「植松、原中、中川型ではなく、唐澤、横倉型の会長」
こう分析するのは、厚生労働省の元幹部だ。6月25日に就任した日本医師会の松本吉郎会長の言動に対して、類型化して論じている。【本根優】
どういうことか。植松治雄(大阪)、原中勝征(茨城)、中川俊男(北海道)の3人は、あえて与党・自民党(原中氏の時代は野党)から距離を置くことでリーダーシップを発揮しようとした。だが結果的に、1期2年で、その座を追われた。
これに対し、唐澤祥人氏(東京)、横倉義武氏(福岡)は、対決姿勢を示さず、あからさまに自民党に擦り寄った。振り返れば、唐澤氏は2期4年、横倉氏は4期8年、日医会長の座にとどまったことになる。
松本氏の考えは「後者」に近く、会務運営については「名誉会長の横倉さんに適宜アドバイスをもらい、『安全運転』に徹している」(日医幹部)という。
定例記者会見での対応を見ても、松本氏の振る舞いは、中川氏と大きく異なる。
例えば、新型コロナウイルス対策に関する質問が出た場合、持論やスタンスを積極的に発信した中川氏に対し、松本氏は、これを良しとしていない。
一般紙などから「会長ご自身の意見は?」といった質問が頻繁に飛ぶが、松本氏は「申し訳ないが、私の個人的な意見は申し述べられない」と、遮っている。さらに「詳しい説明は、釜萢常任(理事)から」などと、担当にマイクを預ける。
中川氏も同様の手法を取る場面があった。だが、質疑応答の場面では、中川氏への質問が繰り返され、中川氏はそれに応じていた。
一方で、松本氏の場合には、松本氏よりも釜萢氏への質問が続く。そのこと自体が、会長発言で揚げ足を取られないためのリスクヘッジになっている。
松本氏は、政権とは「普段からのコミュニケーションが大事」と協調路線を敷く。会務運営ではボトムアップ型を志向する。これは前執行部が「中川氏(と一部の日医総研幹部)が何でも決めている」と批判を浴びたことへの反省からだ。