安倍晋三元首相が満を持して、自民党最大派閥の安倍派会長に就任した。95人の議員を擁する。「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事である」との発言が外交上、物議を醸しているだけでなく、厚生労働分野でも存在感を示す場面があった。【本根優】
11月30日、参院議員会館の一室で、自民党厚労関係議員と有志製薬企業十数社で構成する「製薬産業政策に関する勉強会」(会長=衛藤晟一参院議員)が開かれた。
衆院選を経て、初めての「衛藤勉強会」。メンバーにも入れ替わりがあった。政界を引退したため、医系の鴨下一郎氏が抜けた。元衆院議長の伊吹文明氏もバッジを外したが、名誉顧問として残った。
新たに加わったのは厚労部会長に就任した牧原秀樹氏、さらに田畑裕明氏、国光文乃氏、宮澤洋一氏。そして、今回から安倍氏が顧問としてメンバー入りした。
ちょうど20年余り前、安倍氏は自民党の社会部会長(現厚労部会長)を務めていた。当時はR幅と呼ばれ、現在は調整幅の名で知られ、00年から20年以上、固定され、薬価に2%乗せることで薬剤流通安定のためのバッファー機能を果たしてきた。
出席した関係者は、この日の会合が行われた時間に出席していなかったが、会長の衛藤氏が安倍氏に電話。「安倍氏がSPを引き連れて、十数分、勉強会に参加した」という。衛藤氏と安倍氏は憲法改正、防衛力増強、集団的自衛権容認といった政策で近い考え方を持つ盟友。安倍氏は自身の政権で長く。衛藤氏を首相補佐官に起用していた。
それまでは衛藤勉強会ながら、党のご意見番だった伊吹氏の影響力が強く「伊吹独演会」とも呼ばれていた。だが、安倍氏が顧問ながら加わるとなると、インパクトは伊吹氏を上回る。
調整幅の現状維持を強く求める医薬品業界にとっては、衛藤氏の仲介で力強い援軍を得たことになる。果たして、安倍氏は今後「厚労族」としての顔をのぞかせることになるのか。22年度診療報酬改定論議で、その姿勢がはっきりしてくることだろう。