先週金曜日に続き、今回も薬価専門部会のみの開催です。業界ヒアリングと質疑が約80分。その後、10分ほど「議論のための関係資料」の説明と質疑がありました。【新井裕充】
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・業界ヒアリングと質疑 10:02 ~ 11:18
・関係資料の説明と質疑 11:19 ~ 11:28
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ヒアリングは10月26日に続いて2回目です。前回2日の会合で薬価調査の結果(平均乖離率7%など)が示され、これを踏まえた意見聴取のようです。
ヒアリング実施の公式アナウンスはありませんでしたが、前回会合で支払側の安藤伸樹委員(協会けんぽ)が次のように述べています。
「次回以降、薬価調査の結果を踏まえた業界団体ヒアリングがあると思うので、今回の調査結果等を踏まえても、なお特別に配慮する必要があるのか。定性的な説明ではなく、具体的なエビデンスに基づき、ご説明をいただき、納得のいく説明がなされない場合には令和3年度薬価改定の前例を踏まえつつ、定時のルールに基づき改定すべき」
こうして迎えた今回のヒアリングですが、業界からの主張を要約すると「厳しい状況なので勘弁してくれ」という内容で、前回のヒアリングと大きな違いはなかったように思います。
業界の意見陳述は、「とりあえず全部いっとけ」というノリでしょうか、現在の要望を全て吐き出したような内容になっています。
コロナ、ウクライナ、物価高など厳しい環境を説明する要因はいろいろあります。この問題の最終的な意思決定は中医協ではないでしょうし、何をどこまで議論するのかやや見えにくい状況です。
そんな中で、ドサクサ紛れのような要望もありました。「特許期間中の新薬の薬価は維持されるべき」との主張です。
これに食いついたのが診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)で、「2年前の中間年改定では新薬創出等加算品目については考慮されたが、それに加えて特許期間中の新薬全てを改定対象から外すとの主張はどのような根拠に基づくものか」と質問しました。
これに専門委員や業界代表らが答えました。赤名正臣専門委員(エーザイ株式会社常務執行役)は「特許期間中の新薬の薬価が維持されることがグローバルスタンダード」とし、「こうしたスタンダードから外れることによって日本の市場の魅力度が低下する」と説明しました。
業界代表としてヒアリングに参加した米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジェームス・フェリシアーノ氏は、新薬創出等加算の適用範囲が縮小されたことなどを指摘した上で、「日本におけるイノベーションの定義が変わってしまった」と苦言。中間年改定の議論なのか、ちょっと幅広な議論になってきました。
こうした意見を逆手にとり、支払側の松本真人委員(健保連)は「皆さん方は(通常改定とは異なる)『中間年』という言葉を使っているが、イノベーションの評価というものに今回、新たに踏み込むということは、実質的には通常改定と同じルールになっていく」と返しました。
そこで、中村洋部会長(慶應義塾大大学院教授)が「専門委員から何か追加のコメント等は」と発言を促しましたが、専門委員は「ございません」と回答し、ヒアリングの質疑は終了となりました。
続いて「議論のための関係資料」の説明に入りましたが、業界代表らを退出させてしまいました。ヒアリングでの議論と関連する資料が出たのですから、ここで盛り上がってほしかったという印象です。
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この資料(薬-2)の7ページでは、実勢価改定と連動するルール・しないルールについて整理されています。
厚労省の安川孝志薬剤管理官は次のように説明しました。
「既収載品目の算定ルールに関して以前も実勢価と連動するルール、そうではないルールということで示させていただいたが、それぞれのルールに関してプラスに働くかマイナスに働くかの影響とか、どういった要素でそれぞれの項目を判断しているか、あるいは新薬や後発品など影響を受けるカテゴリー、薬価算定組織での検討が必要なものの区別などを表にした」
その上で、このように述べました。
「今回はこういったかたちで資料のアップデートを中心にご紹介をさせていただいたが、次回以降も引き続き、平均乖離率、そういった結果に基づいて、中間年改定の議論を行う際のデータ等をまた示させていただきたい」
小出しにするのは議事運営上、やむを得ないかもしれませんが、今回はせっかく業界代表を呼んだのですから、ヒアリングに続けて議論してほしかったです。