスタンスを紹介。その上で「18年度から6年連続して『毎年改定』が実施されたことや、後発品を中心とする安定供給上の問題が生じたことで、必要な医薬品確保に配慮がいる事態を招いた」と説明した。

 さらに今後、製薬業界などの主張に応じて、薬価基準上の評価を加えたり、新設したりすることは「その分、医科の技術料として使える改定財源が減ることにつながる」と危機感を示した。

 薬価改定財源の診療報酬本体(技術料)への充当に関して問われると、長島氏は「健康保険上、薬価は診療などと不可分一体との考えから、薬価引き下げ分は診療報酬本体に充当すべきとの考えは変わらない。そのときどきの情勢も踏まえつつ、執行部として対応していきたい」と、日医のスタンスを披露した。

 松本会長も議論を総括する形で答弁。「大変大きな課題で、解決の糸口をすぐにつかむのは難しいが、都道府県医師会長の皆さんと執行部が、課題を共有できたことは大きい」と述べた。医薬品の供給不安から脱するための措置は歓迎したいものの、診療報酬本体に振り向ける財源は減らしたくない。そうした状況でアクセルとブレーキを同時に使い分けることになりそうだ。

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