医療・介護提供体制を整備する2025年度改革シナリオの総仕上げになるのが2024年度診療報酬・介護報酬同時改定である。【堤実篤】
6年に1度の同時改定を仕切るキーマンは厚生労働省保険局医療課長で、振り返ると省内で「エース」と評価される職員が就任した。12年度同時改定は鈴木康裕氏(元医務技監、現国際医療福祉大学副学長)、18年度同時改定は迫井正深氏(現内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長)が、それぞれ医療課長として担当した。
2人とも医療課長に就任する前に、老健局老人保健課長として、介護報酬改定を取り仕切った経験を持つ。
24年度同時改定時の医療課長は誰か。本命は老人保健課長として21年度介護報酬改定を担当した眞鍋馨氏だった。ところが眞鍋氏は今年3月、課内メンバーなど23名で銀座の居酒屋で宴会を挙行したことが、写真付きで報道された。しかも宴会に起因するクラスターが省内に発生し、眞鍋氏は大臣官房付に更迭された。本命が消えたのである。
24年度同時改定は改革シナリオを踏襲するだけではない。コロナ対応という厄介事が加わり、改革シナリオの踏襲とコロナ対応を両立させるという“平衡”を保たなければならない。
中央社会保険医療協議会でも、支払側委員の幸野庄司氏(健康保険組合連合会理事)はしばしば「地域医療構想の枠組みの中で考えるべきだ」と原則論を主張したが、そのつど、診療側委員の城守国斗氏(日本医師会常任理事)は「コロナ対応で医療現場は逼迫している」と柔軟性を求めて反論した。
同時改定を担う医療課長は来年7月の定例人事で任命されるが、その前月には日本医師会会長選挙が実施される。現会長の中川俊男氏が再任されるのか、それとも反中川派が勢いを増して新たな会長が誕生するのか。医療界にとって2つの注目人事が同じ時期に実施される。
一方、政界では、伊吹文明氏、塩崎恭久氏、鴨下一郎氏と有力な自民党厚労族議員がこぞって引退し、田村憲久厚労相が厚労族のドンに君臨する流れができた。しかし厚労省が分割されれば厚労族も2分され、それぞれにドンが登場するのだろう。
昭和の時代から医療ムラはパワーゲームが大好きである。
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