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後発バイオ医薬品、「悩ましい」── 第158回薬価専門部会(2019年10月23日)【議事録】

専門委員_20191023薬価専門部会

 薬の値段をどのように付けるのか。効果があれば高いというわけでもないらしい。難しい計算式で正確にはじき出されるのではなく、「適切な競争環境を維持する」なんていう文系的な要素も入ってきて、さらに分かりにくい。10月23日の中医協・薬価専門部会では、後発バイオ医薬品などの価格について保険者の代表が「ちょっと悩ましい。頭の中で整理できているわけではない」とつぶやき、日本医師会の委員は「(後発品より)高い薬価にしてもいろいろ問題が起きるし、低くしても問題が起きるので、とりあえず現状では同じにするのは苦渋の決断」と語った。(新井裕充)

 この日、東京はすがすがしい秋晴れを迎えた。日本気象協会によると、都心で朝の天気が「快晴」となったのは10月13日以来10日ぶりのことで、「貴重な秋晴れ」と伝えた。厚生労働省の近くにある日比谷公園や皇居の周りには多くの外国人観光客が訪れ、マラソンを楽しむ姿も見られた。
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皇居前_20191023
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 一方、薄暗い厚労省2階の講堂にも早朝から多くの傍聴者が集まった。この日の中医協は、薬価専門部会、保険医療材料専門部会、総会の3会合が午前9時半から12時半近くまで約3時間にわたって開かれた。窓のカーテンをめくると、外にはまぶしい日差し。それとは対照的に、曇り模様の議論となった。
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20191023薬価専門部会
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■ バイオAGやバイオシミラー、「ちょっと悩ましい」

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 薬価専門部会は9時29分から10時43分までの約1時間。次期薬価制度改革に向けた具体的な検討項目としてテーマに挙げられたのは「原価計算方式」「類似薬効比較方式」「イノベーションの評価」「後発バイオ医薬品の取扱い」の4項目で、それぞれの論点について委員が意見を述べた。

 このうち、「後発バイオ医薬品の取扱い」について診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は次のように述べた。
 「先発品メーカーがバイオシミラーの開発、発売を牽制するためにバイオAGの販売をほのめかすというような対応をすることはルール違反とは言えないかもしれませんが、適切な競争環境を維持するという観点からはかなり問題があるというふうに思います。その上で、実際にバイオAGが収載される時の薬価の取り扱いとしては、現在の取り扱いをするのが適当と思います。また今後の事例を踏まえて、適時、修正していくべきだというふうに考えます。(論点の)2つ目ですが、バイオAGが薬価収載された場合は先発企業としても先発品のシェアを減少させ、後発品に置き換わることを許容しているので、後発品の扱いと同様、先発バイオ医薬品をG1、G2の対象とした上で、その薬価を段階的に引き下げていって差し支えないと考えます。以上です。」

 続いて、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は次のように述べた。
 「バイオAGとかバイオシミラーをどうするかっていうのは、一番重要な点は、やはりバイオシミラーの開発意欲を促すような価格設定ということと、適切な競争の環境をつくるということが一番重要だというふうに思います。そういった観点で薬価を設定していくということが必要で、まあ、ちょっと悩ましいんですが、ちょっと頭の中で整理できてるわけじゃないんですけど、例えば、研究開発で製造コストが後発医薬品よりも高いことから、先発医薬品の薬価の7割としている価格の観点や、治験を行っているバイオシミラーの開発意欲や適切な競争環境を維持する観点からすると、治験を行ってない後発バイオ医薬品、バイオAGの薬価についてはバイオシミラーと同一の0.7でなくて、まあ、もう少し高い薬価をするっていうことも1つの検討の選択肢ではないかというふうに思います。
 それから、バイオAGが薬事申請された場合は先発品をどうするかっていうとこなんですけど、関連する先発品については、できればその時点でバイオAGと同一の薬価に設定すべきというふうに思うんですが、販売競争力っていうものを考慮すれば、やはりこれは一定の価格差を付けることはやむを得ないというふうに思います。
 しかしながら段階的に薬価を近づけていくと、先発品にですね、後発品を近づけていくっていうことは必要であるので、今、G1、G2の対象外になってるんですけれど、このG1、G2を適用していくということも検討していくことが必要なんじゃないかと思います。
 それから、後発品への置換えの度合い、置換え率を見ながら、この10年間ですね、を待つことなく、この薬価差を縮めていくようなことも、この置換え率によって検討していくべきじゃないかというふうに思います。
 それから問題なのは……、まあ、問題と言いますか、100%子会社に権利を譲渡してバイオAGを作る場合をどうするかっていうとこなんですけど、これはやはりもう、権利をこう、移譲したわけですから、できればその時点で薬価を同一にするということが望ましいとは思うんですが、そうしましたら、競争の原理、バイオAGが独占してしまうことになるので、供給等の状況を見ながら、いずれかは撤退するということを条件に承認すべきじゃないかというふうに思います。
 それから、バイオAGの価格帯をどうするかっていうところについては、化学合成品のAGと同様に、遅れて収載された後発品の実勢価格に合わせていくということ、これはまあ、平仄を合わせて考えていくべきだというふうに思います。以上です。」

 この発言に対し、松本委員が次のように述べて閉会となった。
 「繰り返しになりますけれども、バイオシミラーのですね、開発・販売を、発売をですね、推進していくためにもですね、バイオ成分の取り扱い、非常に難しい面があるかというふうに思いますけど、これをバイオシミラーよりも高い薬価にしてもいろいろやっぱり問題が起きますし、低くしても問題が起きるっていうことで、とりあえず現状では同じにするっていうのは苦渋の決断かなというふうに思います。以上です。」

 ※ この議論に関する厚労省担当者の説明は議事録のP10~13、質疑はP28~29を参照。

議事録ダウンロードページへ .

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