「医者までは入らないだろう?」
「やっぱり、そうですよね……」
これは、自民党内で聞こえてきた議員同士の会話だ。岸田文雄首相が分配戦略のなかで打ち出す「公的価格評価検討委員会」の設置に関して、賃上げが必要な職種に「医師」が含まれるかどうか、自民党議員すらわかっていないことになる。【本根優】
岸田氏は10月8日の所信表明演説で、分配戦略の3つ目の柱として「看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やす。新型コロナ(ウイルス)、少子高齢化への対応の最前線にいる皆さんの収入を増やしていく。そのために、公的価格評価検討委員会を設置し、公的価格の在り方を抜本的に見直す」との考えを示した。
9月26日、自民党総裁選の期間に都内の特別養護老人ホームを視察した際は、介護福祉士との意見交換を踏まえて「仕事の中身に比べて報酬が十分なのか」と問題意識を示し、公的価格の引き上げが「民間の給与や所得を上げるための呼び水にもなる」と語った。
岸田氏から指示を受けた後藤茂之厚生労働相は10月4日の就任会見で「従来の仕組みや報酬体系もあり、さまざまな検討課題があると思うが、厚労省としてどういった制度で公定価格を見直していくのか丁寧に検討していきたい」と述べた。
つまり、厚労省マターというのが後藤厚労相の理解。ところが、10月14日、岸田氏は記者会見で「私が議論をリードし、年末までに具体的な結論を出してまいります」と表明した。
となると、官邸主導で、内閣官房や内閣府に公的価格評価検討委員会ができるのか。そこでの議論が22年度診療報酬改定にどう影響するのか。そもそも報酬が不十分な職種に医師は含まれるのか、賃上げのために国民に負担増をお願いするのか……さまざまな疑問を孕んで、明確に答えが出ないまま、10月14日の衆院解散で事実上の選挙戦に突入した。
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