「中・長期的な入院に係る評価体系(イメージ案)」を示す ── 9月5日の入院分科会

尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)_20190905中医協入院分科会

 厚生労働省は9月5日の入院分科会で、「中・長期的な入院に係る評価体系(イメージ案)」を示した。将来的に検討する項目として、「成果に応じた評価(早期回復等)」を挙げている。イメージ案をまとめた研究班のメンバーは、現状について「良くなることによって評価されなくなってしまう」と悩みを見せた上で、「改善に関して評価ができればいい。患者状態をどんどん良くすればいいという形の評価を考えている」と述べた。【新井裕充】

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 2020年度の診療報酬改定に向けて、入院医療全般にわたる検討が進んでいる。厚労省はこの日の会合で、厚労省研究班の報告資料を提示。「将来的にはアウトカムの評価を組み入れるということも必要ではないか、というご意見を頂いている」と伝えた。

 質疑で、神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「成果に応じた評価が一番大きな議論になってくる」との認識を示した上で、現時点でのイメージを尋ねた。

 同分科会の委員で研究分担者である林田賢史氏(産業医科大学病院医療情報部長)は「患者状態が悪いほうがいい、というようなことになってもまずい」と現行制度の課題を挙げた上で、改善度合いを評価する必要性を語った。

 これに対し、委員から「どれだけ問題を残しつつ在宅に行ったのかということの評価を考えていただくといい」「単なるフィジカルな動きではなく、生活の質などまで考えられるといい」など、退院後の状態にも目を向けた評価を指摘する声もあった。

 厚労省担当者の説明と質疑の模様は以下のとおり。

厚労省担当者の説明──「中・長期的な検討」について

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20190905中医協入院分科会

〇厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐
 (前略) 最後のかたまりになりますが、113ページ以降になります。
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113_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 こちらにつきましては「中・長期的な検討」ということで宿題を頂いた項目でございまして、こちらは入院医療機能の適切な評価の指標とか測定方法について中長期的に検討せよ、という宿題を頂いたところでございます。
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114_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 こちらにつきましては現在、114ページにありますように、平成30年、31年の厚労科研におきまして「急性期の入院患者に対する医療・看護の必要性と職員配置等の指標の開発に係る研究」というものを進めていただいているところでございます。

 研究代表者につきましては、産業医大の松田先生、研究分担者につきましては委員でもいらっしゃいます林田先生にご協力をいただいているところでございます。

 では、まず114ページに、この研究の目的と方法をお付けしているところでございます。
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115_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 こういった研究の取り組み状況をご紹介いただきまして、具体的に115ページというところで、今の課題、さらにはそれをどう解決するのかという対応案をお示しいただいたところでございます。
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116_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 こういった取り組みを進めていただいている中で、中・長期的なイメージというものが116ページにお付けいただいているところでございまして、まず、今あるような「急性期」「地域一般」「長期療養」というものに加えまして、それらの基礎的な評価を行った上で、提供している医療内容の評価、患者状態の評価、さらには成果に応じた評価ということを将来的に検討したらどうかということで、これらの要素を掛け合わせたような評価体系というものを今後イメージしてはどうかというご提案を頂いているところでございます。
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117_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 まず、具体的にどういう方法で進めるかというのが117ページの所でございますが、現行ある、さまざまな指標、データ等を分析して、どういうことができるのかということを進めてはどうか、というようなご紹介を頂いたところでございます。

 これに対するご意見としまして、4枚目の(2)にありますように、まず1つ目でございますが、医療内容の評価については急性期と長期療養では行われる医療の目的や内容が異なることを踏まえ、それぞれを適切に評価する指標を検討すべきではないか。

 2つ目としまして、患者状態の評価については、急性期から長期療養までシームレスに患者像を把握、評価することを検討してはどうか。なお、ADLを改善することによって、かえって看護の業務量が増える場合があるということに留意が必要ではないか。

 3つ目としまして、現在の重症度、医療・看護必要度のB項目は、患者状態と行為実施の有無を合わせた評価指標になっていることをどう考えるか。

 4つ目としまして、将来的にはアウトカムの評価を組み入れるということも必要ではないか、というご意見を頂いております。

 こちらにつきましては「中・長期的な検討」ということもありますので、引き続き研究班におきまして、検討を行なっていきまして、引き続き、作業グループにおける意見交換を行っていきたいというふうに思っております。

 ご説明は以上でございます。
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質疑 ──「成果に応じた評価」について

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20190905中医協入院分科会
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、ありがとうございました。それでは、膨大な資料ですので、それぞれのパートに分けて議論を行いたいと思います。

 (中略)

 それでは最後の部分ですが、「中・長期的な検討」ということで、「入院医療機能の適切な評価指標や測定方法等」に関する事項。参考資料で言いますと、113ページから117ページの部分でございますが、ご質問、ご意見をお願いします。

 はい、神野委員、どうぞ。
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〇神野正博委員(全日本病院協会副会長)
 おそらく総論的には誰も反対される方はいらっしゃらない。で、「各論どうするの?」っていう話になってくるんだと思いますけど。
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116_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 例えば、116ページ等で、先ほど来、お話のあったようなアウトカム、「成果に応じた評価」というところが載っているわけですけど……。

 この辺のところを……、どうするかっていうのが一番大きな議論になってくるのかなっていうふうに思います。なんか、「今のところ、こんなもん」っていうのは、あるんでしたっけ?
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〇林田賢史委員(産業医科大病院医療情報部部長)
 はい、ありがとうございます。あくまでも1つの案という形ですが、「患者状態の評価」ということをやっておりますので、「患者状態の変化」と言うかですね、「改善」という部分に関して評価ができればな、というふうに思っています。

 逆に、良くなることによって……、何て言うんですかね、この入院の評価として、上の部分で評価されなくなってしまうので、それであれば患者状態が悪いほうが逆に言うとですね、いいというようなことになってもまずいので、そういうふうな形で、逆に、良く、「患者状態をどんどん良くすればいいんですよ」というふうな形のもので評価できればなと。これはあくまでも検討段階で、1つの例ですけれども、そういうふうなのをちょっと考えています。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 よろしいですか。はい、牧野委員、どうぞ。
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質疑 ──「容易なデータ収集」について

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〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
 牧野です。115ページにあるところ。「容易なデータ収集」という項目がそこに1つあるんですけれども。
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115_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 今回、これは非常に大事なことだと思うんで。「(重症度、医療・看護)必要度」のⅡのほうで、「EFファイル」(診療報酬請求情報)を使っているという、こういった既に出されたものを利用して、それで評価するということを……。

 ところが、今回、「様式1」にこのデータは使われていないわけですよね。こういったデータというのは使うのが難しいのか、使えないのか、何か、その辺の理由があったら教えていただきたいんですけども。
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〇厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐
 事務局でございます。通常のDPCに結合する際の作業に当然使っているところでございまして、本日ご提示している資料の中には使ってないということで、もし、それを使った分析というようなご意見がございましたら、またそれはご相談させていただければというふうに思っています。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 牧野委員、どうぞ。
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〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
 実は、評価のⅡのときに、救急搬送という項目がⅡから抜けているんですよ。これ実は、「様式1」(簡易版の退院サマリ)にもあるんですよね。だけど、それが使われずに単純に除外されてしまったのはなぜかなと、そこが知りたいんですけども。
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〇厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐
 ちょっと、経緯を確認する必要があろうかと。「様式1」で取ろうとすると、退院時じゃないと取れないので、そこの兼ね合いはあったのではないかと思料いたしますが、ちょっと、過去の経緯等は確認しないと、にわかにはお答えできないかと思います。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 ほかはいかがでしょう。はい、池端委員。
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質疑 ──タイムスケジュールについて

〇池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)
 116ページの「中・長期的な入院に係る評価体系」について、私ども慢性期医療協会でも、できればこういう形を、何か医療区分に代わって、何かできないかっていうことを常に考えてはいるですけれども、なかなか具体的には難しいことがあります。

 実際にこれ、研究班長さんとしては、もしこれがいけるとしたら、タイムスケジュール的にはどれぐらいの期間を考えていらっしゃるのか。もし、イメージがありましたら、教えていただきたいんですけれども。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 よろしいですか、林田委員。
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〇林田賢史委員(産業医科大病院医療情報部部長)
 すいません、そういう質問が来るとはちょっと思わなかったんであれですけれども、全く準備してなかったんですけれども。

 まずは急性期のほうからですね、つくっていきたいなと個人的には考えています。先ほどの「データがどれくらいカバーできているか」っていう話もありますので、

 まあ、そうは言っても基本的に最初の方針として、こういう形で全体像を「急性期」から、あるいは「長期療養」まで、ご提示させていただいている形なので、何年後っていうのは、じゃ、急性期は何年後かと言われると、すぐには即答できませんので、

 それが最後と言うか、徐々に広げていって「長期療養」というところまでになると、すいません、「何年」とは言えませんけれども、できるだけ早めにはですね、できるだけこういう形で整理していきたいなというふうには思ってますので、「頑張ります」としか、ちょっと言えないんですけれども、そういう形でよろしくお願いいたします。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 池端委員。
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〇池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)
 ありがとうございます。実は、「医療区分の抜本的な見直し」と言って、10年以上前から言い続けて、なかなかこれは難しい。

 現状の医療区分が比較的、まあ、「割と精度がいい」ということになってしまっているので、ですけど、われわれの協会も 協力できることがあれば協力させていただきますので、ぜひ前向きにご検討いただければと思います。ありがとうございました。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、菅原委員どうぞ。

質疑 ── 効率化について

〇菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)
 ありがとうございます。この分科会の中では、唯一の経済学者ですので、あまりこう、ちょっと言いたいことではないんですけれども、本意ではないんですけれども、

 この評価体系の中に、やはり国全体のバジェットが厳しくなってきているということを考えますと、やはり効率的に効果を出した医療機関が評価されるような、やはり、考え方というのが……
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116_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 116ページの見取り図の中を見ますと、評価内容は基本的に、やったことに関して評価をしていく、それから「成果に応じた評価」というのが入っていますけれども、そこは最終的に、「それがどれだけ効率的に生み出してもらえたのか」っていう評価が抜けているような気がいたしますので、そこについては少し真剣に考えていただきたいなというふうに思います。以上です。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 ほかはいかがでしょうか。
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〇石川広己委員(日本医師会常任理事)
 よろしいですか。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、石川委員。

質疑 ──「患者の状態(ADL等)」について

〇石川広己委員(日本医師会常任理事)
 ここは入院医療費ということなので、今回は入院の調査っていうことですけど、これはアウトカムっていうことをね、今回、FIMだとかそういうのでやって、ADLだとか、そういうものを考えますとですね、この先が、先が、例えば在宅だとかですね、そういった所に行くときに、どれだけ問題を残したかということがですね。

 まあ、私なんかは全然イメージがわきませんけれども、先生方の努力でそういうのを係数化して、そうすると一定の、何て言いますか、入院の、全ての入院のですね、アウトカムみたいな形がですね、出るんじゃないかと。

 「どれだけ問題を残しつつ在宅に行ったのか」ということの評価がですね、ちょっと先生方の頭の中でですね、考えていただくと、入院の全体のアウトカムっていう形でですね、出てくるんじゃないかと思うんですね。

 それが今までですね、日本の医療の全体像の中で、「在宅、在宅」と言われてても、入院と在宅はですね、もう、かなり大きな溝があるということになっちゃうわけですよね。

 連続性の中で考えたら、「入院のアウトカム」というのは一体、何なんだということですね。ぜひ、そういうのも研究していただきたいというふうには思いますけども。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、林田委員。
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〇林田賢史委員(産業医科大病院医療情報部部長)
 はい。そうですね。ありがとうございます。

 ご指摘、まさにそのとおりだと思いますので、まずは、そういう意味でいくと、入院の中でもですね、今、シームレスに評価できていないという部分、まずはそこを改善したいと思ってますけれども、

 当然、そのあとにはですね、在宅ということも視野に入れて考えなければいけませんので、それについても、例えばいろんな意味で状態をですね、そちらの在宅のほうでも活用できるような患者状態として把握できるような項目として、ぜひ入れていければなと、まあ、これは希望……、です、自分の、まあ、そうですね、できれば入れていきたいなというふうには考えています。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、奥委員、どうぞ。
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○奥裕美委員(聖路加国際大学看護学研究科准教授)
 そのアウトカムで、患者さんが在宅も含めてどうなるかというところにおいては、「患者の状態(ADL等)」って書いてあるんですけど、
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115_診療情報・指標等作業グループ報告_20190905中医協入院分科会
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 単なるフィジカルな動きっていうところじゃなくて、その生活の質とか、というところまで考えられるといいだろうなあというふうに思います。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、ほかいかがでしょう。

 (挙手なし)

 よろしいですか。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 それでは、そのほか、全体を通しまして、何かご質問、ご意見ございますでしょうか。

 (挙手なし)

 よろしいでしょうか。はい、それでは、ほかにご質問等もないようでしたら、本件に関わる質疑はこのあたりにしたいと思います。本日の議題は以上でございます。次回の日程等について、事務局のほうからお願いいたします。
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〇厚労省保険局医療課・木下栄作課長補佐
 事務局でございます。次回の開催は9月19日を予定しております。詳細につきましては、改めてご連絡させていただきます。
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〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
 はい、それでは以上をもちまして、令和元年度第6回診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」を終了させていただきます。

 長時間にわたりまして、熱心なご議論、どうもありがとうございました。(散会)

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