「マイナンバーカードが健康保険証になる」との説明に日医幹部が反論


 厚生労働省保険局の山下護課長は7月9日、データヘルスの集中改革プランなどを審議した会議で「マイナンバーカードが健康保険証になるということで取組を進めている」と述べた。これに対し、日本医師会の幹部が「保険証は保険証、マイナンバーカードはマイナンバーカードだ」と反論した。(新井裕充)

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 厚労省は同日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大学経済学部教授)の第129回会合を都内で開催し、委員の多くはオンライン形式で参加した。報道関係者は会場の別室で同時中継を傍聴し、YouTubeでのライブ配信はなかった。

 この医療保険部会では、次期の医療保険制度改革に向けた検討が進められており、今回は「データヘルスの集中改革プラン」に挙げられた3つの課題を中心に議論した。

 この「集中改革プラン」では、「3つのACTIONを今後2年間で集中的に実行」とし、①全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大、②電子処方箋の仕組みの構築、③自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大──を挙げている。

 資料説明の中で、厚労省の山下課長は「マイナンバーカードが健康保険証になるということで取組を進めているが、そのマイナンバーカードには、保険者の名前や番号、被保険者番号が入っていないので、それを見るだけでは分からない」と指摘。マイナンバーカードを読み取る機械について「支払基金が一括して調達し、これを全医療機関、薬局に配る業務が追加された」と説明した。

 質疑で、松原謙二委員(日本医師会副会長)は「先ほど『マイナンバーカードを保険証にした』というような言い方をされたが、そうではなく、私どもは『保険証は保険証』『マイナンバーカードはマイナンバーカード』だ」と反論。「何に使うのかということだけが先走って、本質とずれていくことに対して大変危惧を覚える」と述べた。

 詳しくは、以下のとおり。

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〇遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)
 (前略) それでは次に、「データヘルスの検討状況について」を議題といたします。事務局から資料がありますので、説明をお願いいたします。
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〇厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長
 はい、医療介護連携政策課長でございます。資料3、「データヘルスの検討状況」につきまして、ご説明をさせていただきます。

 前回の医療保険部会で、健康・医療・介護情報の利活用検討会の検討状況について、ご説明を差し上げましたが、それの、いわゆる「続き」ということと、

 また、昨年の12月にさせていただきました「オンライン資格確認等システム」の構築に向けての、今、検討状況について、ご説明をさせていただきたいと思っております。
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 1ページをおめくりください。

 今年の6月に公布されましたけれども、「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」の中に、「医療・介護のデータ基盤の整備の推進」、

 これは介護保険法の改正がありまして、その介護保険法での介護のデータ基盤の整備の推進の中に、社会保険診療報酬支払基金の医療機関の業務としまして、「オンライン資格確認の実施に必要な物品の調達・提供の業務を追加する」ということが入っておりまして、これが、おかげさまで成立をしたということでございます。

 実際に、具体的にどういうことになるかと言いますと、マイナンバーカードを読み取る、「マイナンバーカードが健康保険証になる」ということで取組を進めておりますが、そのマイナンバーカードには、保険者の名前とか番号とか被保険者番号が入っておりませんので、それを見るだけでは分からないということでございますので、

 このマイナンバーカードを読み取るカードリーダーの機械を支払基金が一括して調達をしまして、これを全医療機関、診療所・病院・薬局、全医療機関にお配りをするというような業務が追加されたということでございます。
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 その業務なんですけど、2ページ目を見ていただきまして、全ての医療機関にカードリーダーを入れていただきたいというようなこと。

 一方で、どんなことがあるのか、どういうふうにしなきゃいけないのか、医療機関もいろいろと、こう、分からないところも多いと思います。

 それは、われわれのほうがしっかりと説明をしていかないといけないということで、いま現在、周知・広報なんですけれども、こう見ていただくと、7月にですね、医療機関向けのポータルサイトを開設をさせていただきました。

 具体的には、社会保険診療報酬支払基金のほうでポータルサイトを作っておるんですけれども、こういったポータルサイトにきちんと登録をしていただきたいということを今やっているところでございます。

 (中略)


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 続いて、3ページをめくっていただきたいんですけれども、マイナンバーカードの申請件数なんですけれども、

 令和元年から、4月からやっておりますけれども、最近、それより前からずっとあるんですけど、申請件数と交付件数、最近になって非常に急激に申請が増えておりますし、実際に交付件数も増えているということでございます。

 その結果、直近の数字で、総務省さんから頂いてる数字なんですけれども、全国民の17.5%。実際の枚数で言うと、2,200万枚以上のマイナンバーカードが交付されているというところでございます。
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 続いて、経済財政諮問会議で加藤厚生労働大臣が発表した「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プラン」ということで、4ページ以降、説明をさせていただいたいと思います。

 「データヘルス集中改革プラン」としまして、オンライン資格確認等システムやマイナンバー制度などの既存のインフラを最大限活用して、令和3年に必要な法制上の対応を行った上で、令和4年度中に運用したいというようなプラン、運用したいということで、

 「ACTION1」「ACTION2」「ACTION3」ということで、3つの「ACTION」ということで、今後2年間、集中的に実行するという内容を提案させていただきました。

 まず「ACTION1」なんですけれども、前回の医療保険部会でも説明したとおりなんですけれども、全国で医療情報を確認できる、そういった仕組みをつくって令和4年夏をめどに運用を開始したいというものでございます。

 次に「ACTION2」は、電子処方箋の仕組みを令和4年夏をめどに運用を開始するということで考えております。

 そして「ACTION3」は、自分自身の保険医療情報を活用できる仕組みの活用ということで、これも令和4年度早期から順次拡大し、運用するということを考えております。
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 具体的にどういう内容かっていうことにつきまして、ページ飛びますけれども、7ページをご覧いただきたいと思います。

 まず「ACTION1」の、医療情報を患者や全国の医療機関等で確認できる仕組みということでございます。

 真ん中の絵にありますけれども、今、私どもが支払基金さん、また各、全保険者さんと一緒になって構築をさせていただいております、オンライン資格確認等システム。

 これは個人単位の被保険番号、また、どの保険者に入っているかっていう資格情報、医療費、薬剤情報、そして特定健診の情報が1人ひとりの個人被保険者番号と1対1対応で管理されることになります。

 これに加えまして、レセプトや診療報酬の明細書にあるような情報としまして、手術の情報、また移植の情報、透析とかの情報、さらに、どこの医療機関でやったのかっていう情報も付け加えまして、

 例えば、その情報から自分がマイナンバーカードで自分のマイナポータルで見たいということであれば、それが見られるような仕組みをつくる。

 さらに、ご自身がマイナンバーカードで主治医の先生、また自分が通ってる薬局のほうで見てくださいっていうことで見るというような仕組みを構築するというものでございます。

 実際にこれ、モデル事業をやっておりまして、医師・薬剤師、また救急の現場でですね、これらの情報によって、どう医療の現場でなったのかっていうのが、それぞれのコメントというか、感想というかが書いてありまして、これは説明省略しますが、「参考資料2─2」で、そういったことが書かれているということでございます。

 で、この仕組みをどのように進めていくかということなんですけれども、実際には医政局のほうで検討して具体化していくということでありますけれども、

 そう言っても、オンライン資格確認等システムの基盤の中でやっていくということでございますので、今こういったことをやっていきますということを今日、紹介を、医療保険部会の皆さま方にご紹介しますが、それと並行して医政局でも検討をしていくということになります。

 われわれとしましては、その検討を具体化の、ある程度の具体化していく、もしくは、その中途の検討状況ということを、この秋とかに進捗状況を聞いたりとかをしていくということでございまして、

 そして来年には、その検討の最終報告というのを医療保険部会にも発表していただくというようなつもりでおります。

 (中略)

〇遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)
 はい、丁寧な説明、ありがとうございました。それでは、これにつきまして、ご意見、ご質問等あれば頂きたいと思います。

 (中略)

〇池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)
 (前略)マイナンバーカードの普及に関して、発行はずいぶん伸びていますけども、それを持ち歩くということがなかなかまだ抵抗がある方が多いと思います。

 それで前回、スマートフォンに入れることはできないかっていう話をしましたけれども、そのあと、1週間ぐらいあとぐらいですか、全国紙に運転免許証と、このマイナンバーカードを同時に情報を入れるような形を検討するっていうことが、なんか出ていましたが、それの進捗状況等、管轄が異なるかもしれませんけども、分かっている範囲で教えていただければと思います。

 (中略)

〇厚労省保険局医療介護連携政策課・山下護課長
 続いて、運転免許証なんですけれども、運転免許証、聞いているところでございますけれども、やれるかどうかっていうことを、これから検討するということでございます。

 「マイナンバーカードを健康保険証にする」ということもですね、実際に決まってから実際に着工までにこれだけ時間かけて一生懸命、丁寧にやっているわけですから、まだ、これから検討をして、どうなのかっていうところだと思いますので、もちろん、そうなればですね、マイナンバーカードの普及がさらに進むと、私どもも期待しておりますが、

 そういった状況も見ながら、われわれとしては、ぜひともマイナンバーカードの普及に資するような形で進めていくように頑張っていきたいと思っています。
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〇遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)
 ありがとうございました。それではお待たせしました、松原委員どうぞ。
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〇松原謙二委員(日本医師会副会長)
 はい。日本医師会の松原でございます。こういったデータを1つに集めたり集約していくっていうことは、今から大変必要なことだと思いますが。

 ただ、議論を聴いていますと、これは、私は国民の皆さん、患者さんの皆さんのために行うべきことであって。

 ところが、中には、どうも誤解されてる方もいらっしゃるように、民間の事業のためとか、あるいは企業に予防接種のデータを集めるとか、どうもそれは違うのはないかと思います。

 あくまでも国民、患者さんのために、これをやるということを徹底しないと、おかしなことになるということを危惧します。

 また、先ほど、「マイナンバーカードを保険証にした」というような言い方をされましたけど、そうではなくて、私どもは「保険証は保険証」「マイナンバーカードはマイナンバーカード」だと。

 患者さんにとっての重要な医療情報をきちっと守っていくということが一番大事なことであると医療者として思いますので、そこのところは誤解のないように、きちっとやっていただきたいと思っているところであります。

 そういったことを押さえた上でやらないと、何にあと、使うのかということだけが先走って、本質とずれていくということに対して大変危惧を覚えます。

 電子処方箋についても、よくよく現場の意見を聴いていただかないと、これだけが独り歩きするということは非常に危険ですので、ぜひ、こういうことを検討するときには、具体的に現場で行っている人たちの意見を十分に聴いていただきたいと思ってるとこであり、まだまだ、これは「たたき台」だと私どもは理解しているとこであります。以上です。
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〇遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)
 どうもありがとうございました。

 (以下略)

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