岸田文雄首相が1月17日の自民党役員会で、23日から始まる通常国会に向けて、こんな話をした。「防衛力の抜本的強化や原子力を含むグリーントランスフォーメーションの実現、子ども政策など、山積する課題に対応するための予算案や法案が目白押しだ」。さらに「政府・与党でつくりあげてきた政策を野党とも正面から議論し、実行に移していく」。一方で、厚生労働省提出法案は計6本ある。【本根優】
なかでも、優先度が高いのが「全世代社会保障制度の構築に向けた健康保険法等改正案(全世代型社会保障法案)」だ。「かかりつけ医機能発揮の制度整備」「出産育児一時金の費用を後期高齢者も負担する仕組み」「医療費適正化計画の実行性確保」などを盛り込み、2040年を見据え、文字通り全世代型を目指す。
ただ、野党が追及に動くとみられるのは、もっぱら世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題、政府が検討する教団の解散命令請求の行方や不当寄付勧誘防止法(救済新法)の見直しだ。
加えて、昨年末に閣議決定された国家安全保障戦略など「安保3文書」と、防衛費増額の財源として岸田首相が打ち出した「増税」の是非が大きなタマとして、論戦の材料となり得る。
全世代型法案は、そうしたものに比べれば、目立たない存在で、争点化する可能性は低い。
野党の厚労関係ベテラン議員は「高齢者に負担を求める内容が含まれるため、対決法案にもなり得るが、現役世代の負担軽減自体はこちらも求めてきただけに、真っ向からの批判はしづらい」とこぼす。
厚労省は全世代型社会保障法案を予算関連法案に位置付け、2月上旬の提出を目指しているが、幹部の1人は「法案の内容そのものより、統一教会問題や防衛増税など、他の重要課題をめぐる論戦の影響を受けるかもしれない」と、序盤から荒れた国会にならないかに気を揉む。
.