ドラッグ・ラグ解消と革新的な新薬の創出という2つの性格を併せ持つ「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」。2010年度から試行的導入が始まり、18年度に制度化された。しかし、ここへ来て、それ自体インセンティブとして機能しているのか、疑義が生じる事態となっている。【本根優】
厚生労働省は3月4日、22年度の診療報酬改定・薬価基準改定に関する官報告示を行った。その中で、示されたのが、新薬創出加算の“逆転現象”だ。
この制度は、一定の要件を満たした新薬の薬価については、市場実勢価格に基づく引き下げに対して、加算を上乗せすることで、薬価を維持しようというもの。ただし、後発品が上市されたり、収載後15年が経過したりした場合には、加算として累積してきた分を一気に吐き出すように控除(返還)する仕組みだ。
これまでは2年に1回の改定年度ベースの推移では、控除が初めて実施された12年度は加算額690億円に対し、控除額130億円で差額は560億円だった。
それ以降、差額は14年度が570億円、16年度が700億円と推移したものの、薬価制度抜本改革が行われた18年度には、加算対象が厳格化され、160億円まで縮まった。
20年度の差額は20億円とわずかに加算額が上回っていたが、今回の22年度改定で逆転し、控除額が加算額を340億円も上回ってしまった。
この結果について、製薬団体の幹部は「この先の推移を見る必要があるが、制度自体が先細っていることは否めない。業界として新薬創出等加算の拡充をずっと求めてきたが、どこまで意味があるのか再検討が必要だろう」との見方を示す。
また、医薬品卸の関係者は「新薬創出加算品は、メーカーが仕切価を高く設定し、安売りさせない。結果的に、加算として薬価に“戻る”分も年々縮小している」と明かす。