22年度診療報酬改定での費用対効果評価制度の見直しは、早くも「小幅決着」が関係者の間で囁かれている。制度運用を円滑に行いたい厚生労働省の事情もあるが、菅義偉政権が官邸主導で改革を仕切るような案件になっていないことも、大きな理由のひとつだ。【本根優】
内閣府で経済財政諮問会議の運営に関わる担当者が語る。
「財務省は価格調整だけでなく、保険償還の可否にも費用対効果評価を用いることを主張しているが、22年度改定では、そこまでの議論にはならないだろう」
21年度の薬価・中間年改定(毎年改定)は、菅政権としての成果をアピールする恰好の材料として、官邸の意向が強く働いた。その結果、医薬品業界の想定をはるかに凌ぐ規模で実施された。
しかし、費用対効果評価制度の見直しについて、菅政権がテコ入れに執心する様子は見られない。新型コロナウイルス感染症への対応で後手を踏むことが目立ち、政権の存続自体が危ういという事情もある。
8月4日の中医協・費用対効果評価専門部会の業界ヒアリングでは、製薬団体が制度の大幅見直しは「時期尚早」と主張。これに、診療側も支払側も同調する姿勢を見せた。中医協の議論では、評価事例を集積しながら改善を図る方向で合意していることから、22年度改定では、制度自体は微修正にとどまり、細かな「運用改善」中心の見直しが行われる見込みだ。
日本医師会は「日本型としてブラッシュアップさせるべき」との主張を繰り返すが、その背景について医系議員のひとりが解説する。
「医者連中が一番困るのは、費用対効果評価の制度が、診療報酬の技術料にまで拡大されること。日医の中医協委員は、そちらに議論が行かないように気を配っている」
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