21年度に続いて、2度目の薬価・中間年改定が4月1日に実施される。厚生労働省は3月3日、23年度薬価基準改定を官報告示した。関連資料では、2つの“救済措置”の詳細が明らかになったとともに、1つの政策的限界を露呈した。【本根優】
対象範囲は平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目。製薬業界は強く反対していたが、結果的に21年度と同様の基準を当てはめることになった。
2つの救済措置は「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の臨時・特例的対応」「不採算品再算定の全品適用」になる。
新薬創出加算については、600品目あるうち、乖離率基準で233品目が改定対象になったが、143品目に特例が適用された。通常の算定方式で新薬創出加算を実施した後、改定前薬価と加算適用後価格の差分のうち、95%に相当する額を上乗せした。
急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、企業から不採算品と報告のあったすべての品目(1100品目、告示数は1081)に不採算品再算定を適用。解熱鎮痛消炎剤「アセトアミノフェン」のほか外皮用殺菌消毒薬「イソプロパノール」、漢方薬「葛根湯エキス」、輸液「生理食塩液」、主としてグラム陽性・陰性菌に作用する「セファゾリンナトリウム」などが引き上げを受けた。
その一方、厚労省が示した22年の薬価調査に基づく推計では、後発品への置き換えによる医療費適正化効果額が「減少していた」ことが判明した。
21年調査の効果額(年間推計)は1兆9242億円と示していたが、22年調査では1兆7081億円と10%以上も下がった。21年も22年も後発品の数量割合は79.0%で変化ないが、適正効果額が大幅に減少したことになる。改めて、政府の後発品使用促進が限界を迎えたことを示すデータと言えるだろう。
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