高校生が通学途中で交通事故に遭い、頭から血を流して倒れている。救急車を呼んで一刻も早く治療しなければ危険な状態──。厚生労働省が考える「急性期医療」の典型的な場面はこんなイメージでしょうか。では、特別養護老人ホームで80代の男性が食事中に誤嚥(ごえん)した場合はどうでしょう。【新井裕充】
誤嚥性肺炎について「厚生労働省e-ヘルスネット」を見ますと、「命にかかわるケースも少なくない病気」と書かれています。
誤嚥性肺炎は「寝ている間に少量の唾液や胃液などが気管に迷入して起こる」とされていますので、高齢者に限った病気ではないのですが、厚労省の会議では高齢者に多い疾患として問題になっています。高齢者の軽症・中等症の救急搬送が増加しており、その代表格として誤嚥性肺炎が挙げられています。
つまり、誤嚥性肺炎の場合は診療報酬の高い急性期病院に搬送せず、「ワンランク下の医療でいい」という考え方でしょうか。「介護施設の高齢者を救急病院に運ばないようにしよう」という方向で議論が進んでいます。ただ、フリーアクセスを制限すると何かと問題になりますので、急性期病院が受け入れないように誘導しようという作戦です。
〇厚労省保険局医療課・加藤琢真課長補佐
(前略)そもそもの看護必要度がどうあるべきものなのかということを原点に考えますと、やはり急性期らしい患者さんを高く評価するという観点からすると、当然、医療資源投入量が相対的に地域一般等に比べて高くない誤嚥性肺炎を必要度で満たす、簡単に満たしてしまっている状況というのは、概念上、あまり適切なのではないだろうというのが事務局としての考えではございます
ところで、来年度の診療報酬改定は介護報酬や障害報酬とのトリプル改定です。そのため、同時改定に向けた意見交換会が今年3月から5月にかけて3回開催されました。その中で、何度も話題に出ているのが高齢者救急の問題です。
4月19日の意見交換会(第2回)では「高齢者施設・障害者施設等における医療」がテーマになり、そこで中医協の小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)が次のように発言しました。厚労省の公式議事録では修文されていますので、録音データに基づき再現した内容を記します。
〇小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)
すいません、中医協の会長をしてる小塩なんですけど、普通は発言を控えるようにって言われてるんですが、今日は意見交換会ということですので、あえて個人的な意見を申し上げます。
既に多くの委員からご発言があったんですけど、高齢者施設と、それから医療機関の間で、平時から連携を密にするっていうのは非常に重要なことっていうことで、これはどのような立場に立っていらっしゃっても、皆さんご意見、同じだというふうに思います。
特に私が思うのは、高齢者施設から医療機関に移行するときにですね、現場で非常に多くの混乱が生じているということですね。とにかく救急車で運んで、急性期病院に行こうと。そういうふうな行動が一部見られます。これは必ずしも良くない。医療資源の使い方から見ても良くないですし、それから、ご本人とかご家族にとっても良くないことだろうと思うんですね。
ですから、その移行期に、できるだけ医療、お医者さんの助言、あるいは判断、あるいは場合によっては特定行為の看護師さんのご判断、アドバイスを施設で働いてる方々が、「非常に気軽に」って言ったらおかしいですけど、リアルタイムで簡単に受けられるような仕組みがあるっていうのは非常にいいんじゃないかなと思うんですね。
最近ではオンライン診療とか、あるいはコミュニケーション取り方でもオンラインを使ってやるということが一般化してますので、昔に比べると、そういう措置はかなり簡単になってんじゃないかなと思いますので、そういう点も注意しながら、それぞれの会議体で、診療報酬改定、次の同時報酬改定について議論を深めていきたいなというふうに思っております。以上です。
高齢者救急をどこで引き受けるのか。その後の会議でも話題になっています。8月10日に開かれた中医協の分科会で、牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)はこのように指摘しました。
実際に現場にいて感じてるのは、今、高齢者というのは独居であったり老老介護であったり、とにかく若い人がいない中で高齢者だけで生活をしているということが非常に増えてきてます。したがって、通常なかなか医療機関にかかることが難しい。まして、こういった肺炎、尿路感染という感染症で熱を出したときには、もう動けなくなってしまう。ですから、通常の外来受診ということはまずあり得ないということで、どうしても救急に頼るということになります。
この日の分科会では、詳細なDPCデータを踏まえて意見が交わされました。その一部を下記に掲載します。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
こんにちは。ただいまより令和5年度第5回診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催いたします。
本日の開催につきましては、対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。
また、今回の会議の公開については、YouTubeによるライブ配信で行うことといたしております。
まず、委員の出欠状況について、ご報告いたします。本日は田宮委員、林田委員、山本委員がご欠席と承っております。
それでは早速、議事に入らさせていただきます。まず1つ目の議題であります「急性期入院医療について(その2)」につきまして、事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。
1.急性期入院医療について(説明)
〇厚労省保険局医療課・加藤琢真課長補佐
はい。事務局でございます。本日もよろしくお願いいたします。
それでは2ページ目以降、「急性期入院医療(その2)」について、ご説明させていただきたいと思います。
(中略)
12ページ目以降、前回の宿題事項ではなく、その他のですね、一般の病棟における重症度、医療・看護必要度などについて、ご説明させていただきたいと思います。
13ページ目以降、前回の改定資料でございますが、
16ページ目。前回の中医協でもお出ししました病床の推移ということで、急性期一般1が令和2年以降、増加傾向であるというような傾向等をお示ししています。
18ページ目は、その中で看護補助者の従事者数というのが平成26年以降、減少しているということを再度お示ししています。
19ページ目、20ページ目は、こちらは救急搬送の高齢者における軽症・中等症の中でも、「症状・徴候・診断名不明確」という方が増えているというようなことをお示ししているもの。
21、22は三次救急、二次救急における件数の分布。
23ページ目は、医療計画における救急医療のイメージで、出口問題が発生しているというようなことを再度お示ししたものです。
24ページ目は、2040年までに向けてですね、今後、増加するのは75歳以上だということをお示ししたものでございます。
25、26に、これまでのいただいた意見。
中医協や同時改定の意見交換会でいただいた意見をお示ししています。
27ページ目以降、まずは重症度、医療・看護必要度の概要をお示ししておりますが、
その前に32ページ目をご覧いただきますと、平均在院日数の分布をまず、お示ししています。
かなりばらつきがございますが、多くの施設で施設基準の18日を下回っておりますが、
この右側をご覧いただきますと、届出病床別でですね、特に病床数が小さい所においては平均在院日数のばらつきが大きいということでございます。
33ページ目をご覧いただきますと、この平均在院日数と病床の利用率の分布をお示ししているところでございます。
34ページ目は、この急性期、特に1においては、必要度はもうⅡを用いている所は約9割ということでお示ししています。
35ページ目は、該当患者割合。
36ページ目以降、急性期の病棟種別ごと、そして200床未満200床以上で、この該当患者割合を比較しております。
必要度Ⅱのほうはですね、全体の傾向として基準未満割合が小さくなっているというような傾向が見てとれるかというふうに思います。
続きまして、40ページ目からは、こちら、A項目における各入院病棟ごとの該当患者割合でございます。
ご案内のとおり、「心電図モニターの管理」というものを前回廃止しておりまして、
それに相対するようなかたちで、この「薬剤3種類以上」というような分類が加わっておりますけども、
「点滴ライン同時3本以上」に代わって「薬剤3種類以上」というふうになっておりますが、
こちらの該当患者割合が令和3年に比べると大きい。大きくなっているというようなことでお示ししています。
その傾向が42ページ目までお示ししています。
今申し上げました点滴同時3本のところ、43ページ目に、どう改定したのかということで概要をおまとめしておりまして、
44ページ目に「専門的な治療・処置」の該当患者割合を詳細にお示ししていますが、いずれにおいても「ドレナージの管理」というのが一番多い該当処置ということになっております。
45ページ目以降、高齢者に多い疾患ということで今回、75歳以上に占める割合が多いものから順に並べさせていただきました。
1番目はコロナということでございますが、2番目に、いわゆる誤嚥性肺炎。
(3番目に)うっ血性心不全ということで、17番目までの疾患でおよそ30%を占めるというような傾向でございます。
そうした高齢者に多い疾患が46ページ目でお示ししてますが、
どの入院料の種別のところで入院されているかということで、全疾患で見ますと、55%が急性期1でございますが、
特に注目していただきたいのは2番、6番、8番などでございますが、
こういった高齢者の典型的な傷病に関しても急性期1で同じような割合で入院しているとともに、
括弧内が救急搬送で入院した割合になります。
こちら、誤嚥性肺炎は65.9%、尿路感染症57%など、こういった主要な高齢者の疾患の一部はですね、
こういった救急搬送の割合は非常に急性期1で高くなっているというような傾向でございます。
47ページ目をご覧いただきますと、こうした高齢者に多い疾患における入院料間におけるですね、医療資源投入量の比較をお示ししています。
急性期1と地域一般1・2、あるいは急性期2から6と比較してみて、ご覧いただいておりますけれども、
まず全疾患ですと、この地域一般1・2と急性期1を比較すると約2.4倍の医療資源投入量が急性期1には投入されているということでございますが、
この赤字でお示ししています誤嚥性肺炎、あるいは尿路感染症に関しては、1.24倍、あるいは1.4倍ということで、医療資源投入量はあまり、差が小さくなっているというようなことでございます。
48ページ目をご覧いただきますと、これ横軸が地域一般1・2と急性期1の比較。
縦軸が急性期2から6と急性期1の比較でございますが、
こちらにおいて、いずれにおいてもですね、左下のほうに誤嚥性肺炎、尿路感染症というのは集約してきていて、
急性期1とそれ以外の急性期、あるいは地域一般の病棟と医療資源投入量の差が小さいというような傾向でございます。
そして、49ページ目をご覧いただきたいのは、今申し上げたような高齢者に多い疾患に関して、
特に誤嚥性肺炎、尿路感染症に関して言うと、この点線の所がですね、急性期1における必要度の基準でございます。
25から28%ということでお示ししていますが、こちらを、基準をですね、超えてくる患者の割合が比較的多いというようなことが見てとれるかと思います。
そういった誤嚥性肺炎や尿路感染症に関して、50ページ目においては、
基準1・2・3のうち、1で満たしてる患者が多いというようなことをお示ししています。
51ページ目からは入院後日数ごとでですね、必要度の該当割合をお示ししておりますが、
まず全般。51ページ目は、急性期一般におけるですね、入院後日数ごとの必要度基準該当割合、左側をご覧いただきまして、右側がA項目でございます。
いずれにおいても、入院5日後まではですね、該当患者割合が一定、いるものの、6日目で大きく低下し、その後フラットだというような傾向が強いということかと思います。
52ページ目をご覧いただきますと、その中でのA項目の該当割合と、そして一番該当割合が高くなる入院2日目を見ています。
A項目、どういうもので該当しているのかということでございますが、
特に入院2日目。右側ご覧いただきますと、右側の一番下、救急搬送後の入院ということで、
特に誤嚥性肺炎、尿路感染症、腰椎骨折等での該当割合が非常に高くなっているというようなことが見てとれるかというふうに思います。
53ページ目をご覧いただきますと、こちら、急性期1の全疾患の年齢と、急性期1の75歳以上の入院後の日数の各項目該当割合ということでございます。
こちらもですね、いずれかの基準、該当しているというものと、救急搬送後の入院というものがかなり相関していることが大きく見てとれるかと思いますが、
54ページ目に、ご覧いただきたいのは誤嚥性肺炎、尿路感染症、腰椎骨折に関しては、かなり強い相関が、この必要度の該当している患者と、救急搬送での得点がかなり相関しているということは見てとれるかと思います。
55ページ目は、その入院料間における比較でございまして、「急1」あるいは、そのほかの医療機関、ほかの「急性期2─3」、「4─6」でですね、比較しておりますが、
右下、ご覧いただきますと、入院2日目における救急搬送後の入院のところでは、「急性期1・75歳以上」、赤のバーでございますが、そういった患者さんが該当している割合が高くなっているというのが見てとれるかと思います。
同様の傾向を56ページ目、57ページ目で、各疾患ごとでお示ししています。
58ページ目。「課題と論点」をまとめさせていただいておりますが、「論点」としましては、
高齢者の軽症・中等症の救急搬送が増加する中で、
特に急性期病棟における
集中的な急性期医療を必要とする患者への対応に対する適切な評価
及び機能分化の推進の観点から、
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度等について
どのように考えるか。
ということで、論点をご用意させていただきました。説明は以上になります。
2.急性期入院医療について(質疑)
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい。どうもありがとうございました。それでは、この議題につきまして前回の議論におけるご指摘も踏まえ、スライドで言いますと、58枚目までにつきまして、ご意見、ご質問等を承りたいと思います。いかがでしょうか。じゃ、鳥海委員、どうぞ。
〇鳥海弥寿雄委員(東京慈恵会医科大学医療保険指導室室長)
(前略)19ページの高齢者の救急でございますけれども、軽症・中等症が多いということはですね、おそらく、その高齢者が受診しにくい何か背景があるんじゃないかなと思うんです。中等症とか軽症でも病院に行きにくい背景があるんじゃないかなと思うんです。
ですから、受診された方々が、例えば独居なのかとか、その家族がいてサポートができるのかとかですね。
一律に高齢者でっていうと、なんかその受診できない理由を何か考えなきゃいけないかなっていうことで、家族性の問題とか、それから地域性ですね、都市とか、それから非常に田舎なのかというようなところをですね、もう少し見たらどうかなという思いがいたしました。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。事務局からのコメントはまた後ほどまとめて行いたいと思います。はい、牧野委員、どうぞ。
〇牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)
はい、ありがとうございます。まず私は今、鳥海委員がおっしゃった高齢者の誤嚥性肺炎とか尿路感染、こういったものが救急に行くということの背景ということ。
実際に現場にいて感じてるのは、今、高齢者というのは独居であったり老老介護であったり、とにかく若い人がいない中で高齢者だけで生活をしているということが非常に増えてきてます。
したがって、通常なかなか医療機関にかかることが難しい。まして、こういった肺炎、尿路感染という感染症で熱を出したときには、もう動けなくなってしまう。
ですから、通常の外来受診ということはまずあり得ないということで、どうしても救急に頼るということになります。
ですから、今後、こういった救急利用というのはますます増えるだろうということは当然、予測されます。
ですから、これをどこで診るのか。三次救急で診るのか二次救急で診るのか地ケアで診るのか。そういったこと。この議論は非常に重要になってくると思います。
その議論の中で、今日出していただいたデータというのは、高度急性期の病院で診たとしても、そうでない所で診たとしても医療資源の投入量はそれほど大きく変わらないというようなデータも示していただいたんだと思います。
確かに、がんの治療のように手術をしたりだとか、高い薬を使ったりだとか、そういったものと訳が違いますので、感染の治療、抗生剤とかうまく使えば回復できると。
ですから、必ずしも高度急性期の病院である必要はないわけですけども、そうであれば、逆に地ケアにしろ入院料2以下の病院であっても、受け入れやすい診療報酬というのが付いてくれば受けていただけると。
そういったことが見えてくるのかなというふうに思っております。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。猪口委員、どうぞ。
〇猪口雄二委員(日本医師会副会長)
(前略)先ほどから出ている高齢者の救急の問題ですけども、高齢者の救急ってのは、要は、今の起きたこと、骨折にせよ肺炎にせよですね、それよりも前の状態がどうだったかということが非常に大きく関与します。
それによってですね、治療方法が変わったりすることも当然あるでしょう。
例えば、年齢の問題にしてもですね、要介護の問題にしても、そういうこともあるし、中には集中的な治療が必要になるということもありますし、そうではないということもあると。
そうすると、どこに入院するかってのは非常にこの多面的な面から考えていかなきゃいけなくて、一概に、「急性期よりも地ケア」っていう話ではやっぱりないだろうと思います。
ただ、その急性期に行ったとしてもですね、必要な治療が終わったら1日も早く後方転送すると。
そこに誘導を導くような方法を考えることによって、かなりこの問題は解決されるんではないかなというふうに思います。以上です。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。それでは秋山委員、津留委員の順番でお願いします。秋山委員、どうぞ。
〇秋山智弥委員(日看協の前副会長、名古屋大医学部附属病院教授)
はい、ありがとうございます。私からも3点ほど意見でございます。
(中略)
3点目。先ほどからも話題になっております高齢者の救急搬送でございますけれども。
必要度Ⅰの救急搬送後の入院、そして必要度Ⅱの緊急入院を要する状態の項目については現在、単独2点という高い得点が5日間カウントできるという、そういう評価票になっていますので、
もともと介護を要する高齢者の場合、当然、B得点が高くて5日間はほぼ自動的にA得点2点かつB得点3点以上の基準があてはまってしまうということだと思います。
ですので、この項目について、2点から1点に減点するか、もしくはカウント期間を5日間から短縮するのか。
あるいはまた、最初2日間は2点。その後3日間は1点といったようなかたちで、期間に応じて特定に傾斜をつけるのか、何がしかの見直しが必要ではないかというふうに考えております。
と言いましても、高齢者の誤嚥性肺炎、それから尿路感染、腰椎圧迫骨折等においては医療資源投入量にやっぱり差がないという結果に照らして考えれば、
医療の必要度という点からは必ずしも急性期病棟でなくてもよいのかもしれませんけれども、
実際、看護の必要度という点からしますと、急性期病棟なみに集中的に看護の手をかけないと早期回復が難しい患者だということも確かだと思いますので、
急性期病棟に代わって、こうした高齢患者の受け皿となる病棟においても高い看護師配置が必要。
特に夜間のですね、手厚い看護配置がないと受けきれないのではないかというふうに思います。以上でございます。
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。それでは津留委員、どうぞ。
〇津留英智委員(全日本病院協会常任理事)
はい、ありがとうございます。今回、高齢者救急における、特に誤嚥性肺炎、尿路感染症について、資料、多方面から分析いただきまして、ありがとうございました。
私のほうからは2点、要望と意見を述べさせていただきたいと思います。
今回の資料では、令和4年の1月から12月のDPCデータを用いて、75歳以上では誤嚥性肺炎、尿路感染が多かったということはわかりました。
ただ、45ページから47ページあたりを見ますと、一番多かったのはコロナ感染症となってまして、
この時期、令和4年1月、12月は急性期一般1でもゾーニングをきちっと分けて、一般の患者はある程度制限して対応していた。
もしくは、院内でクラスターが発生してしまって、最もその中で医療資源投入量が多くなる疾病として新型コロナを選択したということかなと。
新型コロナの場合、出来高算定で加算も取れるというような、いろんな事情があったかと思います。
ということは、つまり、このコロナの中に、ほかの疾病が数多く含まれているんではないかということがちょっと懸念されるとこです。
さまざまに、その新型コロナの影響を受けているデータであるという認識も重要じゃないかなというふうに思いまして。
このデータを基にこれ、必要度の評価の見直しを今、検討しようとしてるとこですけども、それで大丈夫なのかなと。
コロナの影響を受ける前の2019年の、例えば1月から12月のDPCのデータとかとの、ちょっと、比較も見たほうがいいんではないかと思いましたので、これはちょっと要望したいと思います。
(中略)
〇尾形裕也分科会長(九州大学名誉教授)
はい、ありがとうございました。それでは中野委員、どうぞ。
〇中野惠委員(健康保険組合連合会参与)
(前略)45から49ページにかけてでございますが、誤嚥性肺炎、あと大腿骨頸部骨折、尿路感染症など高齢者に多い疾患で、
急性期一般入院1に入院する際には救急搬送されるケースが多いわけですけども、
医療資源投入量がほかに比べると、急性期一般1と地域一般入院料1・2で、それほど大きな差がないということが示されております。
これらの疾患は、必ずしも、これを見ますと、急性期一般1で診る必要がないのかどうかということ。地域包括ケア病棟を積極的に活用すべきとか、ということなのだと思いますけども、このあたりも改めて検討すべきだと思います。
それから、50ページでございますけれども、誤嚥性肺炎、それから尿路感染症、あるいは頚部骨折、胸椎圧迫骨折ですかね、におきまして、B得点で3点以上の該当割合がほかと比較して高いと。
必要度の基準、これは必要度の基準を満たしやすくなっているのでないかということを考えさせるデータだと思いますので、
急性期一般入院料1については、B項目が果たしてどれだけ馴染んでるものかということを改めて再度検討すべきではないかという感じもしております。以上でございます。
(後略)
3.記者ブリーフィング
〇厚労省保険局医療課・加藤琢真課長補佐
事務局でございます。お疲れ様です。聞こえますでしょうか。ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします。
本日、入外分科会ということで、4つのテーマについて、ご議論いただきました。
1つ目は急性期の入院医療ということで、急性期充実体制加算を中心とした前回議論の指摘に関しまして、
600床以上で急性期充実体制加算を届け出ていない医療機関の分析と、
300床未満の病床あたりの要件で満たしている所に関して6医療機関があって、いずれの医療機関も二次医療圏でほかにも急性期充実体制加算があるというような傾向をお示しさせていただきました。
急性期のほかのものに関しては、平均在院日数の、病床規模が小さいことにおけるばらつき。
必要度に関しては、高齢者の急性期医療に関して言うと、救急搬送後の「2点5日間」というのが相当効いていて、誤嚥性肺炎だとか尿路感染でも満たしてしまっているよと。
これも医療資源投入量で見ると、あまり医療資源投入量、ほかに比べると高くないにもかかわらず満たしているのは、これはどう考えるのかということで、ご議論いただきました。
ここまでで、まず急性期入院医療について、ご質問あれば、お願いいたします。
急性期について、「高齢の誤嚥性肺炎患者等を救急搬送でうけると、A2点が自動的に5日間カウントされ、B項目もクリアしやすいので、必要度が高くなってしまう」という問題点があぶり出されたかと思います。逆に言えば看護必要度が「高齢の誤嚥性肺炎患者を、急性期一般1に救急搬送する不適切なインセンティブになってしまっている」と言えるかと感じました。委員からも同様の指摘が出たかと思いますが、このあたりの改善(看護必要度見直し)を検討していくイメージでしょうか?
今日の議論においてはですね、必ずしも誤嚥性肺炎、全て急性期1で受けちゃ駄目というわけではないだろうというご指摘もいただいたかとは思いますけれども。
そもそもの看護必要度がどうあるべきものなのかということを原点に考えますと、やはり急性期らしい患者さんを高く評価するという観点からすると、当然、医療資源投入量が相対的に地域一般等に比べて高くない誤嚥性肺炎を必要度で満たす、簡単に満たしてしまっている状況というのは、概念上、あまり適切なのではないだろうというのが事務局としての考えではございますが、
さまざま、ご議論あるかと思いますので、そういったものを踏まえて、今後、検討していきたいというふうに思っております。
11P。急性期充実体制加算について、300床未満の特例的な施設基準はなくてもいいようにも思いますが、いかがでしょうか。
そのようなご意見が多かったというふうに思っております。
この急性期充実体制加算の地域医療提供体制における位置づけという意味では、診療報酬という観点では地域医療構想とは寄り添うというような関係性になっておりますが、
集約化というような観点も当然、加味することを考えれば、この300床未満の特例的な水準というものは、その存在意義については今回の資料では問われたとこだというふうに思っておりますので、ご指摘のとおりかというふうに事務局として考えております。
40P。心電図で落ちた分を注射薬剤3種類以上の管理でうまく取り返しているように見えなくもありません。改定で基準を変えた影響もあるのでしょうが、どのように受け止められていますか。
40ページ目。「心電図で落ちた分を注射薬剤3種類以上の管理でうまく取り返しているように見えなくもありません」と言うか、たぶん取り返しているんだと思いますが、
「改定で基準を変えた影響もあるのでしょうが、どのように受け止められていますか」ということでございます。
これは前回改定のときのシミュレーションにおいても、もう既に薬剤3種類以上の管理で一定、取り返す部分もあるだろうということでシミュレーションされていた部分もありますので、想定外というわけではないかとは思いますけれども、
今回、その基準を変えたところに関して、どのように考えるのかというところは、これはあるかと思いますので、これについては引き続き検討する必要があるのかなと。
「適切な基準であるか」ということは、引き続き見ていく必要があるかなあというふうには捉えています。
50P。急性期の医療が必要な患者の割合を基準として定めるという趣旨からすれば、B項目で救われるのは望ましくないように思います。同様に救急搬送されたからA項目2点というのも望ましくないように思います。いかがでしょうか。
ご指摘の側面は当然あるというふうに事務局としても考えておりますので、今回のご議論の中でも、そのようなご意見、多数あったというふうに捉えております。B項目については特にですね。
A項目2点の、救急搬送後に2点5日間というのは、これに関しても今回のデータから適切とはいえないのではないかというような投げかけになっていたと思いますので、
そういう観点で、さまざま、ご意見いただいた上でですね、また事務局としても、そういう観点から検討を進めていきたいというふうに思っております。非常に鋭いご指摘、ご意見ありがとうございます。
それでは、ひとまず急性期1に関しては、これでよろしかったでしょうか。
それでは、高度急性期入院医療(その1)ということで59ページ目以降、簡単にポイントだけかいつまんで、ご説明させていただきたいと思います。
(後略)
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