いまや古くて新しいテーマになった医療と介護の連携。2014年に医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律)が制定されて8年が過ぎた。【鯉渕甫】
だが「医療と介護の一体的な改革」を掲げる厚生労働省のシナリオ通りに進んでいない。要因はいくつかある。
第一に、医療を所管するのが都道府県であるのに対して、介護を所管するのは市町村であること。複数の市町村で介護サービス事業所を運営する社会福祉法人幹部は「市町村の担当者は医療制度の知識が乏しい」と嘆く。在宅医療のセットとなる地域密着型サービスの指定権者は市町村だが、看護小規模多機能や定期巡回サービスなどを公募しない市町村では、在宅医療の体制整備が進みにくい。
第二に、医療機関と介護事業者とのデジタル格差。医療機関がオンラインでのやりとりを申し出ると「うちは電話とFAXで、オンラインは利用していない」と返答する介護事業者は、いまもなお少なくないという。
介護労働安定センターの「令和3年度・介護労働実態調査」によると、介護事業者で「パソコンで利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」 は 52.8%(前年50.4%)、「記録から介護保険請求システムまで一括している」は 42.8%(同 39.1%)、「タブレット端末等で利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」は28.6%(同 22.0%)。
一方、「いずれも行っていない」は 22.0%(同 25.8%)だった。介護業界にはアナログ体制が根付いているのだ。
第三に、医療と介護の連携で扇の要となるケアマネージャーの高齢化。ケアマネの医療知識不足が医師とのコミュニケーションを阻害していることは、かねてから指摘されているが、これに高齢化が加わった。
先の「介護労働実態調査」で、介護関連職種で最も平均年齢が高いのはヘルパー(54.4歳)で、次に高いのはケアマネージャー(52.7歳)だった。51.8歳だった前回調査より0.9ポイント上がり、60歳以上は25.5%。4人に1人が還暦を超えているのだ。
介護業界関係者は「ケアマネの更新研修に80代のケアマネの出席が目立つようになった」というが、高齢化がデジタル対応に支障が出ることは否めない。
23年4月には国民健康保険中央会が「ケアプランデータ連携システム」の運用をスタートさせ、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間でケアプラン情報の一部(予定、実績)をデータで送受信できるようになる。作業時間を短縮できるのだが、高齢のケアマネが有効に使用できるかどうか。
そして第四は、第三にも関連する問題だが、ケアマネの新規参入者が減少していること。22年度の介護支援専門員実務研修受講試験合格者は1万326人。前年度比2336人の減少だった。
さかのぼれば14年度には3万3539人が合格した。合格者数の減少は若い層の参入が減少し、世代交代が進んでいないことを示している。
医療と介護の連携という建付けと実態のギャップは埋まりそうにない。