高齢者らが長期入院する療養病棟の基準を引き上げて、半ば強制的に介護医療院に移行させる厚生労働省の方針に対し、医療関係者が反対している。療養病棟に入院している重症者の割合について、保険者の代表は11月22日の中医協総会で現行基準の引上げを主張。これに日本医師会の委員は「かなりの患者さんがここに該当しなくなるので現段階では非常になかなか難しい。現状維持を求めたい」と抵抗した。(新井裕充)
2020年度改定に向け、厚労省は同日の総会に「入院医療(その2)について」と題する88ページの資料を提示。療養病棟入院基本料の見直しに関する論点を挙げた。
資料説明の中で厚労省の担当者は、介護医療院への転換が進んでいない状況を紹介した上で、今後の届出意向について「入院料1は『現状維持』が最も多く、転換意向は9.5%。入院料2は『現状維持』が最も多く、転換意向があったのは21.9%」と伝えた。
「経過措置1」については、「44.7%に転換意向がある」としながらも、「転換先としては『入院料1』『介護医療院』『入院料2』の順に多い」と報告。次期改定で基準の厳格化を進めなければ、介護医療院への転換が進まない状況であることを示した。
厚労省の担当者はまた、療養病棟入院料の重症者割合について「入院料1では全体の9割、入院料2では全体の7割を占めている」と説明し、入院料2については現行の5割を大幅にクリアしている状況も示した。
こうした状況を踏まえ、支払側の委員は「実態が1で9割、2で7割ということであれば、この該当患者の割合を引き上げるということも検討すべきじゃないか」と主張。これに日本医師会の委員が反論した。
介護医療院への転換をめぐっては、医療保険から介護保険への移行が小規模な自治体の介護保険財政を圧迫するなどの理由から転換が円滑に進んでいないとの声がある。
これに対し厚労省は、療養病棟の基準を厳しくすれば、いわば“ところてん式”に介護医療院に移行するだろうから、そんなの関係ないよと考えているのかもしれない。
質疑の模様は、下記のPDFを参照。
11月22日(金)の中医協総会【議事録】 ..