増やす予算と削る予算──。そうした方向性は決まっているが、果たして防衛費と社会保障費に相関関係があるのか。関係者が23年度予算の行方を固唾を飲んで見守る中、その関わりを明確に語った自民党幹部がいる。【本根優】
それが自民党の宮澤洋一税調会長だ。宮澤氏は7月24日のBSテレ東の番組で、防衛費の国内総生産(GDP)比2%への拡充に向けた財源について「打ち出の小槌はない。本当に防衛費がそこまで必要であれば、社会保障の水準を少し切り下げてもいいのかどうかは、当然しなければいけない話」との認識を示した。
宮澤氏周辺の解説では「社会保障カットの議論を望んでいるわけでなく、防衛費増の流れをけん制した発言」とのことだ。
一方で、社会保障に使途が限定されている消費税を防衛費に充当することも考えられるのか。宮澤氏はこんな話をした。
「なるべく防衛費で(消費税に)手を付けたくないのが正直なところだ」
宮澤氏は故宮澤喜一首相の甥っ子で、岸田文雄首相のいとこに当たる。財政再建派で知られ、岸田首相からの信頼も厚い。
政府7月29日、23年度予算の概算要求基準(シーリング)を閣議了解した。岸田カラーを鮮明にするため、「新しい資本主義」関連など重要施策に向けて、4.4兆円規模の特別枠を設けた。
また防衛、脱炭素、物価高対策などの要求には上限を設けない。防衛費に関しては「中期防衛力方針計画」の改定議論と並行して検討することになっている。
一方で、高齢化などに伴う社会保障費の自然増は5600億円となった。新型コロナウイルス禍での受診控えなどで医療費の伸びが低くなる影響が大きい。
22年度予算では、概算要求段階の自然増6600億円から2200億円削減したうち、その7割超の1553億円を薬価の引き下げが占めた。23年度に2度目の薬価・中間年改定(毎年改定)が控える中、防衛費増との絡みもあり、製薬業界からは「薬価引き下げ財源が当てにされるのではなきか」と警戒する声が漏れる。