製薬業界が自民・公明の与党へのロビー活動で、薬価水準の維持を強く主張している。日本製薬工業協会と日本製薬団体連合会は11月25日、自民党の「予算・税制等に関する政策懇談会」に出席し、22年度薬価改定に向けて、新型コロナウイルス感染症による流通等の影響を考慮し「『調整幅+一定幅』の措置が必要」と訴えた。調整幅と一定幅、どちらも要求したのは、今回が初めてだ。【本根優】
調整幅をめぐっては、製薬業界などが現行の2.0%維持を訴える一方、財務省が財政制度等審議会財政制度分科会で「廃止に向けたロードマップを示し、段階的縮小を実現すべき」と提言している。
政府は21年度に薬価・中間年改定を実施する際、「新型コロナウイルス感染症による影響」とみなし、薬価削減幅を0.8%分緩和するコロナ特例として、調整幅に上乗せする「一定幅」を導入。18年9月の薬価調査で平均乖離率が7.2%だったことに着目し、20年9月の平均乖離率8.0%との差である0.8ポイント分を上乗せした経緯がある。
11月5日の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会では診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)が、新型コロナへの対応、流通経費や在庫管理コストの増加などから「調整幅を引き下げたり、変動させたりするのは難しい」と主張。有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)も「変更すべきでない」と同調した。
他方で、安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「とくに物流コストといった薬剤流通に関するデータの提供が可能かを含めて検討を」と厚生労働省に求めた。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)はバラツキについて「剤形・投与経路、新薬・後発品、薬価の水準ごとの分布はないのか。単純に平均(2.0%)という形より、もう少しデータを示してもらえれば具体的に検討しやすいし、調整幅そのものの必要性の理解も深まる」と指摘した。
中医協での議論は平行線をたどっている。社会保障財源が深く絡む話だけに、最終的には12月中旬予定の、鈴木俊一財務相と後藤茂之厚労相の「大臣折衝までもつれる」(与党厚労関係議員)見通しだ。