製薬関連団体の幹部が深いため息を漏らす。
「首相が変わっても、コロナ禍があっても、財源を“薬”から捻り出す構図は何も変わらない」【本根優】
政府の22年度予算編成で、社会保障関係費の自然増を2200億円抑制したうち、1553億円を薬価の引き下げ(医療費ベース▲1.35%)が占めている。実に7割超を薬価で捻出したことになる。
社会保障関係費をめぐって、厚生労働省は概算要求段階で自然増6600億円を計上していたが、実際の予算編成では、薬価引き下げによる歳出減などで、4400億円(▲2200億円)まで圧縮した。
新たなルールを追加して、薬価を狙い撃ちするような強引な手法は取られなかったものの、製薬業界が長きに渡って改善を求めている「薬価頼み」からの脱却は全く図られていない。
16年度~21年度の6年間に、政府が自然増抑制で計上した額は累計▲8100億円。うち薬価関連抑制額は▲6288億円(約78%)に上る。
これに、22年度を加えると7年間で自然増抑制▲1兆300億円に対し、薬価で▲7841億円(約76%)となる。薬価が占める比率は約2ポイント低下するものの、薬価改定に過度に依存している構造に変化は見られない。
23年度には2度目の薬価・中間年改定(毎年改定)が行われることから、歯止めが掛からないまま、同様の傾向が続くとみられる。
22年度は、薬価の「調整幅」2.0%を維持することになったが、今後「継続検討」される見通し。財務省は調整幅の「段階的縮小」を求めており、23年度予算をめぐる攻防でも、薬価への風当たりが弱まることはなさそうだ。