「次期改定は2022年を見据えた改定」に異議あり ── 9月27日の社保審・医療保険部会

武久洋三参考人(日本慢性期医療協会会長)[20190927医療保険部会]

 来年4月に実施される2020年度診療報酬改定に向けた議論が本格化するなか、医療費を負担する保険者の立場から「次期改定は団塊の世代が後期高齢者に入る2022年を見据えた改定になるので極めて重要な改定だ」との声が出ている。医療関係者は「高齢者がどんどん増えていることが医療費の拡大にそれほど影響していない」と異議を唱えた。【新井裕充】
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 厚生労働省は9月27日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会を都内のホテルで開催し、診療報酬改定の「基本方針」の議論をスタートさせた。この日の会合に示した資料は、19日の社保審・医療部会に出したものと同じ内容。基本方針を策定する医療部会・医療保険部会の両方で審議が開始されたことになる。

 ▼ 基本方針の審議を医療部会と医療保険部会のどちらで最初に開始すべきかが問題になったことがある。今回、厚労省は前回改定と同様に「医療部会」からスタートさせた。しかし、2016年度改定までは支払側委員が多く参加する「医療保険部会」から先に審議していた。これに医療関係者から強い批判が出されたたため、18年度改定では医療関係者が多く参加する「医療部会」から先に審議し、これに続いて「医療保険部会」で審議するという流れになった。2015年9月16日の医療部会で邉見公雄氏が「会議の順番が逆ではないか」などと追及した。その議事録はこちら(PDF)6~7ページを参照。

 今回、医療部会と医療保険部会で厚労省が示したのは、次期改定までのスケジュールや改定の視点などで、全体の構成はこれまでとほぼ同様。しかし、「改定に当たっての基本認識」のトップには、政府方針などを踏まえ「健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた『全世代型社会保障』の実現」が大きく掲げられた。

 厚労省の担当者は「皆さんと一緒に議論していく中での『たたき台』として用意した」と控えめに説明した上で、「こういう柱でいいのか、また別の柱があるのではないか、そういうことをこれから議論をしていただければと思っている」と意見を求めた。
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厚労省保険局医療課[20190927医療保険部会]

 質疑では、「効率化・適正化」を重視する意見が多く出された。医療保険部会は保険者や経済界の代表者らが中心メンバーであるため、このような意見が続出するのが慣例となっている。

 この日の会合で保険者の代表は「次期改定は団塊の世代が後期高齢者に入る2022年を見据えた改定になるので極めて重要な改定」と強調した上で、「制度の持続確保のための『効率化・適正化』という視点は喫緊の課題だと思うので、大きな項目として取り上げていただきたい」と求めた。欠席した経団連の委員からも同様の意見書が提出されている。

 これに対し、高齢者医療に取り組む医師は「だいぶ前には100兆円を超えるのではないかと言われていた時もあるが、外来診療も入院費用も減っている。平均在院日数も下がっている」と指摘。「高齢者がどんどん増えていることが医療費の拡大にそれほど影響していない」とくぎを刺した。

 同部会における厚労省担当者の説明と、これに続く質疑の模様は以下のとおり。

 ▼ 説明と質疑は長文なので、上記以外で注目した発言を記す。まず、「遠隔診療」との記載を「オンライン診療」に修正すべきと主張した安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)の発言と、これに対する松原謙二委員(日本医師会副会長)の反論が見所。また、日本看護協会副会長の秋山智弥氏が「救急医療の充実」に言及したことにも注目したい。「ナース・プラクティショナー制度」の構築に向けた本気度を感じる。

説明──1.令和2年度診療報酬改定のスケジュール案

遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)[20190927医療保険部会]

〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、それでは、はじめに「診療報酬改定の基本方針について(基本認識)」を議題といたします。事務局から資料の説明をお願いします。
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〇厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長
 はい、医療介護連携政策課長でございます。お手元の資料「1ー1」(令和2年度診療報酬改定のスケジュール案)、資料「1ー2」(令和2年度診療報酬改定の基本方針の検討について)の説明をさせていただきたいと思います。最初に資料「1ー1」、令和2年度診療報酬改定のスケジュール案でございます。
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 診療報酬でございますけれども、中央社会保険医療協議会で議論をしているところでございますが、この資料をご覧いただきたいんですけれども、社会保障審議会、この医療保険部会そして同じく社会保障審議会・医療部会のほうで、「診療報酬改定の基本方針」の議論をしていただいております。
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 社会保障審議会としまして、医療政策についてどういうふうな基本的な考え方に基づいていくのかということを議論していただいて、年末12月ごろまでに策定をしていただく。

 同時に、内閣のほうでは財政全体の状況について、予算編成過程において診療報酬全体の「改定率」というものを決定をします。

 併せて、この基本方針、社会保障審議会で議論していただきまして策定していただきました「基本方針」と、この年末の予算編成過程で決まる診療報酬の「改定率」を前提としまして、1月に厚生労働大臣のほうから中央社会保険医療協議会に対して、これらの「改定率」「基本方針」に沿って調査・審議を行うよう諮問をなさいます。

 その諮問を受けて2月上旬ごろ、厚生労働大臣に対して「改定案」が答申され、その答申案に沿って告示・通知を出す。厚生労働大臣として出していき、来年の4月1日に令和2年度の新しい診療報酬改定で臨むというスケジュールになっております。

 この関係で今回、医療保険部会の皆さま方と一緒になって、「診療報酬改定の基本方針」をこれから策定していくということでございます。
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20190927医療保険部会1

説明──2.令和2年度診療報酬改定の基本方針の検討について

 次に、資料「1-2」をご覧いただきたいと思います。「令和2年度の診療報酬改定の基本方針の検討」でございます。

 基本方針におきましては、これまでも「改定に係る基本的考え方・基本認識」に続きまして、「重点課題」「改定の視点」などを定めた上で、「具体的な検討の方向」ということで、示させていただいております。

 基本方針における「改定の視点」ですけれども、社会保障・税一体改革を経て、これまでの改定でも基本的に継承されてきているところもある一方で、また各改定時における医療を取り巻く状況を踏まえた重点課題を追加してきたというところでございます。

 今回につきましては、4つ目の丸なんですが、「医師等の働き方改革の推進」「患者・国民に身近でわかりやすい医療の実現」、また「医療におけるICTの利活用」なども重要なテーマになってきているということでございます。

 そういったことを踏まえまして次のスライドでございますけれども、令和2年度診療報酬改定の基本方針。
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 仮に、私たちのほうで皆さんと一緒に議論していく中での「たたき台」といたしまして用意したものとしまして、この2枚目のスライドですけれども、(1)として「改定に当たっての基本認識」というものとして、3つ書いております。

 1つは、健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現、これをどういうふうにしていくかという認識。

 次に、医師などの働き方改革の推進、これをどうしていくかという基本認識。

 そして3番目としまして、患者・国民に身近な医療の実現、これをどういうふうにしていくかということの基本認識ということがあるんではないか。

 次のスライドに移っていただきますと、3枚目のスライド。
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 先ほどの基本的認識に基づきまして、「改定の基本的視点と具体的方向性」ということでございます。その「視点」を4つにしまして、その視点ごとにそれぞれ「方向」ということで書いております。

 4つの視点なんですけれども、まず最初の視点といたしましては、「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進する視点」についてどういうふうなことを考えていくか。

 2番目の視点といたしましては、「患者・国民にとって身近であるとともに、安心・安全で質の高い医療を実現する視点」についてどう考えるか。

 3番目は、「医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進に関する視点」についてどうするか。

 また4番目といたしまして、効率化・適正化を通じて、医療保険制度全体の安定性・持続可能性を高める視点についてどう考えるか。

 この4つの「視点」に沿って、それぞれ「方向」として、今、読み上げませんけれども、こういうふうなものがあるのではないかということで並べております。

 これは仮に、私たちのほうで皆さま方と一緒になって議論をしていただいて作っていく前提として、キックオフの前提として用意させていただいたものでございますので、こういう柱でいいのか、また別の柱があるんではないか、そういうようなことをこれから議論をしていただければと思っております。

 参考までに、最後の4枚目のスライドは過去、平成20年度改定以降、2年ごとに行っている改定について、どういう基本方針を定めてきたのか、この医療保険部会、社会保障審議会のほうでどういうふうに作ってきたのかということを用意させていただいております。
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 事務局からの説明は、以上でございます。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございます。それでは、ただいまの説明に基づきまして議論を進めたいと思いますが、ご意見、ございますでしょうか。はい、それでは藤井委員、どうぞ。

質疑──藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)

〇藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)
 ありがとうございます。ただいまの資料「1ー2」の3ページですね、一番下の「例」に記載されている「効率化・適正化を通じて、制度の安定性・持続可能性を高める視点」、ぜひ、お願いしたいと思います。

 あとその際ですね、後発医薬品の使用促進や残薬、重複投薬の薬等はもちろんでございますが、限られた医療資源を有効に活用するという観点からもOTC薬の活用というものを見直す方策もぜひ考えていただきたい。

 特に、スイッチOTCもこれ、大変重要でございますが、単に医療用医薬品から置き換えるというだけでは患者の負担が増すばかりでありまして、ポリファーマシー対策になりにくいですから、ぜひOTC薬の中でも配合剤とか生薬製剤ということを活用していただいてですね、患者さんの服薬の負担を減らすということもぜひ検討していただきたいと思います。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。佐野委員、どうぞ。

質疑──佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)

〇佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)
 ありがとうございます。次期改定はですね、やはり団塊の世代が後期高齢者に入られる2022年、ここをですね、見据えた改定になると思いますんで、大変、極めて重要な改定だというふうに認識をしております。

 そういった視点で見た場合にですね、この資料「1ー2」の2ページの「基本認識」の部分なんですけれども、
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 この中にですね、制度の持続確保のための効率化・適正化という視点をですね、これは喫緊の課題だと思いますので、この大きな項目としてですね、取り上げていただくというふうにお願いしたい。(欠席した)藤原(弘之)委員(経団連医療・介護改革部会長)からの意見(書)にも出てますし、そういった点はですね、やはりもっと大きな大項目として入れていただきたいなというふうに思います。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。それでは安藤委員、南部委員の順番でお願いいたします。
 

質疑──安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)

〇安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)
 はい、ありがとうございます。1点、ご意見と、あと1点、確認をさせていただきます。

 まず最初に意見を申し上げさせていただきます。「基本認識」として掲げられている「全世代型社会保障」を実現するためには、疾病を抱えながら働き続けられるようにするためにも環境整備が非常に重要であると考えております。

 そのための有効な手段の1つがオンライン診療、オンライン服薬指導であり、企業の人材確保であるとか、医師の働き方改革の観点からも重要なテーマだと考えております。

 この点、資料「1ー2」の3ページに、「医療の質に係るエビデンスを踏まえた遠隔診療の評価」と記載いただいたことは良いことだと思いますが、
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 最近では、厚労省のホームページであるとか、ガイドラインなどにおきまして「オンライン診療」と表記していることが多いと思いますので、「遠隔診療」ではなく「オンライン診療」と記載していただいたほうがよいのではないかと思います。

 どうしても、この表現ですと、遠く離れた所にいる患者のみにだけの診療行為というふうに感じられるので、どうしても、やはり「オンライン診療」という形のほうがよろしいのではないかと思っております。

 また3月20日のですね、未来投資会議に厚生労働大臣が提出された(参考)資料には、「オンラインでの医療全体の充実に向けて取組を進める」とされておりまして、
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「未来投資会議」資料3-2厚生労働大臣提出資料P15

 オンライン服薬指導についても診療報酬改定における対応を検討することとされておりますので、オンライン服薬指導についても明記していただく方向がよいのではないかと考えております。

 次に確認でございますが、3ページの「方向」の例の1番下から2つ目に「費用対効果評価」という記載がございます。費用対効果評価につきましては、今年度から新たに導入された制度でありまして、次期改定に向けた議論の中で直ちに議論すべき内容は想定されていないように思うんですが、事務局としては次期改定に向けてどのような議論を行っていくことをお考えなのか、教えていただければありがたいと思います。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。それでは事務局、費用対効果についてご質問ありました。医療課長どうぞ。
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〇厚労省保険局医療課・森光敬子課長
 はい、費用対効果につきましてはですね、医薬品の薬価制度の中に……、医薬品および医療機器のですね、制度の中の1つとして入れ込むということで4月からスタートしておりますし、対象の品目も既に出ております。

 そのほかにですね、私ども、「費用対効果」という意味では、もちろんそうでございますけれども、基本的には今後ですね、技術、いろんな高額な技術ですとか、そういうものもございますので、それについても検討を進める必要があるというふうに考えておりまして、それについても議論の対象というふうになるかと思っております。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、安藤委員、いいですか。それでは、お待たせしました。南部委員、どうぞ。

質疑──南部美智代委員(日本労働組合総連合会副事務局長)

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〇南部美智代委員(日本労働組合総連合会副事務局長)
 はい、ありがとうございます。基本的考え方につきまして、まず何よりも大事なのは「医師等の働き方改革の推進」について、ということで、「基本認識」に書いていただいておりますので、その際には看護師をはじめとする医療従事者全体の働き方改革という視点で十分な検討をよろしくお願いしたいと思います。

 そのためには、地域の医療体制を確保しつつ、働き方改革を十分にスムーズに実現するために医師の偏在是正と地域医療構想の実現というのが最も重要になってくると考えておりますが、

 昨日、公立病院におきます再編・統合の議論が必要とするという位置づけで合意を出されたと聞いております。今後、偏った公表ではなくて、地域の実情を踏まえた住民の意見を十分尊重した中での慎重な議論があってこそ、地域全体の地域医療構想になるかと思っておりますので、そういったところにもしっかりと留意をしていただき、働き方改革、そして住民本位の患者さんに分かりやすい、納得のいく診療報酬改定をしていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございます。当部会に直接関係のないようなものではありますが、診療報酬に関連付けて議論するときにはそういう部分にも注意してほしいという、そういうようなご要望だったと思います。

 ほかにいかがでございましょうか。はい、それでは原委員、それから林委員の順番でお願いします。

質疑──原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)

〇原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)
 ありがとうございます。今、私ども国保連合会と支払基金、そして厚生労働省、三者一体となって診療報酬の審査支払改革に取り組んでいるところでございます。

 この診療報酬点数にかかる審査基準の明確化ということが1つのテーマとなってまして、これは審査基準の地域差等の解決に向けた課題の1つということで位置づけられています。

 また、この資料の最初にありました、スケジュールがございましたけれども、大変、毎回、診療報酬改定はタイトなスケジュールの中で作業が行われておりまして、私ども審査支払機関は改定があるたびにシステム改修をしなきゃいけないということで、大変、そのシステム改修に、複雑になるほどに作業が大変になっているというような状況がございます。また事務コストもそれに伴って増大をしていくということでございまして、

 こうした課題への対応の1つとして、診療報酬体系の簡素化というんでしょうか、こういうことがあると思いますし、以前も、従前も基本方針の中で取り上げていただいてきたかと思います。

 これはまた「基本認識」、厚生労働省のほうで示されました「基本認識」の中の「患者・国民に身近な医療の実現」と、あるいは患者・国民にとって分かりやすい医療と言うんでしょうか、そういうことにも診療報酬体系の簡素化というのはつながっていくんだと思いますので、
ぜひ、このことを、この「基本方針」の中でも問題意識として取り上げていただければと思います。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。では林委員、どうぞ。

質疑──林正純委員(日本歯科医師会常務理事)

〇林正純委員(日本歯科医師会常務理事)
 はい、ありがとうございます。日本歯科医師会といたしましても、口腔、全身の健康に関しまして関連性があるということで、さまざまなエビデンスを示してきております。

 資料の2ページ目の「改定に当たっての基本認識」の所ではございますが、口腔の健康が健康寿命の延伸に寄与するということも発信してきており、骨太の方針等、さまざまな部分で歯科医への理解が深まっていると考えております。

 人生100年時代の全世代型社会保障の実現における基盤は、健康ということが重要なキーワードになっておりまして、歯科医療が果たす役割は大きいと考えております。

 その上で、(「方向」の例に挙げられている)「口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応」等、そういった推進を患者・国民、身近な医療の実現においても、かかりつけ歯科医が担う役割は大きいと思っております。

 先ほど出ました医師等の働き方に関しましても、タスク・シフティングにおけるヒアリングでも日本歯科医師会が示しておりますように、医科歯科連携の推進によりまして、その役割を果たすものが重要だと考えておりますので、その辺も含めまして引き続き、ご検討のほど、よろしくお願いいたします。以上でございます。

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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございます。森委員、どうぞ。

質疑──森昌平委員(日本薬剤師会副会長)

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〇森昌平委員(日本薬剤師会副会長)
 はい、ありがとうございます。今回の改定の基本方針なんですけれども、その構成でよろしい、異論はありません。

 そうした中、今回のキーの1つがですね、「改定に当たっての基本認識」の所にもありますけれども、「医師等の働き方改革の推進」ではないかというふうに思っております。
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 そうした中、薬局薬剤師として各地域において医師をはじめとする他の職種や医療機関との関係機関と情報を共有しながら連携して、そして、かかりつけ機能を強化して患者に対して一元的・継続的な服薬管理のもとで薬物治療を提供していきたいというふうに思ってます。

 そうしたことで、安心・安全で質の高い薬物治療の提供はもちろんなんですけれども、チーム医療の推進、それから医師等の負担軽減にもつながるのではないかというふうに思っております。そのようなことに積極的に取り組んでいきたいというふうに思ってます。以上です。

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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。では横尾委員、どうぞ。

質疑──横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長、多久市長)

〇横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会会長、多久市長)
 ありがとうございます。基本認識と具体的な方向性の「例」ということで、例示していただいておりますので、いろいろ細かい項目まで網羅いただいて大変ありがたいと思っていますが、一方で首長としても、あるいは後期高齢者医療広域連合で関わっている立場からして、感じていることをいくつか述べさせていただきたいと思います。

 まず1点目は、全ての、今日の会議の参加者の皆さんの大前提となっていると思うんですが、アクセスしたいと思えばいつでも医療にアクセスできるというふうに、つい思いがちですが、全国を見ますと、地域医療が必ずしも充実していない所も当然あるわけでございまして、医療の確保ということが大命題になっている地域も多々ございます。

 昨日、報告された「統合すべきだ」「連携すべきだ」というのもその1つのアドバイスかと思いますが、そういったことの確保を、こういう報酬の点数制でどうこうということはいきなりはならないと思うんですけど、大前提として医療の確保ということをぜひ対応していかなければいけないというふうに感じているところです。

 2点目には、国民の2人に1人がかかる病気に、がんがございますけれども、いずれ誰でもかかるような状況になっていく可能性が高いですし、団塊の世代の皆さんが75歳以上になると、ますます確実に、もう数字としては上がってくるのかなと心配もしているところですが、その時に、適切にアクセスできるような環境を整える、そのことを促すようなこういう制度をとることも大切かと思っています。簡単に言うなら、がんになっても、がんを告知されても怖くない、恐れることなく診察・治療を受けることができる、そういう体制を促すようなことも必ず考えなければいけないと思っています。

 3点目に思っていますのは、後期高齢者ということではないんですが、高齢者に関することです。先にプロジェクトチームを発足していただいて高齢者の保健(事業)と介護(予防)に関する一体的な推進についてのレポートがまとめられたり、ワーキングサポートチームでも、されたところです。大変よく整理されているところでございまして、これにあわせて口腔ケアのことにも触れていただいていると思っています。

 思えば、私どもの自治体がやっているのは、「百歳体操」というのを例えばやっておりますが、85以上の方がそのことをやることによって筋肉が少し戻ってきてフレイルが除去されて健康健やかに過ごす、元気に過ごすことができるとか、あるいは口腔ケアですと、本当に1日簡単にやれることで全身の健康に関わることもやれる。こういったことを高齢者が増えている時代ですので、ぜひ啓発をしたり取り組んでいくことができる、それを促すような制度ということも一方でぜひ考えていただきたいなあというふうに願っているところでございます。

 これは3点目にも申し上げたんですが、全体として実は思っていることは、長期的に我が国の医療をどうするかという方向性をどこかで厚生労働省を中心に総理官邸かどこかと協議をしてまとめていただく必要もあるんではないかと感じています。2年ごとの報酬改定による議論や項目のチェックと十分な審議がされているわけですけれども、大きな流れとしてこういうことを目指すんだということを、ぜひ考え方として、戦略的目標に向けてですね、2年ごとの改定ではこういうふうに暫時改定していく、改善していくと、そういった取組もぜひ考えていただきたいと思っているとこです。

 あと最後になりますが、働き方改革のことが話題になっています。私どもも市立病院を経営しているので、よくそのことを認識しているところですが、なかなか難しいかもしれませんけど、英語でいうとレイバーとコーリングとミッションという単語があります。レイバーって、働く、労働という意味ですけれども、コーリングっていうのは既に与えられたミッション、「天職」ということも言われますし、ミッションも同じような意味があります。ぜひ、こういったことを医療を志す若者たちが医療の学びの時、そしてインターンや研修をする時、そして本格的に医療現場にいく時に、ぜひ天職やコーリング、ミッションということを意識していただけるような、自覚していただけるような、そういう医療スタッフ、医療に関わる人々の育成をですね、ぜひ一方では考えていく必要があると思っているところです。かといって、働き過ぎがいいと言っているわけではございません。そういうミッションを持って働く方の所には、次の世代を担う医療人が育っていくと思いますし、また、その姿勢が地域の医療に本当にいろんな意味でプラス効果を生み出すと思います。

 ぜひ、そういったことも念頭において今後の協議をお願いできればと思っています。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。ほかにいかがでございましょう。はい、それでは秋山委員、どうぞ。

質疑──秋山智弥委員(日本看護協会副会長)

〇秋山智弥委員(日本看護協会副会長)
 ありがとうございます。資料「1ー2」の改定の基本方針に関する方向性については、おおむね賛成でございます。スライド3枚目の基本的視点に沿っていくつか意見を述べさせていただこうと思います。
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 まず1つ目の視点の「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進する視点」という所で、1つ目の右側の「方向」の例のポチに「人員配置の合理化」という言葉がございますけれども、負担軽減という趣旨であれば、むしろ「人員配置の強化」ではないかというふうに考えております。この点については1点、確認させていただきたいと思います。

 人員配置は、患者の安全というのが担保されるのが何よりも大前提だと思いますので、合理性・効率性といったことばかりに軸足を置いたような議論にならないように注意する必要があると考えております。

 それから、2つ目の「患者・国民にとって身近であるとともに、安心・安全で質の高い医療を実現する視点」という所でございますけれども、いずれもこの「方向」の例に挙げられている点、当然、重要なものばかりが並んでおりますけれども、認知症の方に特化した視点がないように思われます。高齢化の進展に伴いまして認知症の方の入院等も依然として増えておりますので、視点の方向としては非常に重要だというふうに考えております。

 それから5つ目の所に「救急医療の充実」というのを挙げていただいております。救急医療の充実におきましては、救急外来のスムーズな初期対応が行えるように看護師が救命に関わる内容的な対応だけではなくて、緊急度、重症度の判断、それから患者さんやご家族への全人的な支援等の役割を担っております。そのため、救急外来での体制整備も非常に重要でございまして、現行、まだ数の上での配置基準というものがございませんので、こうした数にかかる配置基準も含めて看護師の配置も含めて議論していただくことが、安全・安心かつ効率的な医療の提供に資すると考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 そして3つ目の「医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進に関する視点」という所ですけれども、2つ目の「外来医療の機能分化・強化」につきましては、前回の改定の方針では「重症化予防」という文言がございましたが、今回は記載がないようでございます。外来医療での生活習慣病等の重症化予防というのは非常に重要な視点でございまして、実際、外来の看護師は外来患者さん、それから家族への指導、相談支援等の面で非常に重要な役割を担っております。健康寿命の延伸、さらには医療費適正化の観点からも、重症化予防の視点を記載すべきというふうに考えているところでございます。

 それから、「訪問看護(の確保)」の所でございますけれども、「訪問看護の確保」にあたりましては医療と生活、医療と介護をつなぐ連携の役割もありますので、さらなる拡充を図るべきと考えております。在宅療養や看取りなど24時間365日、利用者の生活を支えるためには訪問看護師等の確保や、機能強化型の訪問看護事業所を増やす等の必要がございまして、ステーションだけでなく、病院からの訪問看護を増やすことも重要だというふうに考えております。以上でございます。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございました。ほかに、ご意見ございますか。はい、それでは菅原委員、それから武久参考人の順番でお願いします。

質疑──菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)

〇菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)
 ありがとうございます。全体として出されている「方向」に大きな異論はないんですけれども、特に3枚目のですね、4つ目の「効率化・適正化を通じて、制度の安定性・持続可能性を高める視点」において、特に現況の厳しい財政状況を考えますと、「効率化・適正化」は極めて重要な課題だというふうに認識をしております。

 ただ一方でですね、患者の効率性の向上だとか、あるいは中・長期的な医療費の適正化に資するような、新たな医療技術っていうものが非常に出てきておりますので、そういった新たな医療技術についてはやはりイノベーションをしっかり評価できるようなメリハリのある制度が必要だというふうに考えております。

 ただ、財源は厳しいということも分かっておりますので、そういった新しいメリハリのある評価を実現するための既存技術の再評価、あるいは保険適用の状況も再検討といったことも併せて進めていくことが必要ではないかなというふうに考えております。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございます。では武久参考人、お願いします。

質疑──武久洋三参考人(日本慢性期医療協会会長)

〇武久洋三参考人(日本慢性期医療協会会長)
 はい、すいません。数日前に総医療費の発表がございまして、なんか3,000億ぐらい増えたということですけども、ここ数年ですね、42兆円前後で伸びが緩やかになっておりますし、一時、少し前年度より減った時もあります。非常に、厚労省の中でのご努力の結果だと思っておりますけれども、またこの81枚目のスライドのように、2025年ではかなり多額の総医療費になるような予想しておりますし、
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081_【資料2】医療保険制度をめぐる状況[20190927医療保険部会]
082_【資料2】医療保険制度をめぐる状況[20190927医療保険部会]

 私も昔から言っておりますけれども、だいぶ前には100兆円をそのうち超えるんじゃないかっていうようなことも言われていた時もございまして、非常にこういうふうに高齢者が非常に増えながらですね、統計上では外来診療も減っているし、入院費用も減っている。平均在院日数も下がっているということで、高齢者がどんどんどんどん増えていることが医療費の拡大にそれほど影響してないということは、しかも現場では平均年齢が6年ぐらいまた増えていますしですね、私は保険診療としてはうまくいってるほうじゃないかと思います。

 新しい薬や新しい技術を全部入れていただいておりますし、それでもありながらこのような状況にあるっていうことは非常にありがたいことだと思っておりますが、

 なお慢性期の立場として言いますと、急性と慢性と言いますと、やっぱり病気の性格上、慢性期のほうが長くかかるということもありますけれども、今、急性期一般の診療報酬が1から7と。地域一般のほうでもありますけれども、いわゆる「高度急性期」と「地域急性期」の分け方ということで、一般病床が約90万床、療養病床が約30万床、この比率を少しずつ変えていっていただいているということは、保険診療の上でも感じているところでございます。

 高齢者があまり長く急性期病院にいますと、むしろリハビリテーションが遅れて寝たきりが増えるというようなことも言われておりますので、今の状態で医療費が、高齢者が増えるにもかかわらずあんまり増えないで効率化されて、しかも高度医療には適正な報酬が付いている、付けていただいているということで、われわれとしてはこの方向でやっていただけると、ありがたいかなと思っています。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございました。はい、では松原委員、それから堀委員の順番でお願いいたします。

質疑──松原謙二委員(日本医師会副会長)

〇松原謙二委員(日本医師会副会長)
 はい、ありがとうございます。「基本認識」の点におきまして、私どもも外国も、今から高齢化の時代がやってくることを認識しております。それに対して社会保障制度をどうしたらいいか考えるたび、十分に大事な問題だと考えておりますが、もう1つ、ここにおいて人生の大先輩である方々が高齢者になり、その方々が納得して医療を受けられるように、つまり必要な医療が十分に担保されるような制度を持続可能にしなければならないと思っています。例えば、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を十分にして、ご本人たちが納得できるような仕組みをまずつくることから始めるべきではないかと思っております。

 また、医師の働き方改革でございます。確かに医師は大変長い時間働いております。その中に、自らの学問的な研鑽を積むための時間もあるやに思います。そのところをうまく整理した上で、また当直などをどのような形で働いていいのかということも、そこも十分に整理しないと、一歩間違えると医療崩壊が起きますので、そのあたりを含めながら、よろしくお願いしたいと思うと同時に、

 具体的には、医師の若い先生も含めて皆さんからお聞きしますと、「あまりに事務量、要するに事務処理量が多い」と。「これを専門的に処理してくだされば、すごく楽になる。自らやらねばならない医療について十分に力が発揮できるのに」というふうにおっしゃいます。従って、細かい話になりますけれども、医療事務も、それも十分にできるような方を配置していただいて、医師でなければならない、医師でなければできない部分に特化して、させていただければ、若い先生たちもだいぶ楽になるのではないかと思っております。

 最後に、かかりつけ医ということで、やはり機能を発揮して、十分に社会保障制度の持続を可能にするために私たちも努力してまいりますが、しかし、最近話題になっている遠隔医療、どうも単語が間違って使われているように思います。

 私たちは、遠隔医療というのは、へき地や在宅、つまり医療機関に来れない、なかなかアクセスできない方々が十分に良い医療が受けられるようにするためのICTを使った仕組みだと思っております。遠隔医療というのはあくまでも、へき地や在宅で、来れない方に対して対応すべきだと思っているところでございます。何卒よろしくお願いします。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございました。では堀委員、どうぞ。

質疑──堀真奈美委員(東海大健康学部長)

〇堀真奈美委員(東海大健康学部長)
 改定にあたっての基本認識については、ほかの委員の方と同じように賛同いたします。ただ、「人生100年時代に向けた『全世代型社会保障』の実現」「健康寿命の延伸」とこちらには書いておりますが、
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 基本的な視点の所を見ますと、診療報酬なので診療報酬を実際に使った時に点数が付くということですから、健康に付けるということではないんですが、健康を促す、無駄に……、無駄ではないでしょうけど、多くの診療をしなくても少ない治療で患者さんが帰れるようなことにも点数が付くような、つまり健康行動というか、健康な賢い受診行動を進めるような視点というものも必要なんじゃないかと思います。

 それから、改定の「視点」の所で、過去の所にも「効率化」というのもございますし、今回の所の「効率化・適正化」というのも賛成なんですが、以前もお話ししましたが、効率化・適正化だけを押すんではなくて、効率化・適正化が結果として患者・国民にとっても質の高い医療になるということがあるかと思います。

 例えば、先ほどポリファーマシーや残薬の話が出てきましたが、分かりやすさ、患者にとっての分かりやすさということで考えたりしますと、以前、樋口委員が調査報告書を提出されたかと思いますが、高齢者にとってもたくさんのお薬があることは、実は在宅の中で管理がしにくいであるとか、あるいは、がんの緩和治療などにおいてもたくさんあり過ぎて、ちょっと問題があるということもあるかと思いますし、分かりやすさ、あるいは質の高さとセットで効率化・適正化があるというような視点もあるんではないかなあと思います。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、どうもありがとうございます。ほかに、何かございますか。だいたい、よろしゅうございますか。
 
 この議論は、引き続き、またされることになりますので、本日はこれぐらいにさせていただきたいと思います。それでは、続きまして2つ目の議題になりますが、「医療保険制度をめぐる状況」について、事務局から資料が出されておりますので、説明をお願いします。

 (後略)

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