8月2日の中央社会保険医療協議会では、支払側委員から「長期収載品の自己負担」について、積極的な検討を求める意見が相次いだ。いわゆる「参照価格」議論になる。6年前、支払側は強く反対していたのだが、今回は前のめりの姿勢を見せた。【本根優】
参照価格は、医薬品の保険給付上限額を設け、超過分を患者負担とする方式を指す。同制度をめぐっては、日本でも議論が沸き起こり、過去に「導入寸前」までいった経緯がある。
それが1997年。厚生省(当時)と与党が、ドイツを手本にして制度化を打ち出した。先発品、後発品を問わず、「同一成分ごと」に、薬剤の償還基準額を定める仕組みになる。
ところが、参照価格制度の導入案に対して、日本医師会は、患者負担が増加することや、患者の医薬品へのアクセスを阻害することなどを理由に猛反発した。製薬業界も高薬価の医薬品が償還基準額に収束される結果、「売り上げ減・利益減につながり研究開発を阻害するおそれがある」などと強く抵抗した。結局、この制度は日の目をみることなく論議は終結した。
そして、6年前の17年。議論が再燃し、中医協で検討した際、厚生労働省は先発品の使用は「選定療養」に位置付け、後発品の平均薬価までを「保険外併用療養費」として給付し、それを超える部分は、医療機関などが患者から徴収する案を示した。
当時、支払側は「選定療養で患者負担を増やすのは全く正当なやり方ではない。かえって薬価の構造を歪める」(健保連)、「選定療養は差額ベッドや療養環境などを対象としたもので、薬価を位置づけるのは制度の理屈として成り立つのか」(連合)などと、主張していた。
だが、今回は健保連や協会けんぽの委員が「後発品が浸透した」ことを理由に、中医協や社会保障審議会医療保険部会での「前向きな検討」を求めた。
なぜか。財務省関係者が解説する。
「我々に近い支払者の立場からすれば、薬剤費適正化へ『打てる手は打つべき』という考えなのだろう」
これは、象徴的に書かれている長期収載品の自己負担を否定してしまっては、その他薬剤自己負担の在り方といった幅広い議論さえ、遮ってしまうという懸念が背景にあるとの見立てだ。
.