2023年2月15日の中医協総会(ゾコーバの取りまとめ)

2023年2月15日の中医協総会

 ゾコーバ錠について患者代表は「被害が出ちゃったら本当に日本の恥だ」と警鐘を鳴らしました。厚労省の担当者は「医師が患者さんに説明する。チェックリストでチェックしている」と現場での対応に期待を込めました。【新井裕充】

 患者代表は「政府広報とかテレビ放送とか、そういうものを通じて注意喚起を十分にしていただきたい」と要望しましたが、厚労省の担当者は「安全性を評価する調査会の意見を聴きながら、そのリスクに応じた必要な対応を検討したい」と述べるにとどまりました。

 たくさん売れたら価格を下げるルールの適用について、コロナ治療薬「ゾコーバ錠」の検討が1月25日の中医協総会で始まりましたが、危険性を宣伝したら売れ行きが鈍るかもしれません。

 25日の総会後、薬価専門部会で4回審議して対応案を取りまとめ、2月15日の同部会、総会で了承されましたが、今回も患者代表が強い懸念を示しました。

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【議 題】

 1.医療機器の保険適用について
 2.費用対効果評価専門組織からの報告について
 3.先進医療会議からの報告について
 4.患者申出療養評価会議からの報告について
 5.診療報酬基本問題小委員会からの報告について
 6.歯科用貴金属価格の随時改定について
 7.薬価算定の基準の改正について
 8.高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応について
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 この日の総会は定例モノが中心で、審議事項は全て了承されましたが、議題1「医療機器の保険適用」で説明のあった保険償還価格の訂正と、議題6「歯科用貴金属価格の随時改定」の質疑で発言がありました。

 全ての審議を終えた後、敷地内薬局の誘致について森昌平委員(日本薬剤師会副会長)が「事務局におかれましては不適切な事案に対して厳正に対処することをお願いします」と要望しました。相変わらず “お上頼り” の薬剤師会です。

 それはさておき、ゾコーバ錠に関する議題8は、事前の開催案内には出ておらず、薬価専門部会の開催後に資料が公表されました。

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 1.薬価専門部会(9:30~9:59)
 2.基本問題小委員会(10:01~10:20)
 3.総会(10:23~11:17)
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 しかし、薬価専門部会で示された「薬-2-1」の資料(ゾコーバ錠の男性への影響に起因する催奇形性について)は総会には示されませんでした。

 当日、 YouTube で薬価専門部会を視聴していた人たちには周知の資料ですが、のちに厚労省のホームページで総会の資料だけを見た人にはわからないかもしれません。

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【薬-2-1】ゾコーバ錠の男性への影響に起因する催奇形性について_2023年2月15日の薬価専門部会
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 資料は「ゾコーバを服用した男性への避妊に関する注意喚起は必要ない」という内容です。ゾコーバ錠を服用した男性と性交渉をしても、その女性の催奇形性のリスクは低いということでしょうか。いつかこの資料が問題視される日が来るかもしれません。

 ゾコーバ錠には多くの併用禁忌薬があります。

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ゾコーバ錠のご使用にあたって_ページ_17
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 この資料は「ゾコーバ錠のご使用にあたって」からの抜粋ですが、医療従事者以外の人たちがこの資料にたどり着くのは容易ではないかもしれません。

 今回の総会では、残薬がある場合の危険性や対応をめぐり患者代表と厚労省担当者のやり取りがあり、間宮清委員は次のように要望しました。

 「緊急承認という非常に異例な対応をして世の中に出てきて使われるという医薬品なんですから、広報ですとか注意喚起に関しても異例の対応というのは必要なんじゃないかなと私は思います。医療機関頼みにするのではなくて、やはり国としてどういう広報を、注意喚起をしていくのかもしっかり示していただきたい」

 詳しくは以下のとおりです。

〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 それでは、ただいまの説明につきまして、ご質問等はございますでしょうか。はい、間宮委員、お願いいたします。
 
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
 はい、ありがとうございます。留意事項でですね、安全性に関する周知をするということが通知して、通知するということを明示するということなんですけども。
 
 これ、併用薬剤とか、妊娠の有無等の禁忌事項について確認を行うということで、これはしっかりやっていただきたいんですけれども。
 
 これ、催奇形性について男性患者の精子から催奇形性による影響がないということも、さっき薬価専門部会のほうで説明をしていたのを聞いてましたんで理解しましたけれども。
 
 これ、留意事項とか、そういうものによって医療機関で患者に説明する、同意する、同意を取るというようなことはありますけれども、これって、やっぱり、
 
 妊娠っていうのがあとでわかったっていうことはもう実際起きてしまっているので、やっぱり、その留意事項で医療機関だけの対応でこれ、いいのかなっていうふうに本当に思ってるんですね。
 
 やっぱり患者本人だけじゃなくて、やっぱり、その患者の、その家族ですとか、周りの人にもちゃんと知ってもらいたいということがあります。
 
 さらにですね、やっぱり多くの人が使うということを考えると、まだ患者になってない人たちも知っておく必要ってのは、やっぱりあると思うんですね。
 
 サリドマイドですとか、サリドマイドの類似薬のような安全管理システムっていうのは構築されていないんですよね、このゾコーバに関しては。
 
 そんな中で、多くの人が使う想定っていうことになるとですね、やっぱり事故とか、その被害がやっぱり起こることが心配されます。
 
 やっぱりこれ、こういう緊急承認っていうね、非常に異例な対応をして世の中に出てきて使われるという医薬品なんですから、これはやっぱり広報ですとか注意喚起に関しても異例の対応というのは必要なんじゃないかなというふうに私は思います。
 
 やっぱり医療機関頼みにするのではなくて、やはり国として、どういう広報を、注意喚起をしていくのかってこともしっかり示していただきたいなあというふうに思います。
 
 こういうことを言うと、「ホームページに書きますよ」とかね、そういうことを、そういう返事が来ると思うんですけども、

 そういうんじゃなくて、やっぱり広く使うかも知れない国民に対して、やはり政府広報とかね、テレビ放送とか、そういうものを通じて注意喚起を十分にしていただきたいというふうに思います。
 
 これ、被害が出ちゃったらですね、これ本当に日本の恥だというふうに思いますんで、これは十分に対応していただきたいと。
 
 それも、そういった案も、きちっと示していただきたいというふうに思います。
 
 1つ質問なんですけれども、残薬に関する対応ですね。
 
 (残薬に関する対応)は、どういうふうになってるのかっていうことを、要するにその、残薬がないっていうことを確認する方法を何か考えてるのかってことを質問したいと思います。以上です。
 
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 はい、ありがとうございました。間宮委員からご要望、それから、ご質問をいただいておりますが、事務局いかがでしょうか。お願いします。

〇厚労省医薬・生活衛生局・医薬品審査管理課・吉田易範課長
 はい。医薬品審査管理課長でございます。ご質問、ご指摘、どうもありがとうございます。
 
 まず、ご要望といいましょうか、本剤についての周知といいましょうか、広報といいましょうか、そういったものの徹底すべきではないかというご指摘でございます。
 
 繰り返しになりますが、本剤については、実際に前回もご説明しましたが、妊婦さんに投与した例が出たということもございます。
 
 現場では当然、担当医師から十分な説明をしてきたわけで、さらには同意取得もした上でも、そういうことが起こったということから、同意文書、それから説明文書に前回の月経後の性交渉があったかどうかという、そういったことも含めて現場での周知徹底を行っておりますし、
 
 厚労省としてもですね、そういったものを事務連絡を発出しまして、そのことの入念な確認の注意喚起をしているといったような状況でございます。
 
 間宮委員ご指摘のリスクの、ご指摘の点ですね。周知の仕方をどうするのかということでございますが、ゾコーバ錠も含めた安全性の評価、それから、その必要な措置につきましては、

 まずは薬食審の中の安全性を評価する調査会のほうでご審議をいただいておりますので、まずはそちらのほうでですね、審議会の意見を聴きながら、そのリスクに応じた必要な対応、そういったものを検討させていただきたいというふうに思っております。 

 引き続き、本剤の処方を行う医療現場で、そういったことが起こらないような徹底をする、周知を行っていきたいというふうに思ってます。
 
 お叱りをいただくかもしれませんが、一般向けの周知としまして、1つは間宮委員ご指摘の、ゾコーバ錠についてもですね、これまでもホームページなどを通じて一般の方への周知徹底を図っておりますが、

 それをさらにどういったかたちでできるのかということも、先ほどの審議会でのリスク評価の結果も踏まえてですね、どういったことができるのかについては、また継続して検討させていただければと思っておりますが。

 基本はリスクに応じた評価ということで、緊急承認であるということのご批判もございますが、安全性につきましては、緊急承認であっても従来と同様のですね、安全性を確認しているというかたちでの評価になっているということについては、ご理解いただいた上で、
 
 いずれにしましても、審議会の意見を踏まえて必要な対応を検討させていただければというふうに思っております。
 
 それから、ご質問がございました残薬の関係でございますが、これにつきましても医師のほうが患者さんのほうにですね、説明する、それから、そのチェックリストというのでチェックしておりまして、
 
 薬が残った場合でも絶対に他の人に譲らないようにしてくださいということをチェックし、それを一応、確認するというような対応で、その残薬はほかの人が飲むようなことがないようなことを徹底を図っていると、そういう状況でございます。以上でございます。
 
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 ありがとうございました。間宮委員、いかがでしょうか。お願いします。

〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
 はい、ありがとうございます。これ、残薬に関しては処方されるときに、たぶん説明されるわけですよね。
 
 もう、当然、飲み切るってことが前提だと思いますけれども、世の中一般的に考えると、残薬って結構あるんですよね。

 鎮痛薬とか解熱剤なんかもそうですけど、わりと使わないで残ってるっていう場合が多くて、それが家庭にあるとですね、やはりこう、使ってしまうっていうようなことがあると思いますんで。
 
 これ、できればあれですよね、飲み切ったあとでもう1回きちっと診察に来てですね、残薬がないってことを再度確認するっていうことも大事かと思いますけども、そういったことはいかがでしょうか。 
 
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 事務局、いかがでしょうか。

〇厚労省医薬・生活衛生局・医薬品審査管理課・吉田易範課長
 現時点におきましては、なかなかそこまでのですね、ところまでは要求していないという状況でございますけども。
 
 まあ、繰り返しますが、リスクに応じた、その対応ということが原点だろうと思っております。
 
 さらに申し上げれば、そういったようなことが起こらないような、その一般への、その周知といいましょうかね、そういったようなことも、どういったかたちでできるのか、というのを検討させていただければなというふうに思っております。以上でございます。

〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 間宮委員、よろしいでしょうか。
 
〇間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)
 はい、ありがとうございます。本当に何回も言いますけど、これ、本当に被害が出たらですね、本当に日本の恥です。
 
 これは本当に注意をしていただきたいというふうに思いますし、やっぱり国民一人ひとりがこれ、自覚する必要があると思うんですね。
 
 さっきも言いましたけどもね、まだ患者になってないうちから、もし罹患した場合にね、自分が強い症状が出たときにこれを使うのかどうなのかっていう選択も含めて、
 
 選択するための、その情報っていう意味も含めて、きちっと周知徹底をしていっていただきたいというふうに思います。以上です。よろしくお願いします。
 
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
 はい、よろしくお願いいたします。それでは安藤委員、お手が挙がっています。お願いします。 

〇安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)
 はい、ありがとうございます。私もただいまの間宮委員のご意見のとおりだと思ってまして、やはり国民への広報というのを幅広く実施をしていただけるよう、重ねてお願いしたいと思います。

 (以下略)

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