塩野義の「ゾコーバ錠」について2回目の審議です。「対応の方向性」が出ました。詳細は非公開審議の薬価算定組織で決めてしまい、「柔軟な運用を可能とする」という内容です。【新井裕充】
今回の中医協は薬価専門部会のみの開催です。ゾコーバ錠の薬価収載に向け、先週水曜日(1月25日)に審議が始まり、今回が2回目。議題は前回と同じ「高額医薬品(感染症治療薬)に対する対応」です。
審議に使用した資料は全24ページ。そのうち11ページまでが今回の資料「薬-1」で、12ページ以降の「参考資料」は前回の部会に出した資料です。
「薬-1」(P1~11)の主な構成は次のとおり。
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1.総 論
2.薬価収載時の対応
3.薬価収載後の価格調整
4.その他
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厚労省担当者の説明はこちらをご覧ください。
https://bit.ly/3l35iOA
総論では「本剤に限った特例的な取扱い」と宣言した上で、①収載時、②収載後、③その他──の3項目について「対応の方向性」を示し、委員の意見を聴きました。
最後に、次回会合で業界ヒアリングを実施することを中村洋部会長が伝え、1時間足らずで閉会となりました。
ところで、この薬価専門部会には製薬業界の代表が2人、「専門委員」として参加していますが、ゾコーバ錠の議論が始まった前回から石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)が参加していません。
今回も会議の冒頭でアナウンスがありました。
「当該医薬品の製造販売業者に所属しておられます石牟禮専門委員につきましては、利益相反の観点から本日の部会には出席を控えていただくこととしております」
製薬業界の代表が1人不在となり、残る1人は赤名正臣専門委員(エーザイ株式会社常務執行役)のみですが、今回も赤名専門委員は発言しませんでした。
そこで、と言うべきでしょうか。いつもあまり発言することのない支払側の眞田享委員(経団連)が次のように代弁(?)しました。
「私からは薬価収載時の算定方法に関し、コメントさせていただきたいと思います。6ページに、類似薬効比較方式により対応するが、複数の比較薬に基づき薬価を算定するなどの柔軟な対応を可能とするというふうにありますが、本剤の特殊性に鑑みれば、こうした方向性で対応することに大きな異論はございません。
ただし、中医協として単にその柔軟な運用を薬価算定組織に委ねるということではなくて、合理性、客観性のある薬価を算定いただくことを改めてではありますけれども、求めたいというふうに思います。今後、議論を進める際には、こうした問題意識を資料上も明記いただければというふうに思います」
今回、ゾコーバ錠の対応案について細かい話がいろいろ出てきましたが、核心部分は薬価算定組織で決めてしまう内容になっています。どうでもいい情報は総会や薬価専門部会にバンバン出すけれど、大事な部分は隠れて見えないのでしょうか。
薬価算定組織は非公開審議です。いろいろな批判を浴びて議事録を公開するようになりましたが、発言内容などの一部が □□□□□□□□□□ となっており、マスキングされています。
この日の部会で厚労省の担当者が次のように説明しました。
「具体的な比較薬の選定や、それに応じた薬価の算定方法については、まずは薬価算定組織で審議することを考えております。なお、通常どおり有用性等の加算の必要性についても検討することになりますが、そちらも薬価算定組織で審議することを想定しております」
重症化抑制効果がなく5症状が1日早く治まる程度で、催奇形性のリスクもあるゾコーバ錠。感染が急拡大したとして、果たして現場がゾコーバ錠を選択するのでしょうか。
会議終了後のブリーフィングで、ベテランの業界記者から、こんな質問が出ました。
「他の経口コロナ薬との比較ですが、作用機序は同じにもかかわらず、全く薬価が異なることになる。もし、他の経口コロナ薬が適応拡大して、より早期の患者に使用されるようになったとしたら、どうするのでしょうか」
厚労省の担当者は次のように答えました。
「その時点で判断しているものですから、その時々で考えるものかと認識をしております」
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