厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が2月28日、約8ヵ月ぶりに開かれた。元官僚の構成員らから、物価上昇を医薬品の価格に反映できる薬価制度の必要性を指摘する声が相次いだ。 【本根優】
検討会の開催は23年6月の中間報告取りまとめ以来。24年度薬価制度改革での対応など、中間報告の内容をどのように反映したか、厚労省が報告した。
口火を切ったのは元大蔵官僚の小黒一正構成員(法政大学経済学部教授)だった。小黒氏は「インフレ経済を見通したうえで、物価上昇を何らかの形で反映できる薬価改定スキームの検討が必要だ」と力説した。
その上でアプローチ案として「名目GDP(国内総生産)成長率に連動した薬剤費の確保」が最適解と示しつつ、個別の薬価に「物価上昇率を直接反映した薬価改定」も例示した。
菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)も小黒氏に同調し「恒常的・安定的な仕組みは本気で考えないといけない」と述べた。
元厚労省年金局長の香取照幸構成員(兵庫県立大学大学院特任教授)も、現行の薬価ルールは「物価上昇を価格に反映することを制度に内包していない。上限価格を決めて競争させるのは、その時点で市場の自律的な価格形成に一定の枠をはめている。ある意味、市場実勢価格に基づいて改定しているというのは虚構に近い」と辛らつに語った。
一方で、異を唱えたのが、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)。小黒氏らの意見に対し「少し勇み足の議論だ」との見方を示しつつ、インフレ率と市場実勢価格、乖離率の関係について「きちんとデータを見ながら議論する必要がある。インフレの議論を直ちに薬価制度改革や、市場実勢価格の取り扱いにつなげるのは慎重であるべき」と意見を述べた。
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