厚生労働省は7月29日、今年最初となる「医療介護総合確保促進会議」の第16回会合をオンライン形式で開催し、「総合確保方針の次期改定に向けた主な論点」を示した。【新井裕充】
この会議は、地域医療介護総合確保基金の執行状況などを報告するため、毎年1~2回のペースで開かれている。医政局と老健局の協力を得て保険局が開催する会議で、医療・介護に関わる団体の代表者らで構成されている。
厚労省は同日の会合で、平成26年から令和2年度の執行状況や令和3年度の交付状況などを報告した後、「総合確保方針の次期改定に向けた主な論点」と題する資料を提示。その中で、「今後のスケジュール(案)」を示した。
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厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長は説明の中で、「総合確保方針は医療計画と介護保険事業計画のいわば上位に位置する概念」とした上で、「6年1期の医療計画と3年1期の介護保険事業計画が2024年度に同時改定。さらに2024年度は診療報酬と介護報酬の同時改定の年でもある」と伝えた。
その上で、水谷課長は「第8次の医療計画、第9期の介護保険事業計画は2025年をまたぐものとなるので、こうした姿を念頭に置きながら、2040年を見据えた医療・介護提供体制のあり方について議論を深めていただいてはどうか」と論点を示した。
論点は、①人口構造の変化への対応、②「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築、③サービス提供人材の確保と働き方改革、④デジタル化・データヘルスの推進、⑤地域共生社会づくり──の5項目となっている。
水谷課長の説明は以下のとおり。
〇田中滋座長(埼玉県立大学理事長)
「議題2」に移ります。「議題2」の総合確保方針の次期改正に向けた主な論点について資料の説明をお願いします。
〇厚労省保険局医療介護連携政策課・水谷忠由課長
はい。医療介護連携政策課長でございます。資料2「総合確保方針の次期改定に向けた主な論点」という資料に沿って、ご説明申し上げます。
2ページ、お開きいただけますでしょうか。
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これは現行の総合確保方針の概要を示した資料でございます。
医療介護総合確保法に基づきまして平成26年、この総合確保方針が策定をされまして、平成28年12月に一部改正をされてございます。
青で書いてございます。
26年9月に策定をされたこの「総合確保方針の意義・基本的方向」という所でございますが、
「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年に向け、利用者の視点に立って切れ目のない医療・介護の提供体制を構築する。
あるいは、自立と尊厳を支えるケアを実現する。
こうした意義のもと、基本的方向といたしまして、
・効率的で質の高い医療提供体制の構築と地域包括ケアシステムの構築
・地域の創意工夫を生かせる仕組み
・質の高い医療・介護人材の確保と多職種連携の推進、それから、
・限りある資源の効率的かつ効果的な活用
・情報通信技術(ICT)の活用
こうしたことが記載をされてございます。
また、平成28年12月に一部改正が行われました。
そこでは、医療計画と介護保険事業計画の整合性。
この基本方針は、法律におきましても医療計画の基本方針、それから介護保険事業計画の基本指針、こうしたものの基本となるべき事項を定めるというふうになっておりますので、いわば、これらの上位に位置する概念ということでございます。
そうしたものにおきまして、医療計画と介護保険事業計画の整合性を図る観点からの記述を追加したり、
あるいは、在宅医療・介護連携推進事業、こうした市町村が行う事業について都道府県が広域的な観点から支援の確保をする、そうしたことを明記をしたり、
医療・介護両分野に精通した人材の確保、住宅政策との連携、こうしたことが追記をされたところでございます。
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今回、総合確保方針の見直しをご議論いただくにあたって、私ども事務局のほうで、3ページ以降、この28年12月以降の医療・介護における主な制度改正についてまとめた資料を準備をさせていただきました。
大きく4つの領域。
①医療提供体制
②地域包括ケアシステム
③人材確保・働き方改革
④デジタル化・データヘルス改革
こうした領域に沿って整理をいたしてございます。
3ページは医療提供体制ということでございますが、病床機能の分化・連携に向けまして、全ての都道府県において地域医療構想が策定され、取組が開始されている。
また、医療法の改正によりまして、医療計画に新興感染症等への対応に関する事項を追加するということが決められたり、
「外来機能報告制度」の創設がなされたりしてございます。
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4ページでございますが、地域包括ケアシステムの関係では、医療・介護の一体的提供・連携のため、介護医療院が創設され、
また、全国で在宅医療・介護連携推進事業が実施、開始され、また見直しされてございます。
また、少し大きな視点からでは、その地域共生社会の理念、こうしたものが社会福祉法、あるいは介護保険事業計画の基本指針に規定をされ、
また、認知症施策推進大綱の策定、
それから、重層的支援体制整備事業として属性や世代を問わない相談等の体制づくり、こうしたものも進められてございます。
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5ページは人材確保、働き方改革ということで、医療の関係では、
・医療従事者の専門性の発揮、働き方改革のための医療関係職種のタスクシフト、シェア、
・時間外・休日労働の上限規制の実施に向けた動き、
こうしたものがございます。
介護人材の確保という観点では、
・介護報酬の加算等による処遇改善
・ICT・ロボットの活用等による職員の負担軽減等
が実施をされてございます。
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それから6ページ、デジタル化・データヘルス改革につきましては、
マイナンバーカードの保険証利用、医療機関間での情報共有の基盤となる「オンライン資格確認」が昨年10月から本格運用されてございます。
また、ビッグデータの活用という意味におきましてはNDB、ナショナルデータベース、介護データベース、こうしたものの活用が進められている、そうした状況でございます。
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7ページの資料は昨年10月、この総合確保促進会議におきまして、この総合確保方針の見直しについて、ご議論をいただいた際の資料でございます。
2つ目の丸をご覧いただきますと、令和6年度、2024年度から第8次の医療計画、第9期の介護保険事業計画、これらが同時改定されるということでございます。
それぞれの計画の基本方針、基本指針の改定に向けまして、今、関係する審議会等でご議論が行われております。
こうしたものを見据えまして、3つ目の丸でございますが、
これらの議論の進捗状況を踏まえつつ、本年末を目途に、総合確保方針の改定を取りまとめる。
そうしたことを目指して、ご議論をいただくこととしてはどうかということで、論点といたしまして、その当時、下に書いてあります3つ。
足下の感染症対策はもちろんのこと、人口動態の変化への対応など、より長期的な事項について検討すべき。
それから、「地域包括ケアシステム」の構築。
それから、デジタル化による医療・介護の情報連携の強化。
こうした切り口でご議論をいただいたところでございます。
今回、もう少しブレイクダウンしたかたちで事務局から論点をご提示させていただいて、ご議論いただければというふうに考えてございます。
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8ページ以降でございます。
論点を大きく5つ、お示しをさせていただいた上で、ご議論いただければと思っております。
1つ目が「人口構造の変化への対応」としてございます。
1つ目の丸でございますが、冒頭、申し上げた通り、この総合確保方針、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年、こうしたものを1つ念頭に置いて議論してまいったわけでございますが、
先ほど申し上げた第8次の医療計画、それから第9期の介護保険事業計画、これらは2025年をまたぐ計画となります。
そうすると、その先ということで1つ、この2040年ということに目を向けますと、
高齢者人口、これはその増加は緩やかになる一方で、既に減少に転じている生産年齢人口、これの減少が加速するということが1つ特徴かと考えてございます。
また、2つ目の丸でございますが、高齢者人口のほうにつきましては、特に要介護認定率や1人当たり介護給付費が急増する85歳以上人口、これが2025年まで75歳以上人口を上回る勢いで増加をし、2035年ごろまで一貫して増加をするということ。
一方で、それを地域別の状況、都道府県や2次医療圏単位で見ますと、65歳以上人口が増加する地域だけでなく減少する地域もございます。
また、入院・外来・在宅、それぞれの医療需要、ピークを迎える見込みの年は地域ごとに大きくなるという状況でございます。
このように、生産年齢人口が減少していく中で、急激に高齢化が進行する地域もあれば高齢化がピークを超える時期もある。
まさに人口構成、それに伴う医療・介護需要の動向は地域ごとに異なります。
こうした地域の実情に応じた医療・介護提供体制の確保を図っていくことが重要ではないかということを1つ目の切り口としてお示しをさせていただきました。
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次のページ、2つ目。「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築という所でございます。
先ほど、28年12月以降の動きを振り返ってまいりましたが、
医療機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築、こうしたことで取組を進めてまいりましたが、
今般のコロナ対応におきまして、地域における医療・介護の提供に係るさまざまな課題が浮き彫りになったということも事実かと存じます。
こうした課題にも対応できるよう、平時からこの機能分化と連携を一層重視して、国民目線で提供体制の改革を進めるということ。
そうした上で、新興感染症等が発生した際にも提供体制を迅速かつ柔軟に切り替えることができるような体制の確保、こうしたことを視点としてお示しをしてございます。
3つ目の丸は医療の関係でございますが、入院医療につきましては、この地域医療構想、2025年に向けて推進をしているところでございますが、
その先、2040年に向けて、さらに機能分化・連携を進めていくということ。
それから、外来・在宅につきましては、外来機能報告制度を踏まえた紹介受診重点医療機関の明確化が図られるとともに、
骨太方針にも盛り込まれております、かかりつけ医機能が発揮される制度整備、こうした方向性をお示しをしてございます。
地域包括ケアシステムにつきましては、その「更なる深化・推進」ということをキーワードに、介護保険部会等でもご議論が行われてございます。
・介護サービスの基盤整備
・住まいと生活の一体的な支援
・医療と介護の連携強化
・認知症施策の推進
・介護予防の充実
こうしたことを切り口としてお示しをさせてございます。
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続きまして「サービス提供人材の確保と働き方改革」、論点の3つ目でございます。
これは質の高い医療・介護人材を確保するということになるわけですが、2040年までを視野に入れますと、生産年齢人口が急減するということがございますので、
まさにサービスの質を確保しつつ、職員の負担軽減が図られた医療・介護の現場を実現していく、そうした視点が重要ではないかと考えてございます。
2つ目の丸でございますが、医師等の働き方改革、2024年4月から時間外・休日労働の上限規制の適用、そうした中で、各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の整備、タスクシフト、シェア、チーム医療、こうした視点をお示しさせていただいてございます。
介護の関係では、処遇改善の取組、またこれに加えまして、ICT・介護ロボット、介護助手等の活用により、介護現場の生産性向上の取組を推進する中で、勤務環境の改善、必要な人材の確保につなげていく、そうした切り口をお示しをしてございます。
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それから、11ページ、論点の4つ目でございます。
オンライン資格確認等システムにつきまして、今、昨年10月から本格運用が開始をされてございますが、2つ目の丸でございます。
このネットワークを拡充して、「全国医療情報プラットフォーム」を創設する、こうした方向が今年の骨太方針にも盛り込まれてございます。
現在、オンライン資格確認等システム上では、レセプト・特定健診等情報の中から一部が共有されることになっておりますが、
そのほかに、予防接種、電子処方箋、自治体検診、電子カルテ、こうした医療・介護を含めた全般にわたる情報について共有・交換できる。
そうしたデジタル基盤。こうしたものを活用しまして、3つ目の丸でございます。
医療機関・介護事業所間で共有・活用していく。こうした視点をお示しをさせていただいてございます。
4つ目の丸はビッグデータの活用ということでございます。
NDB、介護DB等のこうした公的データベース、さらに、それを連結解析する。
こうしたことを通じまして、客観的なデータに基づいてニーズ分析、将来見通し等を行っていくことが重要ではないかとしてございます。
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12ページにお進みいただきまして論点の5つ目、「地域共生社会」づくりということで、
孤独・孤立、生活困窮、さまざまな問題がある中で、地域社会とつながりながら安心して生活を送ることができるよう、地域共生社会を目指していく。
医療・介護提供体制の確保ということにつきましても、こうした文脈の中に位置づけていくことが重要ではないかとしてございます。
そして、最後に赤字で書いてございますが、今、私が申し上げてまいりました①から⑤までの論点も踏まえまして、
2040年を見据えた医療・介護提供体制の在り方について議論を深めていただいてはどうかというふうに考えてございます。
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最後、13ページに大きな年表というか、スケジュールが書いてございます。
真ん中に医療計画と介護保険事業計画、書いてございますが、医療計画は6年1期、介護保険事業計画は3年1期でございますが、
ご覧いただきますとおり、2024年度に同時改定ということでございます。
これについての都道府県等での策定作業は2023年度に行われることとなり、
そのための基本方針、基本指針の策定に向けて今、関係審議会等で議論が行われている状況であります。
先ほど申し上げたとおり、医療介護総合確保方針はこれらのいわば上位に位置する概念でございますので、この総合確保促進会議でご議論いただいて、年内に改定について取りまとめいただければというふうに考えてございます。
また、2024年度というのは一番下にございます診療報酬と介護報酬の同時改定の年でもあるということです。
そうした中、これまで、この総合確保方針では、赤点線で書いております2025年、こうしたものを1つ念頭に置きながら記述がなされているわけでございますが、
今回の第8次の医療計画、第9期の介護保険事業計画は2025年をまたぐものとなりますので、
右のほうに「2040」ということで、赤点線を置いてございます。
こうした姿を念頭に置きながら、この総合確保方針の見直しについて、ご議論いただければ、そのように考えているところでございます。
駆け足でございますが、説明は以上でございます。よろしくお願いします。
〇田中滋座長(埼玉県立大学理事長)
ありがとうございました。総合確保方針の次期改正に向けた主な論点について説明を伺いました。
総合確保方針の改定に向けて取り組むべき視点として、論点の①から⑤についてご議論いただきます。
あわせて、資料にも示されていたように、2040年までを見据えて議論を深めるべきではないかという提案もありましたので、これについてもお願いいたします。では河本構成員、どうぞ。お願いします。
(以下略)