「形だけの」消費税提案

皇居前広場の車両止め_2023年8月24日(医療保険部会の帰り)

 日本医師会は9月6日の定例会見で、24年度税制要望を公表し、社会保険診療に係る「消費税制度の見直し」について、診療所と病院で対応を分ける考え方を示した。診療所は現行通り「非課税のまま診療報酬上の補填を継続」し、病院については「軽減税率による課税取引に改める」ことを要望した。要望内容自体はクリアになったものの、実現性については疑問符が付く。【本根優】

 23年度要望までは「小規模医療機関等」は非課税のまま診療報酬上の補填、「一定規模以上の医療機関」は課税転換で軽減税率と主張していたが、24年度要望では診療所・病院と明確に示した。

 宮川政昭常任理事の説明では、焦点だった有床診療所の扱いについて、全国有床診療所連絡協議会と協議し、アンケートを実施したところ「非課税のまま」を望む意見が多かったという。

 診療所・病院と分けること自体、政府・与党などに要望内容を理解してもらうことを考えると、ロビー活動のやりやすさにはつながるだろう。

 しかし、非課税と課税、いわば水と油のように違うものを、同じ保険診療の世界に持ち込もうとすることに対して、世論・国民にどう説明するのか。「医療界が“損しない”仕組みを都合よくつくろうとしている」と受け取られる可能性の方が高いだろう。

 日医は横倉義武会長時代、19年度の税制改正で「診療報酬への上乗せ対応の精緻化」や税制上の措置を組み合わせる手法により「問題は解決した」と宣言。当時の中川俊男副会長も「非課税制度にあって最大限の着地」などと説明していた。

 元日医幹部は、現在の日医の要望状況について「政府・与党へのパイプが細く、動きがうねりになっていない」とこぼす。

 かつては、日医内に検討の場を設けつつ、財務省まで巻き込んだ議論を行い、根本的な問題解決を探る動きがあったが、現在の日医の検討は、要望内容の「シンプルさ」にこだわり、実現性の部分では、手を打つのを後回しにしているかのようだ。

.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 両国国技館前_2022年10月1日

    かかりつけ医論争

  2. 隅田川大橋から_2022年10月22日

    拈華微笑

  3. オブリーンから約10年

    オブリーンから約10年

  4. 日銀通り_2021年3月26日

    コロナ専用病床へのバラマキ政策

  5. 釜萢氏は「特例」で公認

    釜萢氏は「特例」で公認

  6. 霞が関1丁目_2023年5月10日

    大幅引き上げ

  7. 厚労省近くのいつもの交差点_2021年8月6日

    費用対効果評価の見直し

  8. 霞が関1丁目_2021年3月23日

    医療福祉人材確保のタテマエとホンネ

議事録のページ総合
総会議事録のページ
材料専門部会議事録のページ
■ 議事録のページ【小委・分科会】

第592回中医協総会(2024年7月17日)【速記録】

第592回中医協総会(2024年7月17日)【速記録】

第225回中医協・薬価専門部会(2024年7月17日)【速記録】

第225回中医協・薬価専門部会(2024年7月17日)【速記録】

第223回中医協・基本問題小委員会(2024年7月3日)【速記録】

第223回中医協・基本問題小委員会(2024年7月3日)【速記録】
PAGE TOP