金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方について ── 3月26日の医療保険部会

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 厚生労働省保険局は3月26日、社会保障審議会(社保審)の医療保険部会(部会長=遠藤久夫・国立社会保障・人口問題研究所所長)で「金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方について」と題する資料を示し、委員の意見を聴いた。(新井裕充)

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 政府の改革工程表では、「高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、『能力』に応じた負担を求めることを検討する」とし、介護の補足給付については「2019年度の関係審議会における議論を踏まえ対応」としている。
 
 厚労省担当者の説明は以下のとおり。

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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 (前略) それでは議事に入らせていただきます。本日は「医療保険制度改革について」を議題といたします。

 具体的には、

 傷病手当金について
 任意継続被保険者制度について
 改革工程表2019における検討項目について
 予防・健康づくりについて

 の4つについて議論をしたいと思います。それではまず、傷病手当金について事務局から説明をお願いいたしたいと思います。

 (中略)
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.

 次に、「改革工程表2019における検討項目について」を議題としたいと思います。事務局から関連の資料の説明をお願いいたします。

 (中略)

.
〇厚労省保険局医療課・荻原和宏医療保険制度改革推進官
 はい、それでは資料の3をご覧いただきたいと思います。今回、資料の3には3つ、検討項目を入れさせていただいております。
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 1つ目が、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方について
 2つ目が、医療費について保険給付率と患者負担率のバランス等の定期的に見える化等について
 3つ目が、今後の医薬品等の費用対効果評価の活用について

 ということでございます。順に、ご説明させていただきたいと思います。

 まず最初に1ページ目以降ですが、「金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方について」でございますけども、
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 2ページに改革工程表の記載について書かれてございまして、

 高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討する。

 というふうにされてございます。
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 その下、3ページでございますが、後期高齢者世帯の貯蓄の状況についてでございます。

 平均貯蓄額につきましては、約1,200万円というふうになっておりますが、

 分布におきましては、貯蓄が無い方が15%強。一方、3,000万円以上の貯蓄がある方が10%弱ということで、

 無い方と高額貯蓄の方の割合が高い、比較的高いのかなというふうになってございます。
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 その次、4ページでございますが、こちらについてはそれぞれの年齢階級別の貯蓄と負債の額についてお示ししてございます。

 40歳未満の世帯につきましては、貯蓄に関しては平均で600万円未満という形になっています。

 一方、60歳以上の世帯については平均で2,000万円以上という形になってございます。

 一方、負債については40歳未満が最も多く、1,200万以上ございまして、徐々に減ってまいりまして、年齢階級が高くなるにつれて少なくはなってきているということでございます。
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 その下、5ページでございますが、医療保険と介護保険におけます食事、居住に関する給付の比較について資料を載せてございます。

 医療保険におきましては、病院等における食事と居住のサービスに関しましては入院患者の病状に応じまして、医学的管理の下に保障する必要がございますということで保険給付の対象としつつ、

 在宅でもかかる費用として食費、療養病床に関しては居住費について自己負担という形にしてございます。

 介護保険に関しましては、基本的には在宅との公平性の観点から施設におきます食事・居住のサービスについては保険給付の対象外、原則として自己負担としつつ、

 福祉的な観点から低所得者に対しての補足給付を支給しているということで、そこに違いがございます。
.

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 おめくりいただきまして、6ページ、7ページに、介護保険部会のほうに提出された介護保険におきます補足給付の概要について載せてございます。

 こちらをご覧いただきますと、平成17年の介護保険法改正によりまして、基本的に、原則、先ほど申し上げたように保険給付の対象外とした上で、

 低所得者の方を対象とした補足給付が導入されてございます。

 その後、平成26年、介護保険法改正におきまして、3点ほど見直しがなされております。

 基本的に3つありますが、上の2つが平成27年の8月に施行されてございまして、その1つが、一定額を超えた預貯金等を持っておられる方。

 具体的に申し上げると、単身で1,000万円超、夫婦世帯で2,000万円超の預貯金等がある方については、所得が低い方であっても対象外とするというふうに改正されてございます。

 2点目につきましては、配偶者の方の所得については世帯分離後も勘案するということにしまして、

 配偶者の方が課税されている場合には対象外とするということになってございます。

 3点目については、非課税年金である遺族年金ですとか障害年金も所得の判定にあたりまして勘案していくというのが平成28年8月からとなって、改正されてございまして、
.

.
 下の7ページ、ご覧いただけますと、支給要件の変更に伴いまして、まず平成27年の8月に、このそれぞれの推移を見ていただきますと、

 支給件数自体が大きく下がってございます。

 ただし、配偶者の勘案をすることにしたものによるのか、預貯金を勘案することによるものなのか、その影響の度合いについては不明というふうになってございます。

 またもう1点。平成28年8月から非課税年金を所得の際にですね、勘案する変更につきましては、

 これによりまして「第2段階」の方が大きく件数が下がりまして、一方で、補足給付の中では比較的、受ける方の中で比較的所得の高い「第3段階」の方の件数が上がっているという状況ではございます。
.

.
 続きまして8ページでございますが、預貯金へのマイナンバーの付番についてでございます。

 社会保障制度の所得・資産要件を適正に執行する観点ですとか、適正・公平の税務執行の観点等から、金融機関の預貯金口座につきまして、マイナンバーと紐付けて、金融機関に対する資力調査ですとか、税務調査の際にマイナンバーを利用して照会できるという仕組みになってございます。

 そういった仕組みが導入されてございまして、それも踏まえながら、これまでもこの医療保険部会におきまして、

 その保有状況を考慮に入れた負担の在り方についてご議論いただいてございます。
.

.
 主なご意見をご紹介しますと、9ページでございますが、「実務的な課題」ということで、いくつかご指摘を頂いております。

 まず1点目としては、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、将来的にはマイナンバーを活用した金融資産等を勘案する仕組みというのを考えるべきではないかというふうなご意見があります。

 その次としては、被用者保険の保険者のほうが金融資産を把握するというのは介護保険と比較しても現実的ではないのではないかというご意見ございました。

 3つ目といたしましては、現状、金融資産を正確に把握する仕組みはなく、自己申告ベースであるということを考えると、時期尚早ではないかというご意見もありました。

 「制度的な課題について」ということで、先ほど医療保険と介護保険におきます給付の違いを申し上げましたが、

 介護保険のほうでは低所得者への補足給付が福祉的・経過的な性格を有することに鑑みて資産勘案を行っている。その一方で、医療保険においては、そもそも性格が異なるのではないかというご意見がございました。

 3つ目、「財政効果に関する課題」として、事務負担の増加に比べて財政効果はあまり見込めないのではないかといったご意見も頂戴しつつ、

 引き続き、こちらについては検討課題という形になってございます。
.

.
 10ページのほうにも、その後の部会での、今、申し上げた内容とほぼ同じでございますが、ご意見が挙がってございます。

 (中略)

〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 はい、ありがとうございました。

 工程表の中の事柄3つなので、それぞれが全く関係がないわけなので、これ、1つずつやってったほうが良さそうな気がしますから、まず、これまで議論されてきました金融資産の扱い。

 これもずいぶんと部会で議論してきましたけれども、何かあれば、お聞きしたいと思います。

 (中略)

〇兼子久委員(全国老人クラブ連合会理事)
 先ほどもご指摘がありましたけれど、この平均貯蓄額ですけれども、これについてはやはりもう少し、きちっとした分析なり評価しないと、たぶん、この3ページのあれからいけば、3,000万以上の人のところが大きく平均を引き上げていると。

 それから、財務省が去年、老後の資金でいろいろ、困ったことがありましたけれども、ああいったものを念頭に入れると、この1,000万以下の人たちが、こういった貯蓄額を見てですね、負担の問題に踏み込めっていうのは、かなり問題もあるんではないかというふうに思います。

 私自身、感じるのは、前々から言ってることになりますが、やはり、その保険制度というのは、公的な保険制度ですので、本人が保険料を払う。それから公的に負担する。事業主が負担すると。それから本人が払えないものについては、そこは救済をすると。

 こういった形で、応能負担を考え方がきちっと組まれていかないとですね、窓口負担のところで細かくその収入等を見ていくというのは、ある意味ではその応益負担のほうにかなりですね、踏み込んでいって、医療保険の在り方が少し変わっていくんじゃないかなという、私はそういう疑問を持ってますので、この点については慎重な形で対応していただきたいというふうに思います。
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〇遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所所長)
 ありがとうございます。ほかに何かありますか。

 これまでもだいぶ議論はしてまいりましたけれども、まあ、これまでの議論もそうですけれども、基本的に2つぐらいありまして、議論としては課題としてはあるように思いまして。

 1つは、実際の資産の捕捉をどうできるのか、どこまで公平性を保ってできるかっていう議論が1つあったのと。

 もう1つは、これ、保険の何に対応するのか分かりませんけれども、医療保険の中に入れることに対する、なんか理屈づけというか、そこのところの議論が1つあるわけですね。

 介護保険のほうは、ある意味、福祉のロジックで説明が付いたわけですね。もともと自己負担のところ、低所得者に対しては補給をする、補填をすると。

 ただ、そのときに、資産まで一応勘案してやる。これは福祉の世界でやってたものだから、そういう流れで整理できたわけなんですけども。

 保険料とかですね、そういうものに対してフローだけではなくてストックを入れるということは、どういう論立てをするのかっていうところで、いろいろ意見が分かれているっていうことかなあと思いますんで、また、この辺は今後、議論させていただきたいと思います。

 (後略)

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