「まったくもって支離滅裂な提案だ。コロナに悪乗りしている」。奈良県の医師会関係者が憤慨する。新型コロナウイルスの感染拡大で、医療機関の減収に歯止めが掛からない。そんな医療機関を支援しようと、奈良県の荒井正吾知事が「地域別診療報酬」の活用をぶち上げた。【本根 優】
08年施行の「高齢者医療確保法」に位置付けられた特例的な仕組みを、コロナ禍に活用しようというプランだ。荒井知事は7月19日の全国知事会で意見表明しつつ、加藤勝信厚生労働相にも「8月中に意見具申する」と伝達済みだ。
全国一律で1点10円の診療報酬を「1点11円」にしようというのだから、実現すれば、診療報酬改定など行わなくても、奈良県内の医療機関だけは一気に10%の増収となる。
しかし、実現には幾多のハードルがある。県医師会などもメンバーに入っている「保険者協議会」の議論を踏まえる必要があり、かつ地域別診療報酬は「厚労相」の発案で稼働するスキームだ。患者負担が増えるという懸念材料もある。
ところで、なぜ診療報酬アップに地元医師会が反対なのか。恐れているのは「コロナ禍では『引き上げ』でも、平時の医療費適正化では『引き下げ』とされてしまう」ことだ。