日本医師会は9月6日の定例会見で、24年度税制要望を公表し、社会保険診療に係る「消費税制度の見直し」について、診療所と病院で対応を分ける考え方を示した。診療所は現行通り「非課税のまま診療報酬上の補填を継続」し、病院については「軽減税率による課税取引に改める」ことを要望した。要望内容自体はクリアになったものの、実現性については疑問符が付く。【本根優】
23年度要望までは「小規模医療機関等」は非課税のまま診療報酬上の補填、「一定規模以上の医療機関」は課税転換で軽減税率と主張していたが、24年度要望では診療所・病院と明確に示した。
宮川政昭常任理事の説明では、焦点だった有床診療所の扱いについて、全国有床診療所連絡協議会と協議し、アンケートを実施したところ「非課税のまま」を望む意見が多かったという。
診療所・病院と分けること自体、政府・与党などに要望内容を理解してもらうことを考えると、ロビー活動のやりやすさにはつながるだろう。
しかし、非課税と課税、いわば水と油のように違うものを、同じ保険診療の世界に持ち込もうとすることに対して、世論・国民にどう説明するのか。「医療界が“損しない”仕組みを都合よくつくろうとしている」と受け取られる可能性の方が高いだろう。
日医は横倉義武会長時代、19年度の税制改正で「診療報酬への上乗せ対応の精緻化」や税制上の措置を組み合わせる手法により「問題は解決した」と宣言。当時の中川俊男副会長も「非課税制度にあって最大限の着地」などと説明していた。
元日医幹部は、現在の日医の要望状況について「政府・与党へのパイプが細く、動きがうねりになっていない」とこぼす。
かつては、日医内に検討の場を設けつつ、財務省まで巻き込んだ議論を行い、根本的な問題解決を探る動きがあったが、現在の日医の検討は、要望内容の「シンプルさ」にこだわり、実現性の部分では、手を打つのを後回しにしているかのようだ。
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