2021年の薬価改定に向け、厚生労働省は5月27日の中医協・薬価専門部会に「令和2年度薬価調査の実施に関する論点」を示し、「調査スケジュールについては、通常の改定と同様のスケジュールを踏襲することとしてはどうか」などと提案したが、専門委員を務める業界代表から「本年の薬価調査の実施は極めて難しい状況」との声が上がった。(新井裕充)
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業界代表の発言は以下のとおり。
〇中村洋部会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)
(前略) では村井専門委員、お願いします。
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〇村井泰介専門委員(バイタルケーエスケー・ホールディングス代表取締役社長)
発言させていただきます。
新型コロナウイルス感染症の発生以来、われわれ医薬品卸は、医療機関、保険薬局への配送業務に特化した活動にシフトしております。
具体的には、輪番制など、スタッフの勤務体制の変更、配送回数の変更、営業活動の自粛などです。
それに加え、現在、800アイテムを超える医薬品が品薄の状況にあり、製薬メーカーから何らかの出荷規制がかかっております。
毎日、その商品手配、在庫配分の調整等に多くの労力を費やしている状況です。
このような状況では、薬価調査はご勘弁願いたいというのが本当、本音ではありますが、
仮に新型コロナ感染が収束し、現在の品薄状態が解消されたとしても、通常改定と同様に9月に薬価調査を行うとすると、現在、ほとんど価格交渉が行われておらず、見積書も多くの場合、提出できてない状況ですので、極めてタイトな時間枠での交渉となることも予想されます。
購入側におかれましても、外来の大幅な減少、入院による手術の延期など、通常とは全く異なった状況になっており、果たして適切な価格交渉が行うことができるのか、憂慮しておるところでございます。
また、購入側も卸側も、このような状況下で、未妥結減算という事態だけは、できるだけ避けたいと考えておりますので、
短期間の交渉の中で、未妥結減算をクリアするために、結果として、単品総価や部分妥結が大幅に増えることになるのではないかと危惧しております。
そもそも、中間年の薬価調査については、平成29年12月20日の薬価制度改革の、抜本改革についての骨子において、単品単価契約、早期妥結、売差マイナスの解消などを積極的に推進し、調査が適切に実施される環境整備が図られていることを前提としたものだと認識しております。
しかしながら、今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、価格交渉の状況が通常とは大きく異なっていることから、薬価調査のための環境整備どころではありません。
われわれ医薬品卸といたしましては、本年の薬価調査の実施は極めて難しい状況だと考えておりますので、何とぞ、ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。以上です。
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〇中村洋部会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)
では次、幸野委員、お願いします。
(中略)
ほかは、いかがでしょうか。
では、これは上出委員ですね。上出委員、お願いします。
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〇上出厚志専門委員(アステラス製薬常務担当役員渉外部長)
はい。ありがとうございます。
今後、業界のヒアリングが設定されるということでございますけれども、本日、私の把握できている範囲で、製薬業界の、この新型コロナウイルス感染症への対応といったことにつきまして、少しコメントをさせていただきたいと思います。
製薬企業各社は、他の企業との連携もしくは関係機関との連携ということを図りつつ、目下、新型コロナウイルス感染症に対しますワクチンや治療薬の開発に、鋭意、取り組んでいるところでございます。
また、先ほど有澤委員からもコメントございましたけれども、医薬品の原薬調達や製造等のサプライチェーンの状況を注視し、安定供給に取り組んでいるところでございます。
生産工場におきましては、マスクですとかアルコール消毒等の衛生環境の整備、検温、従業員同士の適切な距離間隔確保の徹底など感染拡大防止に努めながら操業を継続しております。
また、業界団体といたしましても、医薬品の安定供給に支障を来す事態を早期に把握し、会員企業が相互に協力できるスキームを策定し、代替薬リストを作るなどの取組をしているところでございます。
特に原薬に関しましては、海外から調達するケースも多く、各国の、いわゆるロックダウン等の対応に伴いまして、現地工場の閉鎖ですとか、輸送ルートの寸断、また、日本に輸出するための航空便の運航停止など、さまざまな事象が発生しており、
これらに対し、例えばチャーター便を確保するなど、各社が、もしくは業界としてですね、原薬の確保、安定供給に努めているところでございます。
また、このような状況から、原薬の調達コストも上昇するというリスクも生じております。
このように、新型コロナウイルス感染症の影響によって、原薬調達から製造、供給に至る医薬品のサプライチェーンが平時とは大きく異なる厳しい状況の中、医薬品の安定供給等への対応を今後も継続して図っていく必要がございます。
今、医療現場におかれましては、大変厳しい状況の中、医療の提供に努めていただいているところ
というふうに理解をしておりますし、
先ほど、村井専門委員からご説明がありましたように、流通も非常に厳しい環境の中、安定供給を確保いただいているというふうに理解をしております。
これらの状況を踏まえますと、先ほど吉森委員からは、業界に前向きな提案をというふうなご意見ございましたが、今回の薬価調査、薬価改定につきましては、実施するような状況ではないのではないかというふうに考える次第でございます。以上でございます。
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〇中村洋部会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)
では、今村委員、お願いします。
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〇今村聡委員(日本医師会副会長)
はい、ありがとうございます。
1号(支払)側からもですね、政府の方針として、骨太の中で、実施が前提になっているので、粛々と、どういうやり方で、この状況の中で実施できるかということを検討していくべきだというお話を頂きました。
2号(診療)側、あるいは専門委員からもございましたように、非常に、この特別な、今、状況にある中で、政府の方針そのものが、いわゆる7月に、また骨太がずれ込むということになっているということですけど、
先ほど松本委員からもお話あったように、われわれ中医協の委員というのは、専門家として、ここに参加していて、きちんとした、そういう方針を決めるということですので、
ある意味、「ニワトリが先か卵が先か」ですけれども、しっかりとした、中医協としてですね、意見を取りまとめて政府の方針に反映させるような必要があるんじゃないかなあというふうに思っています。
それを前提とするとですね、やはり、現場の意見をしっかりと、今日も、いろいろご意見ありましたけれども、 改めてですね、それを伺った上で、この実施をどうするかっていうことを、やはり検討すべきじゃないかなあというふうに思っています。
厚労省にはですね、これ、ずるずるとですね、時間をやっていると、結局、何も決まらないまま、ただ実施という方向性で、骨太の中に書かれるというようなことになるとですね、本当に、これは現場が大きな混乱を生じるというふうに危惧をしています。
エビデンスは非常に重要なので、中医協というのは専門家ですからエビデンスに基づいた議論をするっていうのは、これは当たり前のことだと思いますけれども、
こういう緊急事態のときのですね、状態っていうのは、例えば抽出率を幾らにしたら回答率がどうなるかっていうことも分からないし、
いわゆる価格も、まだ未決定の中でですね、いろんなデータを集めても、結局、そのことがですね、医療現場にもですね、これは在庫なら在庫を持っていてですね、
患者さんなどは、今、本当に長期に薬を出してくださいって言いますから、われわれ医療機関も、非常に大量の在庫を用意しようということになってるわけですけれども、そういったところのですね、経済的な影響というのが、ものすごく出てくるわけですね。
ですから、そういうことも考えた上でですね、やはり、しっかりと議論していく必要があると思っておりますので、
厚労省にはですね、早めにヒアリングの場をですね、設定していただくように改めてお願い申し上げたいと思います。
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〇中村洋部会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)
ほかは、いかがでしょうか。
はい。では、ありがとうございました。
では、ほかにご意見等ないようでしたら、本件につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。
本日、予定された議題は以上になります。
次回の薬価専門部会においては、関係業界からの意見聴取を行うこととしたいと思います。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。
(約3分後に総会へ)
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