政府は2月10日、かかりつけ医機能が発揮される制度整備などを盛り込んだ「健康保険法等改正案」(全世代社会保障法案)を閣議決定した。条文をめぐり、厚生労働省、日本医師会、与党議員の思惑が入り乱れる展開となった。果たして、日医・松本吉郎会長にとって、得点となったのか、失点となったのか?【本根優】
厚労省は、かかりつけ医機能の要件に該当するか、都道府県が確認し、該当しなくなったときはその確認を「取り消す」ことを想定していたが、こうした事実上の認定制度に対して日医が反発を強め、事前調整の最終盤で態度を硬化させた。
永田町関係者によれば、都道府県医師会が地元議員に発破をかけ、それを受けた議員らが厚労省を突き上げたことが背景にある。最終的に、厚労省は都道府県に取り消す権限を与える文言を削除した。
そして与党の法案審査もちぐはぐな経緯をたどる。1月31日の厚生労働部会を先送りし、2月3日に部会を開いた。この頃までには、厚労省と日医の調整は終わり、法案の文言も落ち着いていたわけだが、都道府県による、かかりつけ医機能の「確認」が「行政行為に当たるか」をめぐり、紛糾した。確認が処分を伴う行政行為であれば「事実上の認定だ」と反発の声が出た。
こうしたことから、2月6日に再度部会を開き、厚労省が「『確認』は行政行為(行政庁の処分)ではない」と明記した文書を配ることで、ようやく了承を取り付けた。
日医の立場でみると、全国の医師会が与党議員に働き掛け、厚労省に文言を「変えさせた」ようにも映る。「松本・日医」が政治力を発揮したと受け取れないこともない。
ただ、与党関係者は「日医の担当役員から松本会長ら執行部への吸い上げ・説明が不十分だったのが、そもそもの原因。日医としては“不手際”にはできないので、鬼の首を取ったような話にしたいのだろう」と推察する。
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