財務省VS日医

財務省前_2023年7月21日

 24年度予算編成の目玉の1つとなる診療報酬改定(含むトリプル改定)に向け、綱引きが始まっている。財務省は11月1日の財政制度等審議会財政制度分科会で、診療報酬本体の「マイナス改定が適当」との主張を展開。一方で、翌2日に日本医師会が急遽記者会見を開き「大幅なプラス改定が必要」と反論した。【本根優】

 「お前たちは休日返上で働いて儲けたからいいじゃないか、と言わんばかりの資料が出されたのは極めて残念」

 日医の松本吉郎会長は、診療報酬上の「コロナ特例」などで、医療機関の収支が急激に改善しているといった財務省の主張に対し、激しい言葉でまくし立てた。

 財務省は医療法人の事業報告書を基に、診療所の経常利益率が20~22年度で3.0%から8.8%に急増し、利益剰余金が2割程度増えたとのデータを示した。

 これに対し、松本会長は「コロナによる収入減が大きかった20年度をベースに比較すること自体がミスリード。この3年間はコロナによる変動が顕著で、コロナ特例による上振れ分が含まれている。一過性の収益を前提に、恒常的なフローを議論するのは極めて不適切」と訴えた。

 24年度改定での「診療所狙い撃ち」が鮮明な財務省の主張内容について、松本会長は「病院と診療所は役割分担の違いはあるが、患者が受ける治療は一連。特定の領域の賃上げは必要ないという主張は到底、受け入れがたい」と発言した。

 改定率が決まる12月中旬から下旬にかけて、両者の攻防は激化するとみられるが、自民党厚労族幹部は「官邸との距離感という意味では日医のほうが、分が悪い。厚労省はなかなか官邸にアプローチできない」とこぼす。

 岸田政権が減税を打ち出しても支持を落とし、なかなか浮上できないため、予算編成はかなりの混乱が予想される。そうした中では「より財務省の意向が重視されがち」(前述の厚労族幹部)だという。

 実際に端本秀夫主計官(厚生労働係、社会保障総括担当)のほかに、新川浩嗣主計局長、宇波弘貴大臣官房長といった、かつて社会保障予算を査定した主計官経験者が主要ポストを固める。その上、財務省は一松旬氏を首相秘書官として送り込んでいる。

 日医の反論の激しさも、裏を返せば「財務省ペース」で改定論議が動き出しているという証左であろう。

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