塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」の薬価がついに決定した。高額薬剤の特例として、1~2月にかけて中央社会保険医療協議会で何度も議論してきたテーマだ。ようやく薬価が付き、一般流通にメドが立った格好だが、さまざまな課題を残したままだ。【本根優】
まずは薬価。複数の比較薬を用いて類似薬効比較方式Iで算定。既存の新型コロナ薬と抗インフルエンザ薬の類似性を比べて「同等」と判断。MSDの「ラゲブリオ」と塩野義の「ゾフルーザ」を比較薬に設定し、一治療薬価の平均から、ゾコーバの価格を算出した。さらに、新規作用機序であることを考慮し、有用性加算Ⅱ(加算率5%)を認め、125㎎1錠を7407.40円、一治療薬価5万1851.80円とした。
メーカーの市場規模予測は、ピーク時の2年度目に192億円(予測投与患者数37万人)。市場拡大再算定については、ゾコーバに限ったルールとして「年間販売額が予測の10倍以上、3000億円超」となった場合に、現行の再算定ルールの上限▲50%でなく、▲66.7%を適用することとした。
支払側関係者は「高すぎる。再算定ルールも甘い」とこぼす。厚生労働省がもっともらしい理屈をつくりあげて、反論の余地をなくしたとの認識だ。さらに同じ関係者は「国の購入分を十分に吐き出すことなく、一般流通に移行しようというのが、解せない」とも打ち明ける。一般流通後は、国からの配分は企業との調整のうえで終了する予定となっている。
このほか、中医協で間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、動物実験で催奇形性が出ているゾコーバの安全対策や情報発信について、厚労省にあらためて徹底を求めた。
さらに、塩野義製薬がゾコーバの後遺症のリスク軽減を示唆するデータを表したことにも言及。「なぜ収載前のタイミングでこのようなニュースを流すのか。宣伝なのか。モラルを疑う。後遺症が軽減されるなら薬事承認で認めればよい話で、先走っている」と憤った。
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