自民党の厚生労働族を長年率いてきた伊吹文明元衆院議長が、衆院解散をもって政界を引退した。同様に医系で最長のキャリアを持っていた鴨下一郎元環境相も退いた。そんな中、麻生太郎氏の義弟で、社会保障分野にも精通する鈴木俊一氏が財務相に就いた。【本根優】
では、党内で今後、厚労族を率いるのは誰になるのか。厚労族中堅議員によれば、伊吹氏から田村憲久元厚労相に対し、「次はよろしく」と、事実上の後継指名があったという。その通りになれば、これまで「伊吹インナー」と呼ばれていた厚労族の幹部会は「田村インナー」となって新たなスタートを切ることになる。
岸田文雄首相が行った閣僚・党役員人事のなかでは、これまで安倍・菅政権で、厚労相を2回ずつ務めた田村氏、加藤勝信氏という厚労族のツートップの名前が挙がってきていない。
加藤氏周辺は、閣僚や党総務会長といった要職をずっと任されてきたため「今回は一回休み」と語る。田村氏も今回、長く務めた党政調会長代理を外れた。
田村氏の代わりに、政調会長代理に就いたのが高鳥修一氏だ。現状で22年度診療報酬改定のキーマンは政府側が後藤茂之厚労相、鈴木財務相、自民党側が高鳥氏、そして厚労族の幹部会を率いるとみられる田村氏と言えるだろう。
残る注目ポイントは、党厚労部会長、党社会保障制度調査会長の人事だ。自民党が政権を奪還した後の厚労部会長は、福岡資麿氏、丸川珠代氏、高鳥氏、古川俊治氏、渡嘉敷奈緒美氏、橋本岳氏、小泉進次郎氏、平口洋氏と1年ごとにバトンをつなぎ、現在は福岡氏が異例ながら2度目の登板となっている。
前述の厚労族中堅議員は、次の厚労部会長人事について「牧原(秀樹)さんや小島(敏文)さんあたりではないか」と予想する。社会保障制度調査会長に関しては「座りがいいのは田村氏、加藤氏以外では、大臣経験者の根本匠氏くらい」と見ている。