医政という言葉は、厚生労働省が用いるケースと、医師会が用いるケースで全く意味が異なる。もっぱら厚労省は「局」と結び付けて使い、医師会は「活動」として捉えている。両者の違いを見ていきたい。【本根優】
厚労省が医政局の所掌内容として示しているのは、以下のようなものだ。
「近年の高齢化、疾病構造の変化、医療の質を求める国民の声の高まりなどに応え、良質で効率的な医療提供体制の実現に向けた政策の企画立案を行う」
01年の省庁再編で厚生省と労働省を統合再編して厚労省が発足。その際に、健康政策局が医政局に変わり、20年余りが経過している。
他方で、医師会が「医政活動」と言うときには、政策立案という文脈では用いない。
端的に表現すれば「医療現場の主張や要望を政治の場に届けること」という意味で使われている。医師会関連の会合では「医政なくして医療なし」というスローガンが頻繁に登場する。医政活動を成就させるためには、医師の代表か、医療に理解のある代理人を政治の場に送り出す必要があるとも言われる。
それが、政治団体の「日本医師連盟」が抱える組織内候補であり、当選をすれば参院議員ということになる。現在で言えば、自民党の羽生田俊氏と自見英子氏の2人だ。医師会活動と医師連盟活動は「車の両輪」に例えられることもある。
そんな中、3月26日の日医臨時代議員会では、組織強化の一環として、常任理事を4人増員する定款などの改正案が賛成多数で承認された。
松本吉郎会長は「腹案としては4人を4つの地区に振り分けて、1人あたり12都道府県を担当して会員増員と医政活動をやってもらいたい」と明言した。
これはつまり、松本会長が現在の日医のウイークポイントは「医政活動」と捉えているとも考えられる。
常任理事の業務量増も、もちろん背景にあるだろうが、こうした発想自体、少なくとも、安倍晋三首相(当時)と蜜月を築き、4期8年を務めた横倉義武会長時代には存在しなかったことだ。
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