「忙しいんだから少しぐらい手伝ってよ」と言われたら、どうするだろう。自分のやりたい仕事を勝手に決めて動いちゃうだろうか。それとも、「私にできることはありますか」とお伺いするのが筋だろうか。業務移管は難しい。絶対に渡したくない「仕事」がある。権限委譲なら、なおさらだ。(新井裕充)
診療報酬改定の答申を目前に控えた1月24日、恒例の「公聴会」が静岡県内で開かれた。『会場には近隣の主婦や高齢者らが多数詰めかけ、中医協委員らと熱い議論が交わされた』なーんてことはなく、関係団体が仕込んだ「意見発表者」が台本を読み上げた。
「国民の意見を聴く」とは名ばかりの儀式なので記者の関心も低いのか、会場は空席だらけ。期待度ゼロだったが、意外な人物の登場にテンションが上がった、のは私だけかもしれない。
■ 地域医療構想アドバイザーの小林氏が登壇
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病院勤務医の立場として登壇した小林利彦氏は、①救急医療、②医療従事者の働き方改革、③中小規模の病院の位置づけ──の3点について意見を述べた。処方のルール化(フォーミュラリー)に向けた取組には触れなかった。
閉会後に厚労省担当者が記者らに閲覧を許可した名簿によると、小林氏の肩書きは、「浜松医科大学医療福祉支援センター特任教授、静岡県地域医療構想アドバイザー・静岡県医師会理事」となっている。
小林氏は2018年7月20日、厚労省の「地域医療構想ワーキンググループ」の第15回会合に参考人として出席し、地域医療構想アドバイザーとしての活動内容などを報告している。その際、公・民の競合をめぐる議論があり、日本医師会・中川俊男副会長の“攻撃”をうまくかわした実績(?)がある。
■「薬剤の選択の仕方を学ぶ機会にはなっている」
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質疑で、フォーミュラリーの導入に積極的な保険者代表の委員が「導入されて非常に良かったと思う点、ご苦労されてる点とかがあれば、お伺いしたい」と尋ねた。
しかし、小林氏は「薬剤の選択の仕方を学ぶという機会にはなってるかなあ」と歯切れが悪い。そこで、委員はさらに「ご苦労されている点は?」と突っ込んだ。
これに対し、小林氏は「全国的に同じような基準で一律に決められるものでもなく、各病院、各地域によって、やはり違うんじゃないかなあ」と一蹴。見事な火消し役を務めた。
フォーミュラリーに関する質疑の模様は、以下のPDF(P36~38)をご覧いただきたい。
2020年1月24日の中医協総会(公聴会)【議事録】 ..