「主な意見」の捏造か ── 第427回中医協・総会(2019年10月23日)【議事録】

今村聡委員(日本医師会副会長)_第427回中医協・総会(2019年10月23日)

 「主な意見」を捏造したのか、うっかりなのか。10月23日の中医協総会で、驚くべきことが起きた。今回のテーマは「医療機器の効率的かつ有効・安全な利用」について。6月の総会で一度議論している。その際、議論の中心はCTやMRIの共同利用を診療報酬で後押しすることの是非で、超音波検査は“脇役”だった。そのためか、超音波検査については診療側しか意見を述べなかった。ところが今回23日の総会では、支払側の意見があったかのように紹介されている。(新井裕充)

 問題となったのは、同日の資料「個別事項(その5)について」の35ページ。超音波検査の活用に関する「主な意見(令和元年度6月26日中医協総会)」が2つ紹介されている。
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個別事項(その5)について_20191023中医協総会_ページ_35

 1つ目は、「国民に必要な医療が提供されないことがないように留意しながら、検討する必要があるのではないか」との意見。これは松本吉郎委員(日本医師会常任理事)の発言の要約である。

 2つ目は、「在宅医療の場面などで簡便に行われている検査と、病院の中において精査されている場合とは、区別した評価とする検討が必要ではないか」との意見。これが誰の発言なのか分からないのである。

 6月26日の議事録は既に厚労省のホームページにアップされているので、関心のある方はご参照いただきたい。キーワード検索に「在宅医療」や「区別」を入れてもヒットしないだろう。当日、そのような発言はなかったように思う。

 10月23日の総会で、厚労省保険局医療課医療技術評価推進室の岡田就将室長は「35コマ目、こちらは6月での、頂きましたご意見の紹介でございます」と説明しただけで、内容を読み上げることはしなかった。
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厚労省保険局医療課_2019年10月23日の中医協総会

■ 病院と在宅の検査、「場」で分けることは難しい

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 質疑で、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は「在宅での超音波と病院で使用された場合、区別する評価という記載があるが」と切り出し、「経過を見ていくために超音波を使用している場合と、明らかに在宅であっても診断をするために詳細に超音波検査をした場合はたぶん意味が違うので、『場』で分けることはなかなか難しい」と疑問を呈した。

 今村委員は、超音波検査の件数が在宅・病院別に示されていないことを指摘した上で、「そういうデータが全くない中で議論するのはなかなか難しいかなと思っているので、次回、示していただければありがたい」と要望した。

 これに対し岡田室長は、今村委員が「論点」の提示だと勘違いしていることを指摘。「挙げさせていただいたのは、(論点ではなく)6月の検討の際に頂いた『ご意見』でございます」と返した上で、「今村委員から頂いたご指摘については、可能なものについて次回の検討の際に提出をさせていただく」と応じた。
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医師会委員と公益委員_2019年10月23日の中医協総会

■ 「医療安全」と「集約化」は矛盾しないか

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 厚労省はしばしば、委員から「事務局の意図」を尋ねられると、「あくまでも現状をお示ししただけ」「それは皆さんでご議論いただきたい」とかわすが、膨大な資料の中から特定のデータを抽出する時、何らかの政策判断が働いている。「エビデンス」とは言うものの、単なる客観事実の提示ではない。

 と、エラそうに書いてしまったが、「おまえもそうだろ」と言われれば反論できない。今回、資料の説明と質疑を担当した岡田室長は、説明のスピードや声のトーンが秀逸で、お人柄も素晴らしい。あまり批判的に書きたくない気持ちがある。

 ところで、肝心の本題である「この日の議論がどうだったのか」についてはいろいろな見方があると思う。各側の発言を聴きながら、私が真っ先に思い浮かべたのは「杏林大病院割りばし死事件」である。有名な事件なのでご存知の方も多いであろう。「検査をしなかった」という「不作為」が問われた重要な裁判である。

 もし、「~しなかったから」という不作為が問われるのであれば、訴訟が続出し、医療は成り立たないだろう。厚労省は一方で「医療安全」と言いながら、その一方で「集約化」と言う。それらの政策に一貫性はあるのか。矛盾していないか。大都会の論理で、過疎地もひっくるめた議論をしていないか。
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2019年10月23日の中医協総会

■「無駄な医療を排除していく趣旨は理解できる」と保険者代表

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 今回、支払側の保険者委員が「無駄な医療とか、適切でない医療を排除していくという趣旨は理解できる」と発言した。これに対し、同じく支払側である患者代表は次のように述べた。

 「子どもが頭にけがをしたとかいうことになればですね、『CT撮ってくれ』っていうことをお医者さんに頼むっていうことはあると思うんですけども、それでもお医者さんが『大したことがないから撮る必要がない』というふうに言われたとして、病院から帰ったとしてもですね、きっと納得できないで、ほかの病院に行って撮ってもらうということが考えられるのかなというふうに思うんですよね。
 そういう意味では、そこでCTを撮らないよという、撮らなかったということをしたとしても、患者・家族の行動を変えられるかどうかっていうのは、ちょっと未知数というふうに思いますので、そのあたりも、ちょっと慎重に考えていただきたいというふうに思います」
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 ※ 厚労省担当者の説明、質疑は議事録を参照。

議事録ダウンロードページへ .

第427回中医協・総会(2019年10月23日)【議事録】_ページ_01

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