全世代型社会保障改革が叫ばれ、ひと段落したこともあってか、政策立案上のホットイシューが「こども」に移っている。自民党の「『こども・若者』輝く未来創造本部」は6月3日、緊急決議案を大筋でまとめた。菅義偉政権が設立を決めたデジタル庁に続き、新たに「こども庁を創設すべき」と求めている。【本根優】
それに先駆けて5月31日、公明党幹部は官邸を訪れ「骨太の方針2021」に向け、党提言を菅首相に手渡した。ここでも目玉はこども関連。「年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排し、子どもと家庭を総合的に支えていくための司令塔機能」を担う「子ども家庭庁(仮称)」を首相直属の機関として設置するよう求めた。
また、子どもの権利を保障するための「子ども基本法(仮称)を制定するとともに、子ども政策に関し、独立した立場で調査、意見、監視、勧告などを行う機関「子どもコミッショナー(仮称)」を設けることを求めた。
野党も負けてはいない。立憲民主党は5月31日、社会全体で子どもの成長を支援するための「子ども総合基本法案」を衆院に提出した。児童手当を高校生まで拡大することや、「子ども省」を設置することが柱だ。
こうした与野党の活発な動きは、当然ながら、10月までに行われる衆院選を強く意識したものだ。時代のキーワードとなる冠のついた庁や省の新設は、国民・有権者への恰好のアピール材料になる。
一方で、厚生労働省には冷ややかな見方もある。「ウチが出遅れる中、すでに文部科学省と内閣府が“縄張り争い”を激しくやっている」(厚労省幹部)。
さらに、肝心な問題は放置したままだ。自民党は幼稚園、保育園、認定こども園の所管を新庁に統合するような「幼保一元化」には踏み込まず、ひとまずは「器づくり」の議論にとどめる構え。聞こえの良い部分だけが、選挙用に前進しそうな気配だ。