その制度の効用はともかく、枠組みをつくることは決まった。自民党の厚生労働部会(牧原秀樹部会長)は2月17日、ワクチンや治療薬を迅速に承認する制度の新設などを盛り込んだ「医薬品医療機器等法」(薬機法)改正案を了承した。政府は2月中にも閣議決定し、通常国会に提出する。【本根優】
新型コロナウイルス感染症のワクチン実用化が遅れたことを踏まえて、新たに設ける「緊急承認制度」では、「2年を超えない範囲内の期限を付す」ことを法律に明記する。安全性の確認を前提に、医薬品の有効性が「推定」されたときに薬事承認を与える。
「コロナを口実に医薬品の承認のハードルがどんどん緩くなっていく印象だ」
患者団体の関係者はそう気を揉む。
もうひとつの与党、公明党からは、一時期「法改正は不要」との声が上がっていた。同党の厚労系幹部議員は、必ずしも改正薬機法による緊急承認制度を活用しなくても、承認の迅速化は「条件付き早期承認と市販後調査の組み合わせなど、既存の仕組みでできるのではないか」と主張していたのだ。
背景には、公明党は、厚生労働省が国産の経口薬の実用化に“後ろ向き”と捉えていた事情がある。
ただ、岸田文雄首相が、国産の経口薬の実用化に向けて「条件付き早期承認制度」の活用も含めた迅速化を図る姿勢を示すと、公明党は一転して、法改正を容認する姿勢を示した。
しかし、もともと「条件付き早期承認制度」は、オーファン(希少疾病用医薬品)などを想定したスピード承認の仕組みだ。すでにメルクやファイザーといった外国産の経口薬が登場している中で、「国産だから」ということを理由に「条件付き早期承認制度」を適用するのか。自民党の国会議員の中にも、政府の対応を疑問視する声がある。